♪Gimme The Prize(Kurgan’s Theme)

12月22日、オスカルは、よもや自分が出場するとは思っていない、
アンドレを従えて、明後日の試合の下準備に取り掛かっていた。

上座に座る父上と自分の位置からも見えるようプロジェクターを配置し、
ノートパソコンを操作して具合を確かめてみる。
実際のグループ分けを見せるといけないので細心の注意を払うのも忘れずに。

アンドレは、オスカルの指示するままに作業をしていたが、
明後日の試合の意味を思うと、複雑な面持ちになった。

何故、前日に仕度をしないのか?
オスカルに訊ねたが、妙にはぐらかされてしまった。
どこか、腑に落ちない気持ちのまま動いていた。

一方で、オスカルの様子を見ると、とても楽しそうで、
鼻歌でも出てきそうなくらい陽気にしている。
ちょこちょこと動き回って可愛いことこの上ない。
思わず抱きしめたくなる己を制するのに苦労した。

見渡してみると、かなり手強そうな、武者も大勢いる。
多分、オスカルは、気に入らない相手には勝つ自信があるのだろうが、
もしかしたら、自分の知らない所で、
誰か意中の男を見つけてしまったのではないかと、不安にもなってしまった。


12月23日、『美しい花嫁と道場主の座をゲットする男の闘い大会』の前日となった。
        ↑もう、大会の名前が分からなくなりました。
この日も夜明け前からオスカルとアンドレは野山を走って、雑木林で居合の稽古をし、
木刀で剣術の腕を磨き鍛錬に余念が無かった。


アンドレはいつものように、淡々とこれらをこなして行っていた。

一方のオスカルの方はアンドレの仕上がり具合、
身体に不調はないか、様々な角度からアンドレの様子を見ていた。

大丈夫なようだった。
これなら、計画通りに行くだろう、とオスカルはニヤリとした。

道場の方でも今日は明日に備えて稽古に真剣さが増していた。
そんな中、オスカルは、そっと道場を抜け出すと
予定通りエステティックサロンに向かった。

一方のアンドレは、試合の前日だというのに黙って消えたオスカルに首をかしげながらも、オスカルに指示をされた通り、翌日の準備を黙々としていた。

一見、何事もないように、しかし、緊迫した一日は終わり、
道場はひっそりと眠りの中にいた。

そんな草木も眠る丑三つ時(って何時?)、
オスカルは、そっと部屋を出るとアンドレの部屋に向かった。

オスカルがそっとアンドレの部屋に入ると、
既にオスカルの気配を察していたアンドレが起き上がっていた。

寝間着姿のオスカルを見て驚いたが、それ以上にオスカルの美しさに息をのんだ。
しかし、オスカルはそんな事には頓着していなかった。

普段アンドレに見せていた女らしさも見せずにいた。
厳しい、凛としたたたずまいだった。

無言のままオスカルは、アンドレの布団の横に正座すると、
両手をつき頭を下げた。
その姿を見てアンドレは、これは何事かと、
自身も反対側の畳に下りると向き合って正座をした。

オスカルは少し顔を上げると、口を開いた。
「アンドレ、明日は思いっ切り戦って勝ち上がってくれ!」

「え゛?だって、おれは出場申込書を提出なんてしていないぞ!」
すると、オスカルは袂から1枚の紙を出して、アンドレに見せ、ニヤリとした。

「あ゛!おまえ!謀ったな❗️」
「ふふふ・・・・・おまえの文字くらい朝飯前だ!
いいか?アンドレ!悪いようにはしない!

二兎を追うもの二兎をも獲る、で、行け❣️
わたしを信じて、戦ってくれ❣️

ドーピング検査なんて無いから・・・・」
と言って、背後からレジ袋いっぱいの、
栄養ドリンクをアンドレの前に差し出した。

「これを飲んで、思いっ切り戦って勝ってくれ!」

アンドレは、思わず目をみはった。
まったく、やる事の見当がつかないお嬢様だ!・・・・・と思った。
いったいいつの間に、・・・・・こんなものを買いに行ったのやら。

昼間居なかったのは、この為か?
それにしては、長時間の外出だったが、

でも、一番信頼のできる相手でもあった。

しばらく、レジ袋とオスカルの目を交互に見て、・・・・・
アンドレは、口を開いた。

「わかった❣️オスカル、おまえを信じる❣️
戦った先に何が有るかわからないが、・・・

おれの気持ちを知っている、おまえに、おれの運命を任せる❣️
見ていろ❣️
明日は道場中を、あっと言わせてやるからな❣️」

オスカルの顔から初めて笑みがこぼれた。

「ありがとう、アンドレ

それから、その栄養ドリンクは、今夜は飲むなよ!
眠れなくなるからな❣️」

「あゝ!今夜はゆっくり休ませてもらうよ❣️」

2人はお互いの目を見て、手をついて頭を下げると、
礼儀正しく「おやすみなさい」と言い、

オスカルは静かにアンドレの部屋を出た。

自室に戻ると、オスカルは直ぐに布団に入った。
アンドレが作ってくれた湯たんぽが、体を温めてくれて、
にこにこと眠りについた。

アンドレは、栄養ドリンクの中から明日の朝、飲むだろう一本を出すと、
優しく抱きしめて眠りについた。

  ********************

翌朝、夜明け前、アンドレがいつものように玄関に現れると、
いつものように、オスカルも忍者ハットリくんになって立っていた。

「今日はどうする?アンドレ?」
「ああ、今朝は軽くウオーミングアップ位にしておくか?」

「ふふふ( *´艸`)おまえに任せる!
後をついていくから、おまえのペースで行こう!」
「じゃあ、高台までジョギングして、その後に相手を頼むな!」
「了解!」

  ********************

戻って来て、朝食の時間になるとフランソワが、ここのところそうしているように、オスカルにホカホカのご飯を持って行こうとした。

それを、アンドレが、跳ね除け、久しぶりにオスカルに手渡し、オスカルも満面の笑みで受け取った。

この様子を、面白くなく見ている男がいた。
ジェローデルであった。
が、直ぐにアンドレのへなちょこぶりを思い出し、くっくっく・・・・・と笑った。

その後、男たちがノロノロと稽古を始めるもの。ストレッチを始めるもの。
が、いる中、グループ分けの表がプロジェクターに映し出された。

アンドレは、Gグループ、ジェローデルは、Poグループ、アランは、Sグループ。
みんな集まって、己のグループに強豪はいないか、
自分は決勝トーナメントに行けるかどうか、算段し始めた。

アランがアンドレの側に行き
「おまえが出場するとは、思わなかったぜ!
やはり、あの女に惚れていたのか?」
「まあ、いろいろとあってな、・・・・・
それより、この調子だと準決勝で、おまえと当たるようだな!

おまえの欠点は全て知っている。
長所もだが、・・・・・いい試合になりそうだ!」
「ああ、そうだな!
お互い恨みっこなしで行こうぜ!」

「もちろんだ!・・・・・必ず準決勝まで、勝ち上がって来いよ!」
「当ったり前だぁ!」


午前9時、いよいよ戦いが始まった。
グループは16組ある。
それぞれに審判が付いて、熱戦が始まった。・・・・・

・・・・・・・・・・・・・かなり省略・・・・・・・・・・・・・・・

そして、1つのグループの試合に、道場の門弟たちは釘付けになった。
アンドレのいるGグループである。

ずっとへなちょこだと思っていた、アンドレが、勝ち点9を取り、
トップで決勝トーナメントに進んだのである。

高みの見物のオスカルは、ドヤ顔で、これを見ていた。

一方でSグループはアランが順当に勝ち上がり、
ジェローデルもPoグループトップであった。

アンドレとアランが目を交わして、ニヤリとした。

・・・・・・・・・・・・・そしてまた、かなり省略・・・・・・・・・・・・・

そして、決勝トーナメントの日となった。
この日は朝から物見高い見物客も押しかけた。

また、手にするのも竹刀から木刀となる為、
怪我人・・・・・打撲くらいならいいが、骨折するものも出て来るであろうと、
ラ・ソンヌ先生も待機していた。

道場主のレニエは、とても楽しそうだった。
押さえておかないと、いったい何のための大会だか忘れて、出場しそうな様子だった。

オスカルは、対戦表を入力するのが思ったより忙しくて、
アンドレに密かに熱い視線を贈るのを、忘れそうになり、
慌てる事がしばしばだった。

決勝トーナメントは序盤から、かなりの真剣勝負であった。
やはり、打撲、骨折、捻挫・・・・・と負傷者が続出で、ラ・ソンヌ先生は大忙しである。

また、フランソワとジャンも、
床に滴った汗、血液、そして悔し涙を拭いて廻るのに忙しかった。
それらは放っておくと素足で戦う者達が滑る危険があったからである。


・・・・・・・・・・・そしてまた、かなり省略・・・・・・・・・・・・


決勝トーナメントは、準決勝になった。
一方は、ジェローデルVS信長。
もう一方は、アランVSアンドレである。

BGN What Kind Of Love Are You On
By Aerosmith



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