A Winter’s Tale


その日の朝、わたしは、心地良い疲労から深い眠りだったのか、スッキリと目覚めた。
アニェスとマルゴが支度のために入ってきた。

アニェスがわたしの夜着を脱がせた時、一瞬妙な感じがした。
が、わたしは、アニェスがきっと月のモノだとその時は思った。

しかし、夜になって風呂上がりに、鏡に向かってデコルテをマッサージしてもらっている時に、首から胸元にかけて、虫刺されの様な赤い斑点があるのを見つけた。

虫刺されなら彼女達の事、軟膏でも塗ってくれるかと思っていたが、
そのままにして終わると退出していった。

ど~しても、わたしは気になったので、鏡に近づいてよ~く見てみた。
何だか分からない・・・?
全身が映る鏡の前に行き、夜着を脱いでみた。

・・・!・・・

果たして、身体のあちらこちらに斑点があった!

!わたしはガッテンした!

!アンドレ虫!に、刺されたのだ!
アンドレ虫は明朝早くに、来ると言っていた。


これからは風呂でも自分で洗う、服も自分で着る・・・。
なんて言ったら、また、仕事を取るなと言われるのだろう・・・。
貴族って不便だな!

だから、と言って・・アンドレに・・・口づけするな!なんて言えない!
だって、アンドレに・・・体中を口づけされるのは、とっても嬉しくて幸せな気分になるから!

しばらくの間、オンナになった自分の体を見つめていた。
その時また、もしかして・・・、
!!!!え゛!!!!
わたしは、一日中・・・・・!?

床に落ちている夜着を着ると、とっとと、軍服を取りに行った。
戻ってくると、泡食って軍服を着てみた。

が~~~~~~ん!
見えている!しっかりと見える!
首筋にアンドレ虫・・・・・。

首を上げないと見えないから・・・・・、
わたしより背の高いものには、見えなかったはずだ(ほっ!)

(。´・ω・)ん?そういえば、今日は・・・、
アランがやたら、剣を落として、
わたしの周りで、かがみ込んでは、ニヤニヤしていたが・・・・・!

・・・・・まさか!・・・・・

今度は、わたしがしゃがみこんでしまった・・・・・。
頭が痛い・・・・・。

アンドレ虫が来たら相談しよう!

アンドレ虫が来るというのに、わたしのベッドには相変わらず、レヴェとヴィーがしっかりと収まっている。こちらも追い出すわけにいかない。

まさか、オトコが、夜這いに来るから子ども部屋に行け!なんて言えない。

わたしも、2人と一緒に眠る習慣がついてしまって、独りでは眠れそうもない。
わたしは、ほとほと困ったオンナの様だ。


  *************************


今夜のレヴェは寝相が悪いようだ。
わたしの上に這い上がってきた!
ヴィーまで、寝ぼけているのか?

・・・・え゛!・・・

口づけされた・・・アンドレ虫だ!
待っていた・・・アンドレ、抱きしめて・・・!

(。´・ω・)ん?・・・子どもたちは?・・・わたしが聞くと、
え゛!居なかったぞ!・・・アンドレが答えた。
ロンパールームにでも行ったかな?・・・こんな夜中に?
わたしは、不思議に思ったが、

そんなことより・・・と、アンドレ虫が言う・・・。
そうだ!アンドレ虫!・・・と、言おうとしたら、
夜着がベッドサイドに落ちた。

 *************************

アンドレの胸の中で、胸毛をいじりながら、アンドレ虫の対処法を相談したら、

「下町に来て、一緒に暮らさないか?」と言ってきた。
「勿論、子供たちも一緒だ。贅沢な暮らしはできないけれど、
子どもたちの為にも、向こうで暮らす方が為になるとおれは思う」

「おまえと会うたびに、胸毛を一本ずつ抜いてツルツルになったら、考えても良い」

「随分と気が遠くなる話だな。」
「当たり前だ!家を捨てるのだぞ!」
「おれは、8つの時、家を捨ててきたぞ!」

「そうだった。
だが、おまえの家は弟が継いだ。
ジャルジェ家にはわたししかいない」

「せめて、胸毛右半分にしてくれないかな?」

「そうだな!そうすれば、左半分胸毛のおまえを見たオンナは、わたし独りになる!」
「おい!勘弁してくれよ!
まだ、根に持っているのか?」
「ふふふ…わたしは思っていたより嫉妬深いオンナのようだな」

*************************

年が明けた・・・しかし、わたしは通常勤務である。
新年のご挨拶に、宮廷にでかける許可が今年も下りなかった。
父上と母上だけが、宮廷に参上した。子どもたちの状況は相変わらずだ。

アンドレは「貴族の時代はもうすぐ終わる」と言う。
「その時、子どもたちがどこで暮らすのが一番いいか、決めるのはおまえだ!
おれは、おまえがいつでもこっちで暮らせるよう待っている」

わたし独りでなら、簡単だ・・・だが・・・子どもたちの将来と、
ジャルジェ家の存続を考えると、わたしは決断できないでいた。


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仕事が休みの日は、午後からアンドレの所で過ごすようになった。その日も店の営業が始まるとわたしは、二階で新聞を読みながら過ごしていたが、下から聞こえてくる声に誘われて徐々に降りて行った。

どうやら、件の新聞の発行者と仲間のようだ。相変わらずアンドレは、口を挟まない・・・という事は、発行者以外はアンドレが記事を書いていることは知らないようだ。仲間は・・・4人?・・・5人か?

女の声が聞こえる・・・。
!!!!あ゛!!!!ピンクのリボンだ!!!!

わたしにはピンときた!これが女の直感というものか!どんなオンナなのか、見てみたくなった。見て、会って、アンドレにもう手を出すな!と、怒鳴り付けてやりたい!

気持ちは、
階段をドドドドドドドドド・・・と、
下りていきたいところだったが、
先ずは戦闘態勢を整えねばならない。

これでも生粋の軍人だ!

ドレッサーの前に座って、
髪にブラシを当て、ウェーブをキレイに出し、
服を見た。
今日は、カーキ色のブラウスにクラバットだ。
柔らかな女らしい色でなかったことに感謝した。

アンドレの連れ合いとして相応しい。
・・・え゛!・・・連れ合い!!・・・
まあ、そう言う事にしておこう!
いざ!出陣だ!

わたしは、急ぐ気持ちを抑えて、
一段一段落ち着いた足取りで階段を下りた・・・。

居た~~~~~!

一見静かな落ち着いた雰囲気。
しかし、内に秘める炎が見える。

プラチナブロンドに白の上着・・・男装だ!

でも、何処かで見た覚えがある。
一度見たら忘れられない顔だ!
アンドレ!おまえの女の好みって!・・・一体何なんだ?!

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「こんばんは。ショットバー・アンドレにようこそ!」
わたしは、満面の笑みでオンナに挨拶しながら、
アンドレのほとんど脂肪の無い筋肉の背中を・・・つねった。

かなり痛いはずだぞ!わたしはそっと、アンドレを見上げてみた。
口をへの字に曲げて、歯を食いしばって、目を白黒させて、耐えている。
そうか!そうか!声を上げないか!大したオトコだ!さすが、わたしのアンドレだ!

アンドレに感心していると、オンナが口を開いた。

「まあ!こんばんは、初めまして、ジェルメーヌよ。よろしくね。」
「オスカルです。アンドレがお世話になっていたようで・・・(皮肉たっぷりに・・・)」
「あ~ら、大したお世話してないし・・・もう、必要なさそうね!」

わたしは、アンドレが手にしているショットグラスを取り、一口飲んだ。
(物凄い強い酒だったが・・・むせないように頑張った!)

「はい、今後はわたしが世話しますので、もう結構です。
ところで、何処かでお目にかかったような気がしますが?」

と、言いながらわたしは、アンドレの足を思いっ切り、踏んだ。
アントワネットさまの様に、ピンヒールじゃなかったのをありがたく思え。

今度はアンドレの方を見なかったが、身長が10センチは伸びたような気がした。
クククク・・・この位痛い目にあってもいいはずだ!

ジェルメーヌというオンナも、アンドレに構わず、話を続ける。

「いつもヴェルサイユはたいへんな人ですものね」
「やはり、そちらの方で、ですか。最近、宮廷の方には、ご無沙汰で・・・、
もしかしたら、ボーフォール公爵のご令嬢では・・・」と、わたしは、ひっそりと尋ねた。


ジェルメーヌは悪びれもせず、淡々と言った
「よくご存じです事。私が宮廷に上がっていた頃は未だ、貴女は幼かったはず・・・」と
「わたしは、一度お目にかかった方は忘れません。」

隣でアンドレが、冷や汗をかきながら聞いているのを、わたしは、楽しんでいた。


BGM Two Ghosts
By Harry Styles

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