♪In The Lap Of The Gods


そんな日々でも、仕事はこなさなければならない・・・。

レヴェとヴィーが一緒に行く、と言い出した。衛兵隊もまとまってきているので連れていくことにしたが、玩具も持って行くと言い出し、大荷物を持って馬車を用意すると、ドーベルマンたちもついてきた。

衛兵隊の門をドーベルマン三頭を連れて通ると、門番たちが驚いている。無理もない、子連れの上に、犬連れだ。馬車を降りると、ソワソン少尉とフランソワ始め1班の連中が、興味深げに近づいてくる。

「隊長のお子さんですか?」
フランソワが堪らず声をかけて来る。
「ああ、そうだ、レヴェとヴィー、・・・後で剣の相手を頼もうかな!」
「よ・・・喜んで!」ジャンも楽しそうだ。

午前中の訓練が終わると、わたしはソワソン少尉にレヴェの剣の相手を頼んだ。
彼は快く承諾してくれた。

もう一人・・・ヴィーの相手は誰にしようか?と、見渡すと・・・。みんな目を輝かせて、声がかかるのを待っている。小さい子どもの相手なら、フランソワが適任だろうと、指名した。フランソワは飛び上がらんばかりに喜んでいた。

はたして・・・ソワソン少尉相手にレヴェは手こずっていた。元々負けん気の強いソワソン少尉は、8歳の子ども相手でも手加減せず、追い詰めていく。守るのが得意のレヴェは必死になって防御しているが、それだけでは勝負がつかない。これは、いい相手を見つけたと、わたしは思った。

一方で、4歳のヴィーはまだ、おもちゃの剣でフランソワに遊んで貰っている。幼い弟がいるフランソワは心得ていて、時たまやられたふりをして、大げさに転がってヴィーを喜ばせている。

子ども達は、この連中に任せておけば良いだろうと、ジャックを残して、わたしは司令官室に戻った。

扉を開けた途端!!!!!司令官室中に広がる、おもちゃ!おもちゃ!おもちゃ!また、ロンパールームになっている!!!わたしはおもちゃを踏まないよう、つま先で歩き、どうにか机にたどり着き、午前中に片づけなければならない書類と格闘した。

書類の山に没頭していると・・・子ども達の声が聞こえてきた。
時計を見ると、昼になっていた。

昼食を3人分運んでもらって、おもちゃをかき分け、
何とかテーブル周りをスッキリさせる。
三頭の犬の場所も作らねばならなかった。

食事を始めた。

・・・が、レヴェの様子がおかしい。元気がない。
食も進まないし・・・、左手を隠している様だ。

暫く見守っていると、
「ママン、ぼくは近衛隊に入れるの?」と、聞いてきた。

今更と言うか、この、今になって何を言い出すのかと思った。
「ああ、おまえが望めばな!」

すると、ヴィーが、
「レヴェ兄ちゃんは、入れないんだよ!」と、言い出した。

「どうしてだ?」不思議に思ってわたしは、ヴィーに顔を向けた。
「だって、レヴェ兄ちゃんは、青い血が流れていないもん!」

血がどうしたって!怪我したのか?
「レヴェ!左手を見せてみろ!」
「イヤだ!」
「何故だ?」
「だって、ぼく・・・」

わたしは、又おもちゃをかき分け、短剣を持ってテーブルに戻ってきた。
そして、自分の指を短剣の先で傷つけた。

赤い血がぷっくりと、出てきた。
レヴェは、目を丸くして驚いている。
ヴィーも口を、あ~んぐりと開けている。

「分かったか?レヴェ?血は誰でも赤い!
手を出してみろ!傷を見てやる!」
おずおずとレヴェが、左手をテーブルの下から出してきた。

ホッとした。
ほんの少し剣でかすったようだ。
もう傷は塞がっていた。

今度はヴィーが両手を後ろに隠してしまった。
「どうした?ヴィー?」
「ぼくの手も切るの?」
「なんでだ?」
「ぼくの血が、青いかどうか、見るの?」

何という事だろうか、こんなに小さい子どもなのに、
身分と言うものが、自分たちは『貴族である』という、すり込みがあるのか・・・。
おなじ人間なのに・・・な。

「安心しろ!おまえの血も赤いぞ!切らなくても分かる。」
「じゃあ、ママンも、レヴェ兄ちゃんも、ぼくも、貴族じゃないの?」
「人間の血は、みんな赤いものなんだぞ」
「ぼく、良く分からない・・・」
「わたしもだ!」

それから、しばらく沈黙が続いた。が、レヴェがホッとしたように、先ほどの、剣の稽古の話しをしだすと、ヴィーも顔を上げて剣の勇士となった自慢話をしだした。
一見和やかで楽しいランチタイムだったが、それぞれが、心に何かわだかまりを持っていた。

しかし、その晩、ベッドの中で、また、ヴィーが訳の分からない事を言い始めた。

「ママン、ソワソンお兄ちゃんは貴族でしょ?」
「あゝ、そうだが…」
「じゃあ!やっぱり青い血だよ!お兄ちゃんの手に青い線があったもん!」
「それは、皮膚の上から見たら、みんな青く見えるもんだ!ほら!わたしのだって…」

「でも、ぼくの父上は貴族だから、やっぱり青い血が流れているんだよ。
レヴェ兄ちゃんは、とうさんが…何処の馬の骨か分からないって…。」
「ヴィー!!」
思わず、怒鳴ってしまった。

レヴェが繋いでいた手を放し、離れようとしたので、抱き寄せた。…いつもアンドレがしてくれるように…。

「人間はみんな、赤い血で、みんな平等だ」
「だって、ぼく達は貴族だけど、フランソワは平民だって、言ってたよ」
「ぐっ!」

「じゃあ、じゃあ!おーさまの血はどうなの?
おーひさまは?」
「国王陛下も王妃さまも、血は赤いぞ!」
「でも!おーけんしんじゅ説、なんでしょ?
ぼく…わからないよ〜」

何処で、この4歳になる息子は、そんな事を聞いて来たのだろうか?
わたしだってそれで今、悩んでいるのに…、
自分がぶち当たっている問題をどうやって説明しろと言うんだ!

こっちが知りたいくらいだ!
豆腐に頭を打ちつけたくなった!

BGM I Wanna Know Why
By Aerosmith
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