アンドレは、西のホールから離れると、お屋敷の中心部へと向かった。
どこからか話し声が聞こえた。姿は、見えない。
向こうも、アンドレが、そこに居る事に気付いていないようだ。
クスクス…。
アハハハハ…。
だって~、そうだったじゃないの~
え~、それは、その前じゃなかったっけ?
どっちでもいいわ。それよりも、あの事、どうなった?
全てOKだ!俺に任せれば、大丈夫だって言っただろう?
そうね、で、いつ打ち明けるの?
ああ、それが問題だ…。
アンドレには、最近、恋仲になった例の2人だと、すぐに分かった。恋に落ちるとあんなにも、親しげに話すのか…。聞いている方には、何を話しているのか、さっぱりわからない。
おれと、オスカルもそうなのか?
アンドレは、オスカルが自分への、愛を告白してからの事を、思い出した。
……????……。
2人で、部屋に籠っていた時に、陛下から呼び出しがあった。それ以来、月に2回しか会っていない。しかも、ここ何か月かは、険悪なムードで、碌に話もしていない。
サロンを開いて、少しは、LINEだが意思疎通ができるかと思った。だが、オスカルは、アンドレに任せて、顔を出すだけだ。
顔を出すだけマシだ。の方が、合っているとアンドレは思った。
面白そうだと、腰かけて聞いているが、詰まらなくなるのか、出て行って、戻って来ない事が多い…ホストだというのに…。
アンドレは、自分と逢えない間、オスカルが何処に行って、何をしているのかは、ある程度把握していた。(ロジェの報告で…)でも、それは、単なる、表に現れる出来事の報告であって、その中に、感情は入っていない。
オスカルは、感情を隠すのが上手い。もともと、軍人だからだろう。けれども、親しくなった者だけに、感情を表す。そして、最上級の感情は、アンドレだけに見せていた。そうアンドレは、認識していた。
4剣士隊の、それぞれに対しても、微妙に違っている。
ド・ギランドには、ゲイと言う安全パイであるのか、かなり、親しく心の内も打ち明けているようだ。それに、ド・ギランドは、相手の心の機微を読み取るのが上手かった。
ロドリゲは、以前部下だったからか、お互い少し遠慮があるようだ。それに、今は、オスカルの助言で、ロドリゲは、近衛連隊長となった。
また、それ以上に、彼は、女好きだ。あちらこちらの、舞踏会、サロンに首を出しては、女の尻を追いかけている。だから、4剣士隊の集まりにも毎回あらわるという訳ではない。
たまたま、追いかけていたマダムに、逃げられたのだろう。遅くなってから、現れて冷やかされている時もある。
でも、おれがオスカルの供として、テーブルを一緒にしていた時、オスカルはポカーーンとしていたな。判っているような、いないような。多分分かっていたのだが、具体的なこと迄は、分かっていなかったのだろう。
ラトゥールは、愛妻家の、おしどり夫婦だ。オスカルの入る余地はない。待てよ!もしかしたら、最近は、どの様に結婚生活を円満に送るのか…普通の貴族の夫婦とは違うようだが、差し障りは無いのか?などと聞いているかも…そんな事は、ないな?
アンドレは、頭を振り振りした。
????あいつら、集まって何を話していたんだ?
そんなのじゃない!おれが考えたいのは…。
オスカルが、4剣士隊と何を話していたか…なんかじゃない!
さっきの、恋愛中の2人…。
まるで、オスカルとロジャーみたいじゃないか…。
しまった!
アンドレは、自分の手抜かりに、気付いてしまった。
ロジェを、オスカルの警護に頼んだ時、衛兵隊内の、特に、アランに注意してくれ。そう言った。そして、勤務後、誰と何処に行くのか、伝えてくれ…。そう言った。
だが、オスカルは、そのロジェの目を掠めて、ロジャーの所に行っていた。
それも、多分何度も…。
オスカル風に言えば、『寝た』!
先程も、言っていたじゃないか。何度も、ロジャーの演奏を聞き、見ていれば、自然とできる…。と。
アンドレは、その辺りに、スティックの様なものが、落ちていないか探してみた。ふと、ジャルママが毎朝、丹念に生けている花瓶に目がとまった。スティックには細いが、まあまあの枝があった。生けてある花のバランスを崩さないように、一本抜いた。
仕方なく付いてきた花と葉を、取り除き、オスカルがやったように、回してみた。出来る訳がない。
負けず嫌いのオスカルの事だ。
ただ負けん気だけで、やっていたのかもしれない。
でも、別にオスカルの、嗜好分野でも何でもない。
ではやはり、志向分野なのか?
それに、ロジャーは、オスカルの書斎に自由に出入りできる。クラブに行かない日もあると言っていた。きっと、そんな夜は、書斎に籠っているのだろう。それに気づかないオスカルじゃない。
2人とも、議論好きだ。朝までだって、議論は続くだろう。そして、一晩位、眠っていなくても、オスカルは、普段と変わらず、出仕する。ロジャーは、その後、書斎から抜け出し、部屋に戻る事も、書斎に居続ける事も出来る。
しまった!屋敷の中では、人目があるから。何事も起こらないと、思っていた。使用人階と、使用人用の階段を使って、使用人用出入り口を使えば…。そう言ったのは、おれだ。
だけれども、ロジャーは、いつの間にか、主家のテリトリーに入り、しかも、オスカルの書斎に入る権利を手に入れてしまった。
ロジャーは、以前は【女殺しのロジャー】として、オスカルを見ていた。しかし、ホールで見たロジャーは、【女殺しのロジャー】ではなかった。
大事な女性として、接していた。
オスカルも、年齢差など気にせず、親しみを込めて、長い付き合いの様に接していた。
コロコロ変わる、表情は2人とも同じだ。
2人でいると、お互いに、お互いのも、己のもの容姿など気にもとめていない。
多分、ロジャーが、殺す女は、遊ぶくらいの価値しかないオンナだろう。
そして、本気になるのは、自分と同じ立ち位置にいる女…。
アンドレの膝が崩折れた。近くの花台に辛うじて捕まった。
突然、目の前にもやが、かかった。
それは、目ではなくて、心だ。
もしかして…あの2人は…
つづく
どこからか話し声が聞こえた。姿は、見えない。
向こうも、アンドレが、そこに居る事に気付いていないようだ。
クスクス…。
アハハハハ…。
だって~、そうだったじゃないの~
え~、それは、その前じゃなかったっけ?
どっちでもいいわ。それよりも、あの事、どうなった?
全てOKだ!俺に任せれば、大丈夫だって言っただろう?
そうね、で、いつ打ち明けるの?
ああ、それが問題だ…。
アンドレには、最近、恋仲になった例の2人だと、すぐに分かった。恋に落ちるとあんなにも、親しげに話すのか…。聞いている方には、何を話しているのか、さっぱりわからない。
おれと、オスカルもそうなのか?
アンドレは、オスカルが自分への、愛を告白してからの事を、思い出した。
……????……。
2人で、部屋に籠っていた時に、陛下から呼び出しがあった。それ以来、月に2回しか会っていない。しかも、ここ何か月かは、険悪なムードで、碌に話もしていない。
サロンを開いて、少しは、LINEだが意思疎通ができるかと思った。だが、オスカルは、アンドレに任せて、顔を出すだけだ。
顔を出すだけマシだ。の方が、合っているとアンドレは思った。
面白そうだと、腰かけて聞いているが、詰まらなくなるのか、出て行って、戻って来ない事が多い…ホストだというのに…。
アンドレは、自分と逢えない間、オスカルが何処に行って、何をしているのかは、ある程度把握していた。(ロジェの報告で…)でも、それは、単なる、表に現れる出来事の報告であって、その中に、感情は入っていない。
オスカルは、感情を隠すのが上手い。もともと、軍人だからだろう。けれども、親しくなった者だけに、感情を表す。そして、最上級の感情は、アンドレだけに見せていた。そうアンドレは、認識していた。
4剣士隊の、それぞれに対しても、微妙に違っている。
ド・ギランドには、ゲイと言う安全パイであるのか、かなり、親しく心の内も打ち明けているようだ。それに、ド・ギランドは、相手の心の機微を読み取るのが上手かった。
ロドリゲは、以前部下だったからか、お互い少し遠慮があるようだ。それに、今は、オスカルの助言で、ロドリゲは、近衛連隊長となった。
また、それ以上に、彼は、女好きだ。あちらこちらの、舞踏会、サロンに首を出しては、女の尻を追いかけている。だから、4剣士隊の集まりにも毎回あらわるという訳ではない。
たまたま、追いかけていたマダムに、逃げられたのだろう。遅くなってから、現れて冷やかされている時もある。
でも、おれがオスカルの供として、テーブルを一緒にしていた時、オスカルはポカーーンとしていたな。判っているような、いないような。多分分かっていたのだが、具体的なこと迄は、分かっていなかったのだろう。
ラトゥールは、愛妻家の、おしどり夫婦だ。オスカルの入る余地はない。待てよ!もしかしたら、最近は、どの様に結婚生活を円満に送るのか…普通の貴族の夫婦とは違うようだが、差し障りは無いのか?などと聞いているかも…そんな事は、ないな?
アンドレは、頭を振り振りした。
????あいつら、集まって何を話していたんだ?
そんなのじゃない!おれが考えたいのは…。
オスカルが、4剣士隊と何を話していたか…なんかじゃない!
さっきの、恋愛中の2人…。
まるで、オスカルとロジャーみたいじゃないか…。
しまった!
アンドレは、自分の手抜かりに、気付いてしまった。
ロジェを、オスカルの警護に頼んだ時、衛兵隊内の、特に、アランに注意してくれ。そう言った。そして、勤務後、誰と何処に行くのか、伝えてくれ…。そう言った。
だが、オスカルは、そのロジェの目を掠めて、ロジャーの所に行っていた。
それも、多分何度も…。
オスカル風に言えば、『寝た』!
先程も、言っていたじゃないか。何度も、ロジャーの演奏を聞き、見ていれば、自然とできる…。と。
アンドレは、その辺りに、スティックの様なものが、落ちていないか探してみた。ふと、ジャルママが毎朝、丹念に生けている花瓶に目がとまった。スティックには細いが、まあまあの枝があった。生けてある花のバランスを崩さないように、一本抜いた。
仕方なく付いてきた花と葉を、取り除き、オスカルがやったように、回してみた。出来る訳がない。
負けず嫌いのオスカルの事だ。
ただ負けん気だけで、やっていたのかもしれない。
でも、別にオスカルの、嗜好分野でも何でもない。
ではやはり、志向分野なのか?
それに、ロジャーは、オスカルの書斎に自由に出入りできる。クラブに行かない日もあると言っていた。きっと、そんな夜は、書斎に籠っているのだろう。それに気づかないオスカルじゃない。
2人とも、議論好きだ。朝までだって、議論は続くだろう。そして、一晩位、眠っていなくても、オスカルは、普段と変わらず、出仕する。ロジャーは、その後、書斎から抜け出し、部屋に戻る事も、書斎に居続ける事も出来る。
しまった!屋敷の中では、人目があるから。何事も起こらないと、思っていた。使用人階と、使用人用の階段を使って、使用人用出入り口を使えば…。そう言ったのは、おれだ。
だけれども、ロジャーは、いつの間にか、主家のテリトリーに入り、しかも、オスカルの書斎に入る権利を手に入れてしまった。
ロジャーは、以前は【女殺しのロジャー】として、オスカルを見ていた。しかし、ホールで見たロジャーは、【女殺しのロジャー】ではなかった。
大事な女性として、接していた。
オスカルも、年齢差など気にせず、親しみを込めて、長い付き合いの様に接していた。
コロコロ変わる、表情は2人とも同じだ。
2人でいると、お互いに、お互いのも、己のもの容姿など気にもとめていない。
多分、ロジャーが、殺す女は、遊ぶくらいの価値しかないオンナだろう。
そして、本気になるのは、自分と同じ立ち位置にいる女…。
アンドレの膝が崩折れた。近くの花台に辛うじて捕まった。
突然、目の前にもやが、かかった。
それは、目ではなくて、心だ。
もしかして…あの2人は…
つづく
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