♪Ride The Wild Wind
ロジャー、ライブバージョン(ロジャーの経年変化が見られます)
真夏は過ぎ、朝晩はやや涼しい風が吹くようになってきた。それでも、昼間は残暑とはいえ、蝉がこれでもか!これでもか!と、鳴き、太陽はじりじりと熱い。
わたしは、相変わらず、夜明け前の修行に励んでいた。
大分、雑木林の中を、小刀を手に、走り抜けるのに慣れてきたと、わたし的には思っているのだが、アンドレにはそうは見えないらしい。というのも・・・・・雑木林を駆け抜ける、忍者ハットリくんのわたしは、ホントに三等身のKID’Sオスカル、になっているようだ。
今日も、雑木林を抜けて開けた場所に出ると、既に、・・・・・かなり前から、休憩タイムに入っているアンドレが、涼しい顔をして立っている。
そして、わたしが、息を切らして出てくると、子ども相手のように破顔して楽しそうにわたしを見る。しかも、奴はなぜかいつも、大きな石の上に立っているから、ただでさえデカイ奴が、さらに大きくなって見下ろしてくるから、癪に障るったらこの上ない!
オスカルが、雑木林を相手に懸命に走って来る。・・・・・今朝はコーラルピンクだ。暗がりでも目立って、よく見える。大分、上達してきたようだ。元々、武術の素質が並の男以上だったせいもある。
こうして、石の上に立って見ていると、ピンクの丸がちょこちょこと動いていて・・・・・こんな事を言ったら怒られるだろうが、・・・・・可愛い。
ああ!無事、雑木林を抜け出たな。顔は・・・・・良かった!傷一つついていない。美しいおまえの顔を傷つけるような事だけはしたくない。だから、この修行をしていることは、内緒にしておきたかったんだが、一緒に何かを成し遂げようというのは・・・・・勿論、オスカルと、と言うのが、励みにもなる。もう、一人では出来ないかもな!ふふふ( *´艸`)・・・・・。
「大分、早くなったな!ほら!少し水分補給しろ!」
「(´―`*)ウンウン、ありがとう!アンドレ!」
しかしまだ、おまえを待たせてしまっている・・・・・。
もっと、早く走れるようにしなければ、・・・・・
おまえの修行の、足手まといになってしまう!
ふう~、水が美味しい・・・・・。
ゴクゴク ゴクゴク
水分を少し補給して、やっと5.5等身位の自分に戻った時。
アンドレが、珍しく話しかけてきた。
「そろそろ夏も終わりだな。暑気払いに舟下りなど、どうだ?
酒と肴を用意して、・・・・・勿論、舟は貸し切りだ!」
「え゛・・・おまえとふたりか?」
「ああ!イヤか?」
わたしは、思いっ切り頭をぶんぶんと振った。
「行く~~~行きたい!」
「じゃあ!今夜だ!」
わたしは、急いで水分補給をしっかりして8等身のオスカルに戻った。
わ~~い!アンドレにデートに誘われた!
帰宅したら、着るものを考えなくちゃ!
その前に、
立ち合いだ!これなら、負けないぞ!
でも・・・・・わたしは、年末の試合では、アンドレに勝って欲しいのだが、・・・・・
負けるのは、嫌いだ!
どうしたらいいのだ。
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きーこー きーこー ぱしゃん ぱしゃん
きーこー きーこー ぱしゃん ぱしゃん
きーこー きーこー ぱしゃん ぱしゃん
きーこー きーこー ぱしゃん ぱしゃん (←船頭が舟をこぐ音)
残暑とはいえ、夜になると川面には涼しい風が吹く・・・・。
その中を、竿舟はゆっくりと進んでいく・・・・・。
船頭のほかには、着流しを粋に着た、男と、珍しく浴衣を着た女が、小さな卓を挟んで、酒を酌み交わしながら、乗っていた。
その日、道場での稽古が終わると、さっそくオスカルは、浴衣選びに取り掛かった。
和ダンスの中には、多分ばあやが誂えたのだろう、何枚かの浴衣と、帯、それに半襟が入っていた。
オスカルは、鏡のかけ布を上げて、そっと一枚ずつあててみる・・・・・。
幾分、頬が紅潮しているように見える。・・・・・それも悪くはないと思った。
浴衣はとても女らしい柄のものが多く、こういった事に慣れていないオスカルは、アンドレを呼んで相談したくなってしまう。・・・・・が、しかし、今宵はそのアンドレの為に装うのである。相談するわけにいかない。
ましてや、ばあやなどに相談したら、大変なことになってしまう。
オスカルにとっては、竹刀を持つことより、木刀を振る事よりも、真剣を手にする事よりも、困難な事であった。
オトメチックに金魚をあしらったもの。・・・・・朝顔が描かれているもの。・・・・・
紫陽花が描かれているもの。・・・・・これは、迷わず却下出来た。・・・・・季節外れである。
浴衣が決まると、それに合わせる帯選びだ!
それから・・・・・半襟・・・・・その頃には、オスカルはかなり疲れ果てていた。
しかし、これからが本番である!
夕方の稽古が終わってから、素早く着付けをして出かけられるように。
また、それぞれの組み合わせが、完璧か確かめるために、着てみた。
・・・・・完璧だった・・・・・(*’▽’)
浴衣は藍染めに白いバラ、葉の緑と藍色のコントラストが何とも言えない味を出して白バラを際立たせている。
合わせる帯は、表は深紅のもので、裏は浴衣の葉の緑をもう少し淡くしたものを、左脇から帯を少しずつ折っていき、深紅と緑、藍色のコントラストを見事に魅せた。
半襟は・・・・・はじめ、金色にしようかと思ったが、思い切って淡いピンクにした。
浴衣、帯がはっきりした色の分、少し引いたこのピンクが、際立っていた。
髪は、・・・・・ポニーテール以外考えられなかったが、鏡台の引き出しを開けてみると、かんざしが幾つか出てきた。
シニヨンにしてみようか・・・・・。
オスカルは、暫し考えて髪をまとめてみたら、意外と簡単にシニヨンになった。
真紅のかんざしを挿してみた。
思わずにんまりとしてしまった!
アンドレにはどう見えるかな~
夜になるのが待ち遠しかった。
定刻になり、オスカルが、玄関口に現れると、アンドレはオスカルのあまりの美しさに息をのんだが、オスカルはそれには気づかず。反対にアンドレの、粋な着こなしに目を見張った。
・・・・・こいつ、こんなにもイイオトコだったのか!
・・・・・こいつ、こんなにもイイオンナだったのか!
二人の思惑をよそに、舟はゆっくりと、川を下っていく、
酒はすすむが、会話が続かない。
会話がなくともお互い、気詰まりではなかった。
オスカルは、アンドレと共にいられることが嬉しくて・・・・・、
アンドレは、嬉しそうにしているオスカルを見ているのが、これまた幸せであった。
・・・・・竿船と言うのが、・・・・・なんか嫌な予感がするな、とわたしは妙な事を考えながら夜空を見上げた。
「月が、・・・・・出てないなぁ」
「ああ、今日は新月だ。その代わりに、星がきれいだぞ!
オスカル、酒ばかり見ていないで、見上げてみろ!
降って来るような、見事な星空だぞ!」
え゛!おまえ・・・・・星空は悲しいって言っていなかったか?
どうも、おまえの事は良く分からない。・・・・・分からない所に、・・・・・惹かれてしまう。
「おまえ!何の為に、修行を続けているのだ?」
「ふふふ・・・・・おまえを、嫁にする為・・・・・」
「え゛!?・・・」
「ハハハハハ・・・冗談だよ!おれは、道場じゃ、へなちょこだからな!」
ホントに冗談なのか?そんな、どこ吹く風で、舟に寄りかかって。
じゃあ、なんで、今夜誘ったんだ?
少しは期待したんだぞ!
あ!いかん!悲しくなってきた。・・・・・・・マズイ・・・・・涙が・・・・・、
独りになりたい。・・・・・帰りたい。・・・・・帰って、独りで泣きたい・・・・。
「わ~~~~オスカル!急に立つな!」
「わ~~~~お客さん!二人して、急に立たないで下さい!舟が、・・・・・」
ざっば~~~~~~~ん!!!!
BGM Swim
By Madonna
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