・。
アンドレ、おまえアントワネット様の事どう思う?」

フランス王妃の事を、それもどう思うか?
などと聞かれてアンドレは焦った。
何をどう言ったらいいのか?

そもそも、オスカルがどういう意図でその様な事を言い出したのか分からなかった。フェルゼンへの、嫉妬心など、吹っ飛びそうである。
「え゛?どうって・・・。」としか言えなかった。

「答えられないよな。
フェルゼンもアントワネットさまも、それなりの知識と教養を身につけているはずなのだが・・・。」

歯切れの悪い、オスカルの物言いに、アンドレは真剣に心配しだしたが、話は他人の恋愛ごとだ。何を、オスカルは言いたいのだろうか・・・。
「どうしたのだ?オスカル?」

オスカルは、少し考えこむと、一気に話し出した。
「あの2人がお互い、何処に惹かれあったのか、分からないのだ。
アントワネットさまは、お輿入れまでオーストリアで、言葉は違えど、あのマリア・テレジア様の事だ、超特急で優秀な家庭教師をつけ徹底的に、教育を施したはずだ。

そして、フランスに来ても恥ずかしくない、将来、女王となるようにも相応しくして、送り出されたはずだ。
だけどな、アンドレ、アントワネットさまには、知識とか教養がないらしい」

アンドレには、まだ、オスカルが何を言いたいのか、分からなかった。

分からなかったから、シャンデリアの光を受けて、輝いているクリスタルの、ワイングラスに、最上級の白ワインを注ぐと、オスカルに渡した。

オスカルは、ワインを味わう事もせず、ただ、のどを潤す為だけに飲んでいた。

オスカルに一言言ってやろうと、思いながらも、やはり、長年にわたり、想ってきた女性と呑むのだ。だから、ワインを慎重に選んできた。アンドレもそんな事は、すっかり忘れて、オスカルの話題に引き込まれていく。

オスカルが、アンドレに隣に座るよう促しながら、言った。
「では、何を語るのか?最近出版された本の事とかが、話題になるのか聞いてみた。そうしたら、アントワネットさまは読書が嫌いらしい。

アントワネットさまが、言うには女は、舞踏会に着飾って出席して、殿方にドレスや首飾りを褒めてもらう。そして、褒めてもらうのが、嬉しいけど、『そんな事ないわ』って言っていれば良いらしい。

アンドレ、もし、わたしが、そんな女ならどうする?」
オスカルが、やっと、微笑みを見せながらアンドレの方を、向いた。

「おまえなら、そんな女にならないと保証するが、会話が成立しなければ、護衛は出来るが、遊び相手には、なれなかっただろうな!」

「だろう?わたしも、もしも、おまえが、ジャルジェ家に来て、わたしと一緒に勉強もせず、剣の稽古をせず・・・。

だったら、ただの護衛で、幼馴染の親友にはなれなかったと思う。ああ、剣の稽古もしないのなら、護衛にもならなかっただろうな」

アンドレは、だんだんオスカルの話に引き込まれてきて、
「では、フェルゼンとアントワネットさまは、会っている時、何を話されているのだ?」

「こうらしい・・・。
『会えなくて寂しかったわ〜』
『この次は、いつ会えるのかしら?』
『あゝ、もし、私が普通の貴族の娘だったらどんなに良いか?』
これだけらしい・・・。」

「で、フェルゼンは、何と答えているのか?」
アンドレが、今度は興味津々に聞いてくる。

『それはもう、おっしゃいますな。300回は、聞きました』
と毎回、答えている様だ。

すると、アントワネットさまが、・・・。
『どうして、こんなに密かに会わなければならないのかしら』
(国王陛下はじめ、国中が知っているのに…何かを勘違いしている)

『アントワネットさま、貴女をさらっていきたい。
でも、私には貴女を満足させて差し上げるだけの財力がないのです』

「うんたらかんたら…と、続くのだ。
どう思うか?アンドレ?」

アンドレは、それまで耐えていた笑いが、大爆笑に変化した。
なんだ、2人は初恋なのか…いい歳をして、長い間お互いの本質も見ずによくやってる。と思った。

アンドレの隣では、オスカルが首を傾げながら、ワインを飲んでいた。
かわいいと、思った。しかし、・・・

アンドレは、考えた。思い出したくない、オスカルがフェルゼンを思っていた頃を・・・。

すると、それまでソファーに身を沈めていたオスカルが、乗り出してきた。
アンドレ!もし、あの2人がご結婚されたとしたら、どうなると思うか?

フェルゼンとアントワネットが結婚した場合を妄想する。

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此処まで、お読みくださりありがとうございます。
ここから先は、オスカルさまとアンドレの妄想です。
この章の、最後まで続きますので、「くだらないわ」という方は、
ここまでで、やめておいた方が、懸命です。
ホント、馬鹿馬鹿しいです。

「朝から始めようぜ。前夜は、夜会か舞踏会だから二人共昼過ぎに起きる。
まあ、それが、貴族の習慣だからな」

「寝室は、別だな。
そして、フェルゼンが、先に朝食ルームに行ってアントワネットさまをお待ちするんだ。フェルゼンは、ブラウスとキュロットだ」

「うん、すると、アントワネットさまが、キッチリと盛装で髪も結い上げて来る」

「アントワネットさまが、降りてくると、フェルゼンがアントワネットさまの手を取り、口づけをして、今日も綺麗ですね。と言うのだ」

「それぞれが、席に着くと、フェルゼンの所にじいが来て、何を召し上がりますか?と聞くが、いつものでいい。と、普通の朝食を食べるのだ。

一方の、アントワネットさまは、サラダだけ・・・。」

「フェルゼンが、それでは身体が持たない。と言うと、
あら、私が○○侯爵夫人のようになってもいいの?
胸と、ウエストとドレスのスカートのふくらみが、同じになっても構わないのかしら?」

ここで、オスカルとアンドレは、大笑いした。
実際、○○侯爵夫人は、まあるい顔をして、さながら、雪だるまだったのは、事実だったから。

「すると、フェルゼンは、アントワネットさまの耳飾りを褒めるんだ。
だけど、その耳飾りは重すぎて、アントワネットさまの耳がお釈迦さまの様になってしまっている」

「そこへ、アントワネットさまのサラダが運ばれてくる。フォークとナイフでスマートに召し上がる。そこで、フェルゼンは、アントワネットさま指を見てびっくりするのだ。そして、指輪を褒める。だけど、全部の指にそんなにはめたら、重くはないですか?って聞くんだ。

すると、アントワネットさまは、だって、どれを着けていいか、悩んだから全部つけてしまったの。それに、クラブサンで、指を鍛えているから、大丈夫よ」

「フェルゼンは、半ば呆れながら、その髪はいつ結ったのだ?こんな早い時間に、髪結い師が、来るとは思えないが・・・。

2時間前に起きたのよ。それに、言わなかったかしら、専属の髪結い師を雇ったの。そして、いつでも頼めるよう、こちらに住んでもらったの。勿論、家族も連れて来ていいと許可したから、安心して頂戴。

フェルゼンの頭の中で、レジスターの音が鳴った」

くくくくく・・・。オスカルとアンドレは、笑いが止まらない。
その間にも、グラスの中のワインは、どんどん空いて、アンドレは、オスカルに聞きもせずに、次のワインを開けた。

アンドレも、オスカルがフェルゼンに恋していた事など忘れて、妄想に走っている。

「サラダを半分ほど召し上がったアントワネットさまは、フェルゼンが食べているのにも構わず、席を立つのだ。

フェルゼンが、何か用事でも?と聞くと、
夕方から、●×侯爵夫人の所のサロンに呼ばれているの。4時からよ。

4時からだったら、まだ時間はたっぷりあるだろう?

あら、あなた何を仰っているの?
これから、髪を結いなおして、お化粧も変えて、その為にはお風呂に入って・・・。
ドレスも変えて、これは朝食用のドレスと、髪。

サロンにはそれに相応しいのを着ていかなければ・・・。そうそう、今日は、王妃様もいらっしゃるの。あの方、ご自分がフランスで一番美しいと思っていらっしゃるの。だから、一番は、わたくしだって事を、分かっていただかなくては・・・。

ところで、ハンス?貴方はどうなさるの?

私も、サロンだ。今日は、軍務に詳しい方がいらして『ルイ14世時代の兵法』について、レクチャーしてくれるそうだ。とても、楽しみにしている。

え゛・・・。そんな昔の事を知ってどうなさるの?

温故知新だ。

なにそれ、お願いだから、フランス語で行って下さらない?
スウェーデン語で、言われても分からないわ!

兎に角、私は着替えに行きます。
舞踏会には出席なさるのでしょう?
また、その時にお会いしましょう。

それから、そのブラウスなんですの?

あ!気が付いてくれたか?
今、この色が紳士の間で流行っていて、ようやく手に入れたのだ。

ブラウスの色の事ではないわ。そんな、ブラウス一枚で、私の前に出ないでと、何回も言っているじゃないの。キチンと、アビを着て下さい。

あ!それから、サロンと同じアビで舞踏会は駄目よ。
私も早く戻って、舞踏会用のドレスに着替えますし、髪も結い直します。

フェルゼン・・・何も言えず。

舞踏会への馬車の中だ。
ああ・・・。

アントワネット、サロンはどうだったのだ?

う~~ん、始めはいつもの通り、お互いを褒め合って・・・。
ねえ、ハンス聞いてぇ!王妃様ったら、私の髪より10センチも高く結っていらしたのよ。髪が倒れないように、お付きの者に支えてもらっていたわ。

だから、今夜の君の髪はその様にバカ高いのか?

『君』なんて、呼ばないで頂戴。
ああ、それからね、今度イタリアの生地が流行るのですって。誰よりも早く手に入れて、見せびらかしたいわ。貴方、今夜にでも・・・ああ、ダメだわ。どなたかがもう、使者を送っているかもしれないわ。

直ぐに、お屋敷に言いつけて、誰かをイタリアに行くように手配して頂戴。

イタリアはいいが、生地の事に精通している者を同行させなければならないのではないか?

あら!そうだわね。あなたも、たまには、気が利いた事を言うのね。ローズ・ベルタンが行ってくれればいいけど、王妃様のお抱えだから、無理ね。

では、彼女の所の2番手の者を行かせましょう。これから直ぐに出るように、手配してね。誰よりも早く着くように、フェルゼン伯爵家で一番早い馬を使うようにも言ってね。

アントワネット、この馬車を引いている馬が一番早いのだが・・・。

じゃあ、舞踏会のお屋敷に着いたら、直ぐにお屋敷に帰して、代わりの馬を連れて来るようにして頂戴。

フェルゼン、気を取り直して、

アントワネット、そろそろ、フェルゼン伯爵家でも跡取りが欲しいのだが・・・。

まあ、貴方、私にあんなお腹の出たみっともない恰好をさせるつもりなの?
それにもしも、妊娠したら舞踏会にも、サロンにも行けないじゃあないの!

それに、出産後は、ウエストサイズが戻らないって聞いたし、胸も下がってみっともなくなるんですって!
貴方、わたくしが、そんな風になっても宜しいの?

いや、でも跡継ぎがいないと、困るのだ。

でしたら、誰かほかの方に、産んでもらえばいいわ。
結婚式の時『清く正しく美しく』って、誓ったのを忘れたの?
だから、私たちはずっと、清く美しく生きるのよ!

それで、お相手の女性だけど・・・。
美しい女性にしてね。
醜い子どもは嫌よ!

フェルゼン、唖然・・・。


以上、2人の…というよりも、筆者の妄想でした。

つづく
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