ははははは・・・。

「傑作だ!
アンドレ・・・。おまえは、聞きたくないだろうが、
フェルゼンに別れを告げられた時、彼はこう言ったのだ」

アンドレが息を止めた。

「もし、初めて会った時、おまえが女だと知っていたら・・・。
とな。
つまり、彼は、見かけだけで女性を見ているのだ。
わたしは、わたしの容姿に興味が無いが・・・。

フェルゼンは、
わたしの事を、男だと思い。女と分かっても、男として扱ってきた。
様々な議論もした。それは、わたしを男として見ていたからだ。

今も、わたしがおまえと言う男を愛していて、
彼の恋愛対象とはならない。
つまり、わたしは彼の前では、相変わらず男なのだ。」

アンドレは、フェルゼンという男が分からなくなってきていた。しかし、そんな事どうでも良くなってきた。オスカルがもうスッパリとフェルゼンに愛想をつかしている事に、安堵した。

ひとしきり笑うと、オスカルが真顔になった。

そして、オスカルがもの凄く残念そうなため息をついた。
「どうした?」アンドレが、慌てて、オスカルの前に、跪いて聞いた。

「変な妄想にとりつかれていて、おまえが折角選んでくれたワインを、味あわずに飲んでしまった!申し訳ない!」

なんだ、そんな事か、と安堵したアンドレは、
「もう1本持ってくるか?冷えているのが、あるはずだ」

「そんな、取りに行く時間が勿体ない。
また今度、味わうとして、赤を頼む。
こちらは、じっくりと楽しむ事にしよう。
それに・・・おまえの・・・も・・・。」

・・・と、2人の唇も近づいた。

  *******************

アンドレが、一本のワインを取りだした。そして、オスカルに見えるように持った。何が始まるのかと、オスカルが乗り出すと、アンドレは、ビンをオスカルに見えるように、ぐるっと一回転させた。

オスカルが、首を傾げる。
それを見ると、オスカル得意の『ニヤリ』をアンドレがした。

オスカルは、腕を組み、足を組み、ソファーに深く沈み込んだ。

「ワイン蔵で、見つけたんだ。
ラベルが、剥がれているだろう?
何年ものか?産地は何処か?

分かるのは、ルージュと言う事だけだ。
飲んでみるか?
それとも、怖いか?」
アンドレが、楽しそうに言った。

アンドレが、オスカルがフェルゼンと、頻繁に会っていた事に、腹を立てながらも、オスカルと過ごす2日間を楽しみにしていたのは、確かな様だ。

そのオスカルは、当然呑むぞ!と、もう、グラスをアンドレに向かって差し出していた。

「では、今度は赤をゆっくりと味わおう。
それに、ピンチョスも楽しみにしていたのだ。
その分、ディナーは、少なめにしておいた」

アンドレが、再び今度は赤ワインのコルクを抜きながら、
「やはりそうか。
今夜は、ジョルジュが頑張って、メニューを決めていた」

オスカルがワインを一口飲むと、頷いた。
「かなり、古いな・・・熟成度が、並ではない。
かなりのクセもある。
だが、このクセは・・・ははは、癖になりそうだ。

他には、なかったのか?
そうは言っても、ラベルがないのじゃ、見つけようがないな!」

「それで、今回は、どう過ごすのか?」
珍しくオスカルの方から聞いてきた。今まで、大した休みも取った事がない、2人だった。しかし、休むとなると、オスカルの方から、提案してきた。ただ、遠乗りか、剣の稽古ぐらいだったが・・・。

稀に、仕事が立て込んでオスカルがストレスフルになると、アンドレの方からリフレッシュしに飲みに誘う事もあったし、休みを提案することが有ったが、この様に聞いてきたのは、初めてだった。

アンドレが、見つめていると、オスカルが、
「ロジャーが、言っていた。デートの行き先、段取りは、男の役目だと・・・」

アンドレには、明日からの予定より、オスカルとロジャーの付き合いが気になってきた。
どうなのだ?ロジャーとは?

オスカルは、待っていました!とニコニコと、話し出した。
飲みに誘われた。初めは、ロジャーの家の近くだったので、ジャルジェ家の馬車で行ったら、コイン駐馬車場が、なくて困った。

ロジェと馭者を隣の席に座らせて、かなり飲んで、食べて、ご馳走さま・・・と、出て行こうとしたから、誘った方が払ってくれるのだろう?
と、言って、帰ってきた。

後日、先日のお礼だと、おまえとよくいく酒場に連れて行った。あそこなら、1人でも大丈夫なので、ロジェたちは、帰したのだ。

ロジャーも酒はかなり強くて参ったが、こちらは、向こうが酔い始めた頃から適当に飲んで、潰してやった。

ふふふ・・・あいつ、わたしを呑ませて、どうにかするのなら、自分の適量を見極めればいいのに・・・。それに、あの日は、ロジェも返して、わたし一人だったのだぞ!チャンスとは思わなかったのだな。まだまだ、子供だな!

帰りは、こっちと向こうだから、おやすみなさい。と言って、わたしは、辻馬車で帰った。彼を見ていたら、ヨロヨロしながら歩いて帰ったようだ。翌日は、昼過ぎに出てきた。

ねちっこく、注意して、宿舎に戻ったらどうかと言ってやったら、趣味の太鼓叩きが出来ない。と言うから、空いている時、練兵場のど真ん中でなら貸すぞと言ってやった。

ただ、彼は門限を気にしているようだ。

するとアンドレが、
「門限なんて、守ってるものなんていないぞ。それに、抜け道があるのを、誰も教えていないのか?
それに、おまえに言っていいのか分からんが、朝帰りのヤツは、開門の時にどさくさに紛れて入って来る」

「あゝ、おまえの代わりに、来ているのでかなり冷たくされているようだ。それに、彼も何か自尊心があるようで、隊員たちと、あまり交わらないのだ」

「ふーん、おまえもかなり、やるんだなぁ!
あの、たらしのこましが、翻弄されるとは・・・」

なぁ、アンドレ?

どうした?

「アイツ、飲んでいる時、百面相をするんだ」
そう言って、オスカルは、肘をついて顔を傾けニッコリと微笑んだ。それから、アンドレの目をジッと見つめた。そして、眉間にシワを寄せて難しい顔をして見せた。思い出せる限りのことをして、アンドレに見せた。

そして最後に、
「でな、時々、片目を瞑るんだ。よっぽど、ゴミでも入ったのか?って聞こうかと思ったが、取ってくれ。なんて言われても、困るから黙っていた」

すると、アンドレは、今のオスカルの百面相で、クラクラしながら、説明した。
「それは、男が女性を口説く時の仕草だ。目を瞑るのは、ウインクと言って、やっぱり、誘っているのさ」

言いながら、オスカルが、知らなくて、そして、気付かなくて良かったと思った。

オスカルは、オスカルで、
「なんだ、そう言うことだったのか!じゃあ、応えてやればよかったなぁ!
アンドレ、そうされたら、どうすればいいんだ?」

アンドレは、笑いながら、
「おれに見せる様な、とろけるような、頬笑みを見せるんだな」とは言ったものの、あの微笑みを自分以外の男に見せる事に、嫌悪感を覚えた。

すると、オスカルが、不愉快な顔で、
「おまえ宛の専売特許の笑顔を、他の男に見せるなんて、もったいない。
他の方法を考えて、全ての女が、アイツにドッキュンされるとは、限らない事を教えてやらなくてはならない。アンドレ、何かいい方法はないか?」

オスカルは、続けた。
「ふふふ、それから、アランに彼の剣と、銃の訓練を任せているのだ。アランに様子はどうか聞いたら、アランにわたしのことをあれこれと聞いてくるのだが・・・。

それよりも、おまえのことを聞きたいようだ。と、アランは思っているようだ。

アランにおまえと、飲みに行くようなこともあるのだろう?と聞かれたから、あんな隊長の腰巾着と、誰が行くか!と答えて、他の隊員たちにも、箝口令をしいたらしい。

そういう時の衛兵隊の団結は、すごいよな!
アランも適当にあしらっているようだ。

それと、肝心の、銃も剣も、力任せでなってないらしい。って、
なんだ?おまえは、わたしが話しているのに、スマホに夢中になって・・・」

「だって、男がデートの計画をするのだろう。
決まったぞ!
明後日は、ベルばランドだ!」

「ベルばランド?あの、モンテクレール城が、シンボルの?
子どもが行く所じゃないのか?」

「ルイ14世は、子どもから大人まで楽しめる、パークを作ったのだ。
なんてね〜!おれが一度行ってみたかったの。
それもおまえと行きたいと思っていたんだ。
それに、たまには童心に帰ってもいいんじゃないか?」

「ふーん、まあ、わたしは軍務で精一杯だったから、行った事もないし、興味もなかったな。どの様な所か行ってみよう!
で、明日はどうするのだ?」

「明日は、その準備。おれたち、そういうところに行く、服とか持っていないだろう。それを買いに行く!
そして、おまえが行った事がないような、カフェでランチだ。

うーん、ベルばランドホテルが取れたら、朝から遊べるな!
ディナーもそこでだ!

ちょっと待て、LINEしてみよう。今、ホテルの予約をしてみる!
ワオ〜!ベルばランド側のバルコニーのある部屋が取れたぞ❣️
よかったなあ!オスカル!」

オスカルが、片目をつぶって、アンドレを眺めた。
「アンドレ君、チョット、お聞きしますが、こんな時間に、ホテルと連絡が、しかも、スマホで出来るのか?

スマホを持つのは、貴族だけの特権だと思っていたが・・・。
わたしの見解が、違っていたのだろうか?ん?」

「ゲッ!ばれたか?ホントは元々、計画して、予約しておいたのだ。
おまえが、喜んでくれてよかった」

オスカルは、どんなところか知らないが、頭から反対して、アンドレをガッカリさせないで、良かった。と、心から思った。

それに、アンドレが、休みの日の計画を練るのは、初めてではなかったが、この様な、突飛な所に、誘うのは初めてだった。

それも、やはり恋人同士になったからであろう。元の、幼馴染みであったら、アンドレも、提案などしなかっただろう。オスカルは、これからの、2日間の事を思うと、ワクワクしてきた。

「明日のディナーは、ホテルで出来るが、明後日のベルばランドは、お子様用が、主体のようだ。酒は飲めるのだろうな?」

オスカルは、最大限の心配事を作って、聞いてみた。
オスカルにとっては、酒は強いが、一日くらい、呑まなくても、何ら問題はなかった。

「なんだ・・・。何を心配しているんだ!
大丈夫だ!いくらでも飲める。
でも、酒を飲んだら、危ないアトラクションもあるようだ。
この計画で、いいか?」

オスカルは、しばし、アンドレの誕生日プレゼントをどう渡すか、考えた。
やはり、当日渡したい。持って行こう!そう決めた。
そして、親指を立てて、お互いのくちびるを近づけた❣️

つづく


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