I Want To Break Free

店を閉めて、二階に上がって来るとすかさずアンドレが言った。

「よくあれだけ呑んでぶっ倒れなかったな!?」

「ふん!あのオンナの前で醜態見せられるか!
しかし、強い酒だったなぁ、むせるかとおもったぞ!
おまえが途中で水に変えてくれなかったらぶっ倒れていた!
おまえこそ、汗びっしょりだったな?」

「あゝ!冷や汗と油汗と変な汗で、大変だったぞ!」

「はははは!残念だけど、あのオンナはおまえの手には負えないな!
彼女は、ギュスターブ・ブノワ侯爵のオンナだ!」

「ブノワ侯爵?・・・え?・・・何?・・・え゛!
もしかして・・・いや・・・ちょっと待ってくれ!」

「何言っているんだ?おまえ!」

「え?・・・だから・・・(。´・ω・)ん?・・・えっ!・・・
わお~!」

「酒を飲み過ぎたか?アンドレ!?」

「いや、違う!
もしかして・・・彼女の婚約者だったという人か?
初めて名前を聞いた・・・。
そうか・・・ブノワ侯爵だったのか・・・、
やっと点と点が繋がった。」

「おまえ、彼女から何にも聞いていないのか?」

「ああ、ざっくりとしか・・・、
話してくれた時、質問できる雰囲気じゃなかった。」

「あの事件は・・・わたしも当時はよく知らなかったんだ・・・。」

「そうなのか・・・。」

「士官学校の頃、剣の講師で来ていたんだ。
あの頃、フランス一の使い手で、
女という事の偏見で孤立していたわたしに、
女でも道は開けると、教えてくれた、

尊敬出来る人だった。
現に、彼の婚約者にも武術を教えていると言っていた。

それが・・・突然、来なくなったんだ。・・・教師陣も何も言わない・・・。
誰も彼の事を口にしなくなった頃、

・・・・噂が流れた・・・

処刑されて・・・侯爵家は貴族のリストから抹殺された・・・と、」

「そうだったのか・・・」

「・・・で、おまえ!どっちが勝つと思う?」

「え゛?!何が?(なんでそんなに突然、話が変わるんだ!(;^_^A)」

「ジェルメーヌと剣の勝負をする。今度の休みに・・・、
わたしが勝ったら、彼女がこの店に来る事を認めよう!」

「もし、おまえが、負けたら?」

「ふふん!必ずわたしが勝つ!
それで、この話はお終いだ!」


  *************************


勝負はやはりオスカルが、勝った。
これでおれも、心穏やかな生活ができると思っていたら、
とんでもないことが起こり始めた。

二人の女がタックルを組み始めてしまったようだ。
剣を合わせれば、性格や人柄が分かるらしい。

オスカルは、すっかりジェルメーヌを気に入ってしまい。
彼女が来店すると、二人で隅によってひそひそと話を始めたのだ。
しかも、時折り、おれの方を見てクスクス笑っている。
不気味なことこの上ない!

女がつくづく分からなくなってきた・・・
おれだったら、ぜ~~~~~~~ったいに、絶対!
フェルゼン伯爵がどんなにいい奴でも、仲良く酒を飲むなんて出来ない!

  *************************

後で聞いたら、二人でブノワ侯爵の思い出話をしていたらしい。
お互い、彼の剣の弟子という事と、ジェルメーヌは彼の思い出を語る事で、気持ちの整理がついたらしいが・・・、

・・・・もしかしたら、オスカルの本当の初恋の相手は彼なのかもしれない。

  *************************

お互いに下町と屋敷を行ったり来たりしながら過ごしているうちに、
暖かい日が多くなってきた。

わたしはその日はアンドレが来る予定なのでルンルンと帰宅した。
アニェスとマルゴに着替えを手伝わせていると、
父上の所に客が来ているとのことだった。

誰だ?知っている者か?と、尋ねたところ要領を得ない・・・。
近衛の者か?と聞くと、

「はい!そのようです・・・名前は忘れましたが・・・髪が・・・こう・・ワカメのような」
「ジェローデルか?」
「そうです、そうです!確か、そうおっしゃっていました」
「懐かしい!会いたい!」


わたしは、久しぶりの近衛時代の部下に会うために、
レヴェとヴィーを連れて客間へと降りて行った。
「隊長・・・おひさしゅうございます」

と、ジェローデルは、白い毛のふさふさした猫を抱きながら立ち上がった。
わたしもヴィーを抱いていた。
「久しぶりだ!ジェローデル!元気だったか?」
わたしは、腰かけながら尋ねた。

レヴェとヴィーが、ジェローデルの膝の上の猫に釘付けになっていた。

「子供たちの事は知っていたな!
大きくなっただろう!

レヴェーヴァ、ヴィゾワール。
ジェローデル大尉にご挨拶をなさい。」

「大尉ではございません。
ただいまは少佐でございます。

それに、その二人の子どもには興味ございませんので
挨拶など、結構です」


二人の子どもが、不安げにオスカルを見た。
「随分と、失敬な物言いだな!
おまえが子ども達に興味がなくても、

子ども達はその猫に興味があるようだ。
抱かせてやってくれないか?」

二人とも触りたくて仕方がなくて、我慢できずに傍に寄っていった。

すると、ジェローデルが
「汚い手で、私の猫ちゃんに触らないでくれたまえ!」と、言い出した。

ヴィーが驚いて、オスカルの膝に駆け戻ってきた。
「わたしの息子たちは、決して汚くはない!きれいだ!

失礼じゃないか?ジェローデル」
「ふん!非嫡出子のくせに!」
「なんだと!!!」

「まあまあ・・・」ジャルジェ将軍が割って入った。
「そのことで、今日はジェローデル大尉に来ていただいたのだ、オスカル!」

「今は、少佐です・・・将軍!」
ジェローデルが、憮然と言った。

「ああ、その少佐が・・・アントワネットさまから、
おまえとジェローデルが結婚して子を成せば、
ジャルジェ家を継いでも良いとお許しを頂いた。」

「え゛?!結婚?!ジェローデルの子ども・・・ですか?
レヴェは・・・ヴィーはどうなるのです!?」

「うわ~~~~ん!!!!」
急にレヴェとヴィーが泣き出した。
ジェローデルの猫に引っかかれたようだ。

「ママン!痛いよ~~~~」×2
「ああ、よしよしヾ(・ω・`) 見せてみろ!
ジェローデル少佐、話にならん、どうせ地位か財産目当てだろう?」

「その通りです。私はこのジャルジェ家の
地位と財産が欲しいのです。」

「は!その位自分で作れ!わたしはお断りだ!
晩餐は自室でとる、三人分持って来てくれ!」

「人の欲望に、命令は出来ませんよ」
「わたしたちを、巻き添えにするな!」

「ママン!ぼく、あの猫ちゃんもおじさんも嫌い!」
「ぼくも~~~~~」
二人の息子の手当てをしながら、オスカルは、
「わたしも、嫌いだな!心配するな、もう来ることもないだろう」
と言って、子どもたちを安心させた。

BGM Dance With The Devil
By Katy Perry
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