♪Play The Game

師走の慌ただしさと共に、『花嫁ゲット大会』に向けて、道場中が沸き立ってきた。
花嫁獲得試合に出場申し込みの書状が、どんどん届けられ、
道場の門弟の中でも、我こそは!と、思うものが名乗りを上げていた。

相変わらずアンドレは、どこ吹く風の体を装っている。
そんなアンドレを見て、オスカルはますます母性本能をくすぐられ、
愛おしく、また、可愛く思えてくるのであった。

そして、爽やかな微笑みを彼に送ると、
アンドレは眩しそうな眼をしたかと思うと、
ふっと横を向いてしまう。

今度は,オスカルの闘争本能が目覚めだすのだった。
どうにかして、アンドレの気持ちを変えてやろう!
必ずわたしの方を見つめさせてやる!と。

とは言っても、オスカルに何か策があるわけでもなく、
ただただ日が過ぎていくのみであった。
そして、相変わらず書庫にこもっては、書物とにらめっこの毎日を送っていた。

まだ、挑戦者の締め切りより随分と前に道場主である父が、オスカルを自室に呼んだ。

「かなり思っていたよりも人数が集まりそうだ。
一日で大会を終わらそうと思っていたが、
どうやら、2日はかかりそうだ。
おまえはどう思うか?オスカル?」

「そうですね、父上。
いっその事、3日間として、それぞれを4人ずつのグループに分けて、総当りにし、
そのトップ2人をトーナメント戦として行ったらよろしいかと思います。
つまり、ワールドカップサッカーの方式です。」

「ふむふむ。」
「つきましては、わたくしの将来の事でございますから、
グループ分け、トーナメントの方式、日程など
わたしに決めさせて頂きたいと思います。」

「異存はない。好きにしろ!」
「ありがとうございます。」

オスカルは、ガッツポーズを決めながら父の部屋から退散した。

そして、またもや書庫に入ると、
必要な部類に入る山になった書物の中から、
『道場運営基準法』、『道場運営基準施行令』を取り上げた。

ついでに、萩尾望都著フラワーコミックス『ポーの一族』全5巻を抱えて自室に向かった。

途中で、アンドレに書庫の中を片づけてもいいぞ!と声をかけるのを忘れなかった。
「7冊持って行く!書庫は冷えていかん!

部屋でゆっくり読むからな~
昆布茶を持って来てくれ!」
いつにない明るい声だった。

一方、書庫の整理へと向かったアンドレは、一歩入った途端、唖然としてしまった。
足の踏み場が無いのであった。

もう少し詳しく言うと、オスカルの歩幅、
オスカルの足のサイズ(25センチ)だけ、
空間が出来ていて、アンドレの大きな足(30センチ)が入る余地はなかった。


書庫の整理が終わったアンドレは、肩コリと腰の痛みに耐えきれず、普段は他人には絶対見せないようにしていた、素振りを道場裏でひっそりと行い、コリをほぐしていた。
そこへこれまた、密かに年上の女性・・・・・オスカルを慕う、二刀流のアランがひっそりと稽古をするために、道場裏に現れた。

アンドレの鋭い剣先を見たアランは、
「アンドレ、おまえ・・・・・・
おまえ、まさか
相当の使い手なんじゃ・・・・・・」

「いいか!しゃべるな
ぜったい、だれにも
しゃべるな
しゃべったら、殺す・・・・・」
アンドレは、アランの微妙な隙をついて、木刀を首筋に向けると言い放った。

「ふふふ( *´艸`)訳がありそうだな・・・・・
だったら、おれがおまえに二刀流を伝授するから、
おまえはおれに、その剣さばきを教えてくれないか?

どうせ、おまえは剣術大会には出ないんだろう?」
           ↑どんどん名称が変わっていく・・・・・

「良いだろう、毎日この時間、この場所で・・・・・ならな!」
「ああ、頼むぜ!」
こうして、アンドレとアランの密かな稽古が始まった。

  ********************

部屋に戻るとオスカルは、システム手帳を取り出し、
自分の隊長(←コレお約束ね)ならぬ、体調リズム管理表を見た。
最後に月のものがあったのは、
・・・・・だから、今度は順調に来れば28日後の・・・・・だ。

少し遅れたとしても・・・・・、
その後、エステに行って、お肌に磨きをかけて・・・・・
と、密やかな女性としての日程を睨みつつ、はたと気が付いた。

いつもなら、ばあやかアンドレにエステティックサロンの予約を頼むのだが、
今回は・・・・・
アンドレはもちろんの事、ばあやに頼むのもチト気恥ずかしい。

そこで、自らサロンに赴いて予約をする事にした。
電話、スマホが無いというのも不便なことだ。

馴染みのエステティックサロンに行くと、
驚いたことに予定の日まで、まだまだ日にちがあるというのに、
予約でいっぱいだという。

どうやら、女性たちはクリスマスに向けて、
磨きをかけるため、その頃に予約が集中している様だった。

困ったオスカルは、
またまたシステム手帳を取り出して、
諸々の予定との調整を始めた。

そこに、どこかの豪商の使いの者が来て、
お嬢さまが彼氏に振られたので予約をキャンセルしてほしい。と言って、帰っていった。

受付嬢がオスカルに、
「12月23日がたった今キャンセルになったので、御予約お取りしましょうか?」
と、聞いてきた。
オスカルは、再びシステム手帳と睨めっこして、考えこんだ。

大会の初日はエステに行って、見学はしないでおこうか、
・・・・・とも、考えたが、アンドレの健闘ぶりも見たいものだと思った。
では、大会を1日ずらして、24日から26日にかけて行う事にしてしまえばいい!

オスカルは、独りでガッテンして、エステの予約を入れた。
「オスカルさま、いつもの通りですと、
フェイシャルと、ヘアカットだけですけれど・・・・・
クリスマスですから、全身のケアと、ネイル、
それから、ムダ毛の処理はいかがですか?」

「う゛!」そこまで考えていなかったオスカルは、固まってしまった。

全身のケア、・・・・・久しく人の手で癒されたことが無かった。
たまにはいいかもしれない。・・・・・

手元を見てみる。・・・・・いかにも武術をしている『手』だ!
この手に、色を重ねて果たして似合うのだろうか?
考え込んでいると、

「では、磨くだけになさってはいかがでしょうか?」
敵も、かきいれ時に必死である。
うん、色を塗らないで健康的に見えるのならいいかな。と、爪磨きを頼んだ。

次は、ムダ毛の処理だ。
幸い腕や足にはそれと言ったムダ毛はない!

そう思って、断ろうと口を開けた瞬間、受付嬢が言葉を発した。
「クリスマスですよ!愛しい殿方と・・・・ネ!

半永久脱毛ですから、一週間くらいなら、大丈夫ですわ!
それに、今でしたら、お試し割引もありますから、
・・・・・試してごらんになったら如何ですか?」

と、言われて、『ネ!』の意味も分からず、
断るに断れなくなってこれも予約してしまった。

「それから、髪はいかがなさいますか?
カットだけでも宜しいようですが、
少し傷んでいるようですわ。

トリートメントなどなされば、金髪が一段と美しく輝きますよ!」
オスカルは、髪の毛先を見つめてみた。・・・・・確かに傷んでいる。
最近、夏からずっとアンドレと修行に明け暮れて、
人に任せて手入れする事を怠っていた。

そこで、メニューにカットとトリートメントも加えた。

・・・・・一日がかりになりそうだ、と思った。
前日までに大会の準備は終えておかなければいけないな、と、頭に入れた。

初めてサロンに予約にやってきた、オスカルは、
まんまと受付嬢の巧みな営業トークに、乗せられてしまった。

一方で、そんな事とは知らないオスカルは、
久しぶりに人の手でボディを磨く喜びに、
乙女心がうきうきしてきてしまった。

すると、通りの向かいのカフェからベルナールとロザリーが腕を組みながら出て来た。
とても幸せそうだった。

パンケーキオスカルもその幸せにあやかりたくなり、カフェへと入り、珍しく装飾過剰なパンケーキを注文してしまった。

もともと甘いもの好き、・・・・・勿論お酒も好きだが・・・・・なので、コーヒーを飲みながら、本日何度目かのシステム手帳を取り出して、今後の予定を検討しだした。




  ********************


挑戦者の書類提出の締め切りの日が来た。
しかし、アンドレは予想通り届けを出していなかった。

オスカルは、平然と書類にアンドレの署名をし、
履歴を書き、
その他の書類に紛れ込ませた。

オスカルにとってアンドレの文字を真似るのは、とても容易い事だった。
そして、にやりと笑った。


いよいよ【ジャルジェ道場の入り婿になる権利争奪戦】が、近づいてきた。

こたつに入りながら、オスカルは、挑戦者の名簿を片手に予選リーグの組分けを始めた。

シロノワール勿論、こたつの上にはアンドレが、尾張の国を通った時に覚えてきた,
シロノワールと
クマさん珈琲クマさん模様のカフェラテがもぐもぐタイムに合わせて置いてあった。
オスカルにとっては、最終戦のアンドレVSジェローデル以外に興味はなかった。
したがって、この二人が最終戦に当たるよう、
2人の書類を避けて、後は適当にグループを決めた。
そして、因縁の2人を配した。





次に、対戦表を道場に掲げなければならない。
さて、どうしようかと部屋の中を見渡してみた。
ノートパソコンを持って来て、ExcelとPowerPointを少々こねくり回してみた。

決勝トーナメントはExcelにテンプレートがありそれを使う事にした。
さて、予選リーグをどうしようかと思ったが、
これはPowerPointで表を作って、
プロジェクターに映し出すことにした。

準備万端である!

BGM Praying For Time
By George Michael
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