フランス衛兵隊、第一班の結束。但し、アラン抜き。
アランが、昼食も食べずに、出掛けた。
午後は、半休と1班の面々は、聞いていた。
しかし、アランが有給休暇を使うとは、考えられなかった。
アランに、ジャンが張り付いた。
ピッタリと…。
フランソワは、隊長が、いつもと変わりなく食事をしているのを、見た。
そして、いつものテーブルで、ジョルジュとロジェも、一緒だった事も…。
すると、1班のアランを抜かした『隊長親衛隊』つまり、アンドレが不在の今、隊長をお守りする為に、組織された面々は、…元々は、アランもいたが…。
ここの所の、アランと隊長の、距離感がおかしいと感じ始めていた。
それなので、アランをハブして行動していた。
とにかく、彼らはそれぞれの持ち場に、散って行った。
そして、隊長とアランの間に、何が起こったのか、今日こそ突き止めようと、捜査が始まった。
ジャンは、アランが正門を出て、直ぐ右に曲がったのを見た。
まだ、隊の中にいるピエールに、指笛で、知らせた。
更に、ジャンが付いて行くと、アランは、アランに全く似合わないカフェに入った。そして、テラス席に腰を下ろした。そのカフェの名は、『アンジェリーナ』。
ここは、いつか彼女が出来たら、向かい会ってランチをする…隊員隊の夢のカフェだ。そこに、絶対に、似合わないアランが座っている。これだけで、十分に要警戒情報だ。
情報が次々と、本部であるピエールの元に、飛び込んでくる。それぞれ、兵舎の中では、指笛を鳴らし、目を見かわし、持ち場へと散る。
すると隊長が、護衛なしで、正門を出た。が、アランが向かった通りと反対の、左手に折れて行った。真逆の事をした。この行動は、彼らの捜索意欲を燃え立たせた。
ここまでは、オスカルの日頃の訓練が、行き届いていると、褒められる筈だ。だが、そのオスカルが、衛兵隊には、ずっと…1か月近く…出仕していないなど、アラン以外、誰も知らなかった。
今日こそ、真相を突き止めてやる!
そして、我らが隊長をお守りするのだ!
宿敵アランから…。
アランが隊長にお熱なのは、誰でも知っていた。けれども、アンドレが護衛できなくなると、アランは率先して、隊長を護っていた。
誰の目にも、アランが自分の心を偽り、心底隊長を護衛しているのを、褒めたたえていた。
それなのに、ここに来て、妙に親しくなっている。しかも、タメで話している。気安く肩を組もうとまでして、慌てて止める。そして、とんでもない事に、隊長と2人だけで、呑みにまで行っているようだ。
けしからん!
1班マイナス、アランは、団結した。
元々、結束が固い班だった。
それだけに、敵を見つけると、更に、強化された。
フランソワが、オスカルの後を追った。しかし、これは超困難な任務だ。隊長は、何時でも、何処でも、360°目を光らせ近づいてくるものに、警戒を怠らなかった。アンドレ然り。
あまり近づくと気付かれる。さりとて、離れても煙に巻かれるだろう。フランソワは、軍服を着てきたことを、後悔した。が、軍服以外、着る物など持っていない。仕方がないので、家々の入り口のくぼみに隠れながら、付いて行った。
フランソワの後には、ジュールが、交代要員として、付いている。すると、オスカルは手を上げ、通りがかりの辻馬車を止め、乗り込んだ。
う!フランソワは、息をのんだ。隊長が、辻馬車に乗るなんて、誰一人予想していなかった。追わなくては、フランソワは持ち前の、足の長さを駆使して、追いかけた。ジュールは、フランソワの行動を確認すると、本部に走った。
ピエールは、考えた。隊長を追うのは、無理だ。それならば、アランだ。ジャンを『アンジェリーナ』へと、向かわせる。しかし、アランも曲者だ。オスカル同様、根っからの軍人。下手に近づくと、見破られる。
1班マイナス、アランは、必死だった。
今日を逃しては、もう後がないと、皆思っている。
アランに張り付いているジャンの元へ、ルイ・マローが、助っ人に来た。すると、何処からか、疲れた、ひづめの音が聞こえてきた。辻馬車である。
アランが、辻馬車を止めるでもなく、馬車はアランの目前に停まり、アランは無言で乗った。
辻馬車は、走り出す。
その後ろから、息を切らしたジュールとフランソワが、来た。
四人揃って、顔を見合わせた。
辻馬車に、アランが乗り込んだ。
事実は、それだけだ。
だが、大問題だ。
アランが、辻馬車に乗るなんて、前代未聞の事だった。
多分、中には隊長が乗っていた筈だ。
本部に知らせようとも、彼らの連絡手段は、指笛だけ。
衛兵隊内なら、耳をすませば、聞こえる。
たが、正門を出たとなると…。
今日の、追跡は無駄だったか…。
ジャン・シニエ、ルイ・マロー、ジュール・ロセロワ、フランソワ・アルマンの4人は、トボトボと兵舎に戻った。
しかし、ピエール・アルマンは、笑顔で4人を迎え、労った。
そして言った。果報は寝て待て…と。
*********************
アンジェリーナに居るアランの、目前に辻馬車が、停まった。
アランが目を剥いた。
外側だけだが、隊長ともあろう方が、辻馬車…。
この前の襲撃事件で、懲りたか?
アランが、ブツブツ言っていると、
中から、怒鳴り声が聞こえた。
早く乗れ!
アランが乗り込むと、辻馬車は、走り出した。
アランは、アンドレの正面に座ろうとした。
アンドレは、黙って自分の隣を指差した。
アランは、正面に座って、隊長のご尊顔を、拝見する魂胆だった。
アンドレには、それが、気にくわなかった。
アンドレは、しばらく馬車の揺れに身を任せ、黙って外を見ていた。しばらく行くと、木々の生い茂りが少なくなって、パリに近づいた事を知らせていた。
アランは、外側オスカルを見つめて、メロメロになりかけたが、
ここ最近、何度も言い聞かせている言葉を、思い出した。
こいつは、隊長ではない。
隊長の皮を着たアンドレなのだ!と…。
「おい!アンドレ!何処に行くんだ?
まさかこのまま、辻馬車で優雅にパリ巡り、じゃないだろうな?
まあ、おれとしては、おまえが黙って、隣に乗っているのなら、付き合ってもいいぜ!」
「それもいいな!
このまま、パリを散策するか…」
「バッ!バカ言うな!
その為に、俺の貴重な有給休暇を、使わせたのか?」
「馬鹿は、おまえだ。
気付いていないのか?」
「エッ?なんだ?
もしかして、隊長にお戻りなされたのですか?」
アンドレが、後ろを指差した。
アランは、すかさず窓の外に、頭を出そうとした。
「頭を出すな!バカ野郎!
ヴェルサイユから、ずっとだ。
一頭は、レーヌ・ノワール、それから、レーヌ・ブラン、レーヌ・ルージュだ」
アランは、アンドレの制止を忘れて、振り向こうとした。
アンドレは、アランの前にナイフを出し、制止さした。
「何すんだ!馬鹿野郎!
手で、止めりゃあいいだろう!」
「イヤダ!オスカルの手で、おまえに触れたくない!」
「けっ!全く、こんな時にも、こだわるのか…。
でも、誰だ。レーネ・ノワールは、暴れ馬。
乗れる奴は…衛兵隊の中でも、限られてるぞ。」
「ああ、4人だ。オスカルとおれ。そして、おまえ。
それから、もう1人…メルキシオール・シャロンだ」
「ほ~、わざわざ、付けてきたのか。
ん?何の為に?」
「おまえ、バカか?
最近、おまえが、おれに気安くちょっかい出す。
おれが、ブラブラしていると、現れる。
だから、1班の連中は怪しんでいるんだ。
それで、別々に隊を出ようとした。
う~ん、これが間違っていたか?
やはり、豪華馬車で、出た方が、良かったか?」
「おい!呑気に反省会を今からするな!
今の状況を、考えろ!
それに、何を企んで、パリまで来たんだ?」
「ああ、そうだな。
路地なら、馬では入って来られない。
飛び降りるか…」
アンドレは、辻馬車の馭者に、思いっきりスピードを上げてくれ。場所を見計らって、飛び降りる。その後も、暫く走ってくれ。それからは、好きにしてくれ。金は、多めに渡す。
それだけ伝えると、馭者は、後ろの三頭を、撒けばいいんだな。だいたい、おまえさんの様な、お偉いさんが、辻馬車に乗ってきた時から、おかしいと思ってやした。
任せてくれ。こういう事には、慣れっこだ。
行くぜ!旦那方!
そう言うなり、辻馬車は、速度を上げた。
瘦せこけた馬が、悲鳴を上げるが、お構いなし。
追う3人も、馬に鞭を入れた。
3人が、暫く追いかけると、辻馬車のスピードが、戻った。
あちらこちらと、流しているようだ。
と、手を上げている客を乗せた。
え!
レーネ・ノワールの、メルキシオール・シャロン。
レーヌ・ブランの、ミシェル・ヴェール。
レーヌ・ルージュの、ラサール・ドレッセル。
3人は、手綱を引き、馬を急停車させた。
隊長とアランは?
気付かれたか…。
他人を乗せて迄、我々を欺く、必要があるのか…。
ますます、1班の疑惑が、3人の中で大きくなった。
メルキシオールが、2人の制止を無視して、
辻馬車の横に、レーネ・ノワールを付けた。
恐る恐る、中を覗いてみた。
いなかった。
どうしよう?
隊に戻るか?
それじゃあここ迄追ってきた、意味が無くなる。
じゃあ、別れて探すか?
多分、路地に入ったと思う。
見つけても、独りでは対処できない。
3人で、回ろう。
こうして、衛兵隊第一班の、馬術に長けた3人は、トボトボとパリ市内を並足で、歩く事となった。
そして、ヴェルサイユの衛兵隊内には、アランと一線を交えるという、過酷な任務を与えられたルイ・アローが、ポツンと待っていた。
一方で、路地に入り込んだ2人は…。
「おい!アンドレ、これからどうするんだ?
いくら、中身がおまえでも、外側隊長と、こんなに接近していると、変な気分になって来る」
「それは、困る。
もう奴らも、遠ざかっただろう。
ここを出よう」
こうして、外見オスカルと、外見も中身もアランは微妙な距離感で、歩き始めた。
つづく
アランが、昼食も食べずに、出掛けた。
午後は、半休と1班の面々は、聞いていた。
しかし、アランが有給休暇を使うとは、考えられなかった。
アランに、ジャンが張り付いた。
ピッタリと…。
フランソワは、隊長が、いつもと変わりなく食事をしているのを、見た。
そして、いつものテーブルで、ジョルジュとロジェも、一緒だった事も…。
すると、1班のアランを抜かした『隊長親衛隊』つまり、アンドレが不在の今、隊長をお守りする為に、組織された面々は、…元々は、アランもいたが…。
ここの所の、アランと隊長の、距離感がおかしいと感じ始めていた。
それなので、アランをハブして行動していた。
とにかく、彼らはそれぞれの持ち場に、散って行った。
そして、隊長とアランの間に、何が起こったのか、今日こそ突き止めようと、捜査が始まった。
ジャンは、アランが正門を出て、直ぐ右に曲がったのを見た。
まだ、隊の中にいるピエールに、指笛で、知らせた。
更に、ジャンが付いて行くと、アランは、アランに全く似合わないカフェに入った。そして、テラス席に腰を下ろした。そのカフェの名は、『アンジェリーナ』。
ここは、いつか彼女が出来たら、向かい会ってランチをする…隊員隊の夢のカフェだ。そこに、絶対に、似合わないアランが座っている。これだけで、十分に要警戒情報だ。
情報が次々と、本部であるピエールの元に、飛び込んでくる。それぞれ、兵舎の中では、指笛を鳴らし、目を見かわし、持ち場へと散る。
すると隊長が、護衛なしで、正門を出た。が、アランが向かった通りと反対の、左手に折れて行った。真逆の事をした。この行動は、彼らの捜索意欲を燃え立たせた。
ここまでは、オスカルの日頃の訓練が、行き届いていると、褒められる筈だ。だが、そのオスカルが、衛兵隊には、ずっと…1か月近く…出仕していないなど、アラン以外、誰も知らなかった。
今日こそ、真相を突き止めてやる!
そして、我らが隊長をお守りするのだ!
宿敵アランから…。
アランが隊長にお熱なのは、誰でも知っていた。けれども、アンドレが護衛できなくなると、アランは率先して、隊長を護っていた。
誰の目にも、アランが自分の心を偽り、心底隊長を護衛しているのを、褒めたたえていた。
それなのに、ここに来て、妙に親しくなっている。しかも、タメで話している。気安く肩を組もうとまでして、慌てて止める。そして、とんでもない事に、隊長と2人だけで、呑みにまで行っているようだ。
けしからん!
1班マイナス、アランは、団結した。
元々、結束が固い班だった。
それだけに、敵を見つけると、更に、強化された。
フランソワが、オスカルの後を追った。しかし、これは超困難な任務だ。隊長は、何時でも、何処でも、360°目を光らせ近づいてくるものに、警戒を怠らなかった。アンドレ然り。
あまり近づくと気付かれる。さりとて、離れても煙に巻かれるだろう。フランソワは、軍服を着てきたことを、後悔した。が、軍服以外、着る物など持っていない。仕方がないので、家々の入り口のくぼみに隠れながら、付いて行った。
フランソワの後には、ジュールが、交代要員として、付いている。すると、オスカルは手を上げ、通りがかりの辻馬車を止め、乗り込んだ。
う!フランソワは、息をのんだ。隊長が、辻馬車に乗るなんて、誰一人予想していなかった。追わなくては、フランソワは持ち前の、足の長さを駆使して、追いかけた。ジュールは、フランソワの行動を確認すると、本部に走った。
ピエールは、考えた。隊長を追うのは、無理だ。それならば、アランだ。ジャンを『アンジェリーナ』へと、向かわせる。しかし、アランも曲者だ。オスカル同様、根っからの軍人。下手に近づくと、見破られる。
1班マイナス、アランは、必死だった。
今日を逃しては、もう後がないと、皆思っている。
アランに張り付いているジャンの元へ、ルイ・マローが、助っ人に来た。すると、何処からか、疲れた、ひづめの音が聞こえてきた。辻馬車である。
アランが、辻馬車を止めるでもなく、馬車はアランの目前に停まり、アランは無言で乗った。
辻馬車は、走り出す。
その後ろから、息を切らしたジュールとフランソワが、来た。
四人揃って、顔を見合わせた。
辻馬車に、アランが乗り込んだ。
事実は、それだけだ。
だが、大問題だ。
アランが、辻馬車に乗るなんて、前代未聞の事だった。
多分、中には隊長が乗っていた筈だ。
本部に知らせようとも、彼らの連絡手段は、指笛だけ。
衛兵隊内なら、耳をすませば、聞こえる。
たが、正門を出たとなると…。
今日の、追跡は無駄だったか…。
ジャン・シニエ、ルイ・マロー、ジュール・ロセロワ、フランソワ・アルマンの4人は、トボトボと兵舎に戻った。
しかし、ピエール・アルマンは、笑顔で4人を迎え、労った。
そして言った。果報は寝て待て…と。
*********************
アンジェリーナに居るアランの、目前に辻馬車が、停まった。
アランが目を剥いた。
外側だけだが、隊長ともあろう方が、辻馬車…。
この前の襲撃事件で、懲りたか?
アランが、ブツブツ言っていると、
中から、怒鳴り声が聞こえた。
早く乗れ!
アランが乗り込むと、辻馬車は、走り出した。
アランは、アンドレの正面に座ろうとした。
アンドレは、黙って自分の隣を指差した。
アランは、正面に座って、隊長のご尊顔を、拝見する魂胆だった。
アンドレには、それが、気にくわなかった。
アンドレは、しばらく馬車の揺れに身を任せ、黙って外を見ていた。しばらく行くと、木々の生い茂りが少なくなって、パリに近づいた事を知らせていた。
アランは、外側オスカルを見つめて、メロメロになりかけたが、
ここ最近、何度も言い聞かせている言葉を、思い出した。
こいつは、隊長ではない。
隊長の皮を着たアンドレなのだ!と…。
「おい!アンドレ!何処に行くんだ?
まさかこのまま、辻馬車で優雅にパリ巡り、じゃないだろうな?
まあ、おれとしては、おまえが黙って、隣に乗っているのなら、付き合ってもいいぜ!」
「それもいいな!
このまま、パリを散策するか…」
「バッ!バカ言うな!
その為に、俺の貴重な有給休暇を、使わせたのか?」
「馬鹿は、おまえだ。
気付いていないのか?」
「エッ?なんだ?
もしかして、隊長にお戻りなされたのですか?」
アンドレが、後ろを指差した。
アランは、すかさず窓の外に、頭を出そうとした。
「頭を出すな!バカ野郎!
ヴェルサイユから、ずっとだ。
一頭は、レーヌ・ノワール、それから、レーヌ・ブラン、レーヌ・ルージュだ」
アランは、アンドレの制止を忘れて、振り向こうとした。
アンドレは、アランの前にナイフを出し、制止さした。
「何すんだ!馬鹿野郎!
手で、止めりゃあいいだろう!」
「イヤダ!オスカルの手で、おまえに触れたくない!」
「けっ!全く、こんな時にも、こだわるのか…。
でも、誰だ。レーネ・ノワールは、暴れ馬。
乗れる奴は…衛兵隊の中でも、限られてるぞ。」
「ああ、4人だ。オスカルとおれ。そして、おまえ。
それから、もう1人…メルキシオール・シャロンだ」
「ほ~、わざわざ、付けてきたのか。
ん?何の為に?」
「おまえ、バカか?
最近、おまえが、おれに気安くちょっかい出す。
おれが、ブラブラしていると、現れる。
だから、1班の連中は怪しんでいるんだ。
それで、別々に隊を出ようとした。
う~ん、これが間違っていたか?
やはり、豪華馬車で、出た方が、良かったか?」
「おい!呑気に反省会を今からするな!
今の状況を、考えろ!
それに、何を企んで、パリまで来たんだ?」
「ああ、そうだな。
路地なら、馬では入って来られない。
飛び降りるか…」
アンドレは、辻馬車の馭者に、思いっきりスピードを上げてくれ。場所を見計らって、飛び降りる。その後も、暫く走ってくれ。それからは、好きにしてくれ。金は、多めに渡す。
それだけ伝えると、馭者は、後ろの三頭を、撒けばいいんだな。だいたい、おまえさんの様な、お偉いさんが、辻馬車に乗ってきた時から、おかしいと思ってやした。
任せてくれ。こういう事には、慣れっこだ。
行くぜ!旦那方!
そう言うなり、辻馬車は、速度を上げた。
瘦せこけた馬が、悲鳴を上げるが、お構いなし。
追う3人も、馬に鞭を入れた。
3人が、暫く追いかけると、辻馬車のスピードが、戻った。
あちらこちらと、流しているようだ。
と、手を上げている客を乗せた。
え!
レーネ・ノワールの、メルキシオール・シャロン。
レーヌ・ブランの、ミシェル・ヴェール。
レーヌ・ルージュの、ラサール・ドレッセル。
3人は、手綱を引き、馬を急停車させた。
隊長とアランは?
気付かれたか…。
他人を乗せて迄、我々を欺く、必要があるのか…。
ますます、1班の疑惑が、3人の中で大きくなった。
メルキシオールが、2人の制止を無視して、
辻馬車の横に、レーネ・ノワールを付けた。
恐る恐る、中を覗いてみた。
いなかった。
どうしよう?
隊に戻るか?
それじゃあここ迄追ってきた、意味が無くなる。
じゃあ、別れて探すか?
多分、路地に入ったと思う。
見つけても、独りでは対処できない。
3人で、回ろう。
こうして、衛兵隊第一班の、馬術に長けた3人は、トボトボとパリ市内を並足で、歩く事となった。
そして、ヴェルサイユの衛兵隊内には、アランと一線を交えるという、過酷な任務を与えられたルイ・アローが、ポツンと待っていた。
一方で、路地に入り込んだ2人は…。
「おい!アンドレ、これからどうするんだ?
いくら、中身がおまえでも、外側隊長と、こんなに接近していると、変な気分になって来る」
「それは、困る。
もう奴らも、遠ざかっただろう。
ここを出よう」
こうして、外見オスカルと、外見も中身もアランは微妙な距離感で、歩き始めた。
つづく
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