♪Breakthru

(Breakthru メイキングバージョン)


その日、わたしは稽古を早々に引き上げ、書庫にこもっていた。
勿論、アンドレの事を調べるためである。

だいたい、わたしのこちらでの記憶が、断片的なものしかなく、一体、いつからアンドレと共に生きてきたのかも分からない。お互いの距離感から察するに、ちょっとやそっとの付き合いではないのは、明白であるが・・・・・生まれた時から・・・・・と、言うのも違うような。ばあやが時たま口にするのは、たった一人の『身内』という言葉だ。アンドレには、両親がいないのだろうか?

書庫の目につきやすい所には、実用書がほとんどだった。同じく『武』を嗜む、向こうのジャルジェ家の書斎も実用書が多かったが、ここまでは揃っていなかったような気がする。

最近、マジで、向こうの記憶が薄くなってきているようだ。まさか、この年で、○○症が始まったのではあるまい・・・・・と、思うが。

書物を片端から手に取ってみるが、手に取った本をキチンと元に戻しておかないと、管理責任者が、目くじらを立ててブツブツ言うし・・・・・それに、わたしの手に取った書物をからかうので、なかなか思うように進まない。

ええい!ここには、道場日誌とか、つけていないのか!どこかの国の、某省の日報のように破棄したとかいうんじゃないだろうなっ!・・・・・と、見渡すと、きったない文字が、目に留まった。

見つけた!日誌だ!が、最近のものだった。もっと、昔の・・・・・アンドレとわたしが、出会った頃からの、と、書庫の中を奥へと歩を進めると、突き当たった。

襖があった。

が、その奥に部屋があった。わたしは、胸が躍る気持ちと、見てはならぬものを見つけてしまう恐ろしさを抱えて、その部屋へと入っていった。

表の部屋は、流石に書庫の管理責任者が毎日掃除をしているだけの事があり、ホコリ一つ落ちていなかったが、こちらは、長年にわたって、人の出入りが無かったようである。書物の上にもうっすらとホコリが目立ち、題名すら読むのが難しいものもあった。

部屋の隅の棚に、うっそうと高く積まれた、道場日誌を発見した。下の方は、和紙がボロボロで多分、この道場が出来た時からのものであろう。適当な場所から適当に一冊引き抜いてみた。・・・・・安永3年すなわち1774年の物が出てきた。・・・・・・・・アンドレが、10歳の時だ。

この頃は、子どもの部で、トップ5に入っている。

夢中になってその前後を調べた。・・・・・どうやら、アンドレは、8歳の5月にこの道場にやってきたらしい。・・・・・理由は分からないが、それまでも、剣道を習っていたのだろう、ある程度の成績を残している。

ただ、最初に見つけた、10歳の頃から、順位を落としてきている。・・・・・なぜだろう?何があったのか?

しかし、アンドレが来たのが、8歳ならば、わたしは一つ下だから7歳だ。アンドレが来た時の記憶があっていいものなのに、・・・・・全く覚えていない!気が付いたら、いつも側にいた!と言う、記憶しかない。

・・・・・違う・・・・・わたしは、もっと幼い頃、アンドレを見守っていたことがある。

ちくしょう!こちらでの記憶がまだ完全にインプットされていない・・・・・!
そのうちに戻って来るだろうと、わたしは日誌をさらに遡って調べていった。

そして、18の歳の夏に道場からアンドレが、忽然と消えていた。
その月の終わりのページに、父上の字であろう。
アンドレ、諸国漫遊の旅に出る。・・・・・とあった。

・・・・・??・・・・・では、いつ戻ってきたのだろうか?
わたしは、次々と日誌をめくって、アンドレの名を探した。

「・・・・・・・・カ~~ル!オスカ~~ル!」
うわ~~!アンドレが、探している!
もうちょっとだ、もう少しで終わるから・・・・・、
まだ、こっちに来るな!

見つけた!帰ってきた!アンドレが・・・・・2年と4か月後の暮れだ・・・・・?・・・・・何処かで聞いたことがあるような。・・・・・それより、その後だ!思った通り、へなちょこになっている。

「オスカ~~ル!オスカ~~ル!何処にいるんだ?」
ヤバイ!向こうの部屋に戻らなきゃ!
「お~い!アンドレ!ここに・・・・・書庫にいるぞ!」(ゼイハア、ゼイハア)
「ああ、ここに居たか?相変わらず、地球儀を見ているのか!?・・・・・」
「(´―`*)ウンウン」

「うん!って、おまえ・・・・・そこは、海ばかりだけど、面白いのか?
太平洋のど真ん中?

・・・・・それに・・・
頭に、クモの巣いっぱい纏って、・・・・・何していたんだ!?」
「え゛・・・イヤ、別に・・・・・」

「ちょっとジッとしていろ!クモの巣、取ってやる!」
相変わらずアンドレは、優しいなぁ(はあと)

「それより、何か、用じゃなかったのか?(汗)」

「ああ、そうだ!悪いけど、先に風呂に入っちゃってくれないか?」
「いいけど・・・・・どうかしたのか?」
「うん、おばあちゃんが、漬物石を動かそうとして、ギックリ腰になっちゃったんだ。
だから、あっちこっちの用事が詰まっちゃって、おれが、風呂番することになった。」

ばあやも、年だからなぁ~無理をしなければいいのに、
何でも自分でやらないと気が済まないから・・・・・。

「ばあやは、寝ているのか?後で、様子を見に行ってみるか!」
「エビのようになって寝ているよ。
おまえがお見舞いに行ってくれるのは、ありがたいが、
おばあちゃんびっくりして、恐縮して、・・・・・もしかしたら、治っちまうかもな!笑笑」

「あ!オスカル、風呂番おれでも、構わないよな?!」
「ああ、但し、覗くなよ!」
「当ったり前だ!お前みたいな、洗濯板見たって、面白くない!」
「なんだって!?おまえだって、ツルツルのくせに!」
わたし達は、お互いあっかんべーをして、別れた。

わたしは、部屋に戻って着替えを手にして、風呂場に行った。

もう、おぼろげにしか覚えていないが、
以前のわたしは、何から何まで人の手を借りてやっていたと思う。

それを思うと自分で自分の事をやるというのは、その時その時の状況を考えて、責任を持って行動しなければならないが、楽しいし、また開放感を感じることができる。

風呂に入ること一つでも、好きなだけ、湯につかる事が出来る。
じっくりと体を洗う日もあれば、気分で適当に済ませる事が出来る日もある。

脱衣場で着物と袴を脱ぎ捨て、浴室に入った。
ヒノキの香りが気持ちいい!
掛け湯をして、肩まで浸かった。

オスカルが、湯に浸かったようだ・・・・・。
「湯加減はどうだ?」
「いい加減だ~!」

う~~~ん!アンドレが、薪をくべていると思うとこの湯までも、愛しくなってくる。
洗い場に出て、湯気に包まれながらシャンプーして、体を洗おう。
いつか・・・・・アンドレが、この身体に触れる事が、あるのだろうか。

う゛!ヤバイ!マジ、洗濯板だ!・・・・・イヤ、ささやかだ!

いかん!ぼ~~~っとしてきた。

バシャ!バシャ!ポチャリ!バシャ! ゴシゴシ!
バシャ!バシャ!ポチャリ!バシャ! ゴシゴシ!
バシャ!バシャ!ポチャリ!バシャ! ゴシゴシ!
バシャ!バシャ!ポチャリ!バシャ! ゴシゴシ! (オスカルが体を洗う音)

オスカルが、身体を洗っているようだ。・・・・・どこから、洗うのかな~
『胸からで~す。』なんて言う、アイドルもいるけど、
オスカルもやはり、胸からかな?
さっきは洗濯板なんて言ったけど、・・・・・あいつのささやかな胸・・・・・可愛いよな・・・・・。

それに、・・・キンカン塗った時の足、やはり、鍛えているだけあって、
細いだけじゃなくて締まっていて、キレイだったなぁ!!
あいつ、平気で膝小僧まで出して。

おれのこと、男だと思っていないな・・・・・・・・・・(*_ _)・・・・・
腕も、毎朝見ているけど、思わず触れたくなるんだよなぁ。
触れたら、殴られるだろうな!

この間、胴着が乱れていたのを直すふりして、襟足に触れたけど、
何の反応もなかったな・・・・・。

やはり、男だと思ってないから、怒らなかったのかな?!

(。´・ω・)ん?・・・・・この薄い板一枚だけで風呂場と、区切られているのか、・・・・・
何処かに・・・・・隙間ないかな~

ウワッーチ!!!!!
「なにするんだ!オスカル!熱いじゃないか!」
おれが、妙な妄想をしていたら、頭から熱い湯が降ってきた。

「熱いじゃない!ホントに熱いんだ!」
「ああ、ごめん、ごめん・・・・・ちょっと考え事していた。どうした?」

「どうした?じゃない!湯が沸き上がっているじゃないか!
熱くて入れないぞ!」
「わ~~~~すまない!薪をくべすぎた!」

「オスカル!水を・・・・・」
「オスカルじゃない!立つな!立つんじゃない!見えるじゃないか!」
「ぎゃっ!済まない!おまえこそ!立つんじゃない!なんで、窓を開けているんだ?!」
「熱くていられないのだ!少し外気を入れさせろ!」

「兎に角、水をこの樋から流すからな!
丁度良くなったら、言えよな!」
「樋の隙間から、見るなよな!」
「おれが、そんな事、すると思っているのか?」
「ああ!オトコはみんな、スケベだ!」


ふん!アンドレの事だ、ど~せ、良からぬことでも考えていたんだろう!
一度、あいつの頭の中を覗いてみたいものだ!
さて、そろそろ上がるか・・・・・。

「アンドレ~出たぞ~
おまえ、この後、このまま入っちまえ!
どうせ、烏の行水なんだろう!熱いからちょうどいい!」

  ********************

う~~~ん!極楽、極楽だ!オスカルの入った湯に、浸かれるなんて。
そこここにオスカルのエキスが染み出ているようだ!
おれのバスソルトは【オスカル】なんちって!

それに、見てしまった!決して見ようとしてではない!断じて!
オスカルが、窓を開けて、立つからいけないんだ!

真っ白だった!ほんの少しだけ、膨らみが見えた!ふふふ( *´艸`)ラッキー!
やはり、オトコはみんな、スケベなんだろうか?おれは、普通だと思っているけどな

・・・・・けど・・・・・

おれには、成し遂げねばならない事がある。
探していた奴が、転がり込んでくるとは・・・・・、
この、運命に立ち向かわなければ、スケベ心は封印だ!

  ********************

「夕涼みですか?オスカル嬢!」
「ジェローデル、か・・・・・こちらは、道場主の居住区・・・・・門弟は立ち入り禁止のはずだが・・・・・」
「申し訳ありません。・・・・・私の可愛いネコちゃん(=^・^=)が、迷子になったので、
探しているうちに、こちらに来てしまいました。」

「道場での、勇ましい貴女も魅力的ですが・・・・・濡れ髪の貴女は一層、輝きを増しますね!」
「勝手に言っていろ!髪なんて、直ぐに乾くぞ!」

「ふふふ・・・・・誰の為にも、打掛は着ない。・・・・・と、仰るのですか?」
「まさか!愛する男の為なら、白無垢でも、打掛でも着て、
角隠しでも、綿帽子でも、なんでも、好みの物を頭にのせてやる!
でも、それは、おまえの為だけじゃない事は、確かだからな!」

「アンドレですか?彼の為なら、何でも着ると・・・・・」
「そうだな、彼の為になら、着るかもしれないな」

「ふふふ・・・・・でも、彼はへなちょこですよ!」
「そうだったな。・・・・・忘れていた。では、着ないのかもしれないな・・・・・。
さっさと、(=^・^=)を見つけて、帰るべきところへ帰れ!」

「ネコに命令はできませんよ!」
「だったら、リードでもつけておけ!」

わたしはふと、気になっていた事を聞いてみた。
「ところで、ネコの名は【クックロビン】か?」
「ふふふ・・・・・よくご存じで・・・・・」
「少し、調べてみた。

それに・・・ここには、バラの花はないぞ!」
「ご心配には及びません!エッセンスを持参しております。

貴女からは、バラの香りがするし、
それに・・・直ぐに、この道場も、【ポーの道場】になる事でしょう!」
「残念ながら、ここの土壌は、バラには適していないぞ!」

「ふふふ・・・・・そうですか?
貴女と言うバラの精がきれいに育っているではありませんか・・・・・。
それを・・・・・手折るのも私です」

「ふん!エドガーから血を受け継いだものは、
比較的、弱くて、短命だってことを知らないのか?・・・・・」

「・・・・・・・・(/ω\)・・・・・う゛!・・・・・そ・・・それは、・・・・・」


BGM Candy Perfume Girl
By Madonna

*お詫び、もしくは、言い訳・・・・これを書いたのは、萩尾望都先生が【ユニコーン】発表前でしたので、アランは【エディス】で消えてしまったのかと思っていました。
ジェローデルを「う゛!」っと言わせるほかのセリフを考えたのですが、思いつかずこのままにしました(~_~メ)
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