おい!アンドレ、どうしたっていうんだ!?
う~~ん。何かが違う。
オスカルが、身に付けるイメージが、湧かない。
ふんふんふん…って、何を言ってやがる!
今更!
おまえの、なけなしの全財産を、はたいても隊長に似合うものなんて、手に入れられね~ぜ!
俺が、保証してやる。
それに、恐れ多くも、伯爵将軍家で、准将で、その上ご令嬢への婚約指輪だぜ!こんな、デパートで見つけようってが、間違っている。
それを、自分のなけなしの、全財産って言ったって、限度があるってもんだ。サッサと、屋敷に帰って、御用達ってのを、呼んだほうがいいぜ!
オットット、ヤツ、あっちに行った。
あ、離れた。今度は、向かいか!
あ、また、離れた。
なんだ、なんだ。
まるで、あちこち匂いを嗅ぎ回る犬っころじゃねえか!
(アラン、鋭い!アンドレが、戌年なのに、気づいたか!)
ほう、やっと、前進し始めたか。そうだ、そうだ。
おまえも、一応、隊長の訓練を受けているだろう。
まあ、匍匐前進しないだけましか。
おう、壁が見えた。そこがどん詰まりだな。
だけど、10分で終わるはずの、『お買い物』が、
何でこんなに時間がかかるんだ?
頼む、あと10分…ダメだ。
ドレスがあるから、5分で決めてくれ!
ほう!どん詰まりに着いたな。
さあ、トットト決めな!
このアランさまを待たせるな!
サッサと決めて、酒と肴だ。
ま、奴は、今日の戦利品の、見聞と、反省会と、隊長にお渡しする算段でもしてるがいい。おまえは、黙っていればいいんだ。
その間、おれは隊長のご尊顔を拝見しながら、美味しい酒が飲めるってもんだ!
お!ヤツ、店に寄って行った。ちょいと、俺も見させてもらうぜ。値札だ。そんな、小さなもので、どれだけ金を取ろうと算段決め込んでいるんだ?
って、なんで離れるんだ~
そこで、決めちまえってんだ!
おまえ、そんなに優柔不断な男だったのか?
うん?
何か考えだしたぞ…デパート中を見まわしてる。
うん、そうだぁな!おまえの身長なら、何処までも見えるってもんさ!
俺もだけどな。
それにしても、俺は、何の為に付いて来ているんだ?
助言が欲しい。
とも言ってたよな?
おまえ、勝手にウロウロ歩き回るだけで、助言どころか、見もしないじゃねえか?俺は、金魚のフンじゃねえぞ!
だから~、デパートじゃ、ダメだって、今更気付いたのか?けれど、おまえのポケットマネーとかで、やりてえんだろう?そこから、考え直した方か、いいんじゃないか?
オッ!止まった。
何か考え込んでるぞ。
おうおう、ヤツ得意の、眉間に指か…。
こりゃ長いぞ。いっちょ相談に、乗ってやるか!
どうした?えっ?良いのがない。そうなのか?
おまえチラ見しただけじゃないか?
この辺りの店は、30歳半ばのおれが、婚約指輪として、贈るには、相応しくない。
そ~か!そ~か!おまえは、俺が、悪臭の中を耐えて、耐えて付いてきたのに、たったその一言で、片づけるのか!
ふん、ここ迄来たんだ。ひとつ、値段でも見てやるか!そして、このアランさまが、相応しいかどうか、決めてやる。
どれどれ、2リーブル、3リーブル…。うん、まあ、大口叩いている、おまえにはちょうどいい値段じゃないのか?アンドレ?ああ、俺には、出せねえけどな!
おお、また、歩くのか?やめてくれ〜今度は、化粧品売り場を、突っ切るのか?スッゲー臭いぜ。もしかして、隊長にドレスを着せた時にも、コレ塗りたくるのか?やめて欲しいな!
そういえば、中身おまえが司令官室で、ブッ倒れた時。外側隊長、いい香りがしていた。それに、隊長ならスッピンで、オッケーだ。俺が保証する。
ん?オディール。なんだココ。デパートの中なのに、一軒の店みたいだ。お!アンドレ入店。俺も付いていこう。
お!断られてる。どうしたんだ?順番待ち?なんだそれ?店の中が、ごった返さないよう、人数制限…。
たっまげた店もあるもんだ。アンドレ…静かに並んでいる。おい!外側の隊長だったら、絶対に並ばないぞ。俺が保証する。隊長は待つのが嫌いだ。
やっと順番が来た。いったい何時間待たされたんだ。
え?もう出るのか?なになに、指輪がない。
そうか、そうか、確認するだけの為に、並んだのか?ふん!こういうのを、時間の無駄遣いって言うんだ!知ってるのか!
でも、ココに飾ってあるヒョウ柄の袋は、隊長にあってるぞ。
あゝ、そうか、今日は指輪とドレスだ。
余計な事を言って、寄り道されちゃあ困るぜ、黙ってるぜ!
なにせ、口が堅い男だからな!
次は、エンディ?コッチも高級そうだ。
おう、何か覗き込んでいやがる。
おうおう、指輪があるじゃあないか?
ウゲッ!なんちゅう値段だ。目の玉、飛び出る。おまえ、こんなに高いの買えるのか?どうした?出ていくのか?そりゃそうだよな!おまえには、高すぎる。でも、隊長には、似合いそうだ。
次は何処だ?とことん付き合うぜ!時間限定だがな。
おう!ここにも、入口があったんじゃねえか!ここから入れば良かったんだ。ここなら、悪臭も来ねえしよ!
ルイ・アンドレ?
ほー!おまえの為にあるみたいだなぁ!
じゃあ、ルイ・アランって、ないのか?
しっかし、超高級そうだなぁ。入口に黒服が、立っている。だけど、俺には分かるぜ。ヤツは、優男に見えるが、かなりのやり手だ。つまり、ガードマンって奴か…。
へー!流石アンドレだ。堂々と入店!仕方ねぇ。俺も続くか。やっぱ、高級店だ。早速、店員が張り付いたぞ!えっ?俺にも?俺は、アイツと一緒だ。
ふう、ヤツにピッタリ着いていよう。変な汗かいたぜ。酒、10本追加だぞ!おう、アンドレ真剣だ。この店にありそうなのか?ニヤニヤしてやがる。早く決めろ?
ふ~~ん、隊長がニヤケルとそんな顔になるのか…。
でも、ニヤケルのは、男の特権だ。
ハハハ、俺だけが、知っている隊長のお顔だ、やっぱ、着いて来て良かったぜ。
だけどもよ~金あるのか?この店の値札。やたらと、0が多くねえか?おまえ、目は、隊長のがくっ付いているんだよな…。見えてるはずだ。
それとも、隊長が、乱視で数字が重なって見えているのか?
謎だ!この2人は、謎なんだ。
拘わりたくないけど、拘わりたい…隊長限定だがな。
う~ん。でも、単独なら、OKかもな。
ヤツ、店員に何か話している。
ガラスのケースの中を、指差してる。
おお、今日初めて、ヤツが、指輪にご対面~~~。
ここで、終わるか?
で、やっぱり俺は、何しに来たんだ?
おうおう!身なりの良いねえちゃんが、正しいオフランス語で話しかけている。
それで、そのお幸せなお嬢さまの、リングのサイズは、お判りでしょうか?
ああ、そうだな!服なら、多少でかくても、ちっこくても、何とかなるさ!でも、指輪が、小さかったり、大きかったりしちゃあ大変だ!
ん?アンドレ、手袋を外した。
おうおう!綺麗な指が登場!
ああいうのを、白魚のような指、ってんだろう?
白魚…見た事も、食った事もないけどな!
隊長は、訓練の時は、手袋をしている。
それでも、俺様は綺麗なお手に傷を付けてはいけないと、配慮させて頂いているんだ。
そして、司令官室に向かう奴の仕事を取り上げて、隊長のお綺麗な、手を拝しに行く。あの瞬間が、堪らね~
この指が、彼女…オスカルの指だ!
おう!アンドレ!今日一番の、決め台詞だ!
うん?ねえちゃん、固まっているぞ。
どうしてだ?
だって、その綺麗な指こそが、隊長の指なんだぞ。
俺は、その美しい指に合う指輪を探して、悪臭の海の中を彷徨ってきたんだ。
あの~、贈る方のではなくて、贈られるお嬢さまのサイズ、なのですが…。
おお、ここからが、俺の出番だ。
この指の持ち主が、贈られるお嬢さまの指なんだ!
すっげー、俺。
こんな高級店でも、話せたぜ。
ねえちゃんも、納得されたの…かな?
あ、ですから、お嬢さまの…。
納得しなかったか…。
簡単な事なのにな~
おう、ヤツが俺の方を見て、困った顔をしている。
だけどもよ~、俺の助け舟は、効き目なかったようだぜ!?
そりゃそうだよな~
中身のアンドレが、外側の隊長に贈るんだ。
そして、助っ人に俺がいる。
ですから、この指が、彼女の…オスカルの指なのです。
アンドレ、頑張れ!
ねえちゃん、もう1人手招きしている。
ぼそぼそと、話している。
新しいねえちゃんが、来たぞ。
もう一度聞いた。
しつこいぞ!俺は、心の中でドついた。
ヤツが、何度も同じことを言うから、アイツらも、観念したようだ。
それよりも、ヤツの事を、俺の事もか?二重人格と、思っているらしい。
だけれどなぁ、ここに、もう1人居るって聞いたら、
おまえら、気取っている場合じゃないぜ!
ぶっ倒れるぜ。
ん?ここには、内側アンドレと、外側隊長、俺、幸せなお嬢さま、そして、ヤツがオスカルなんて、言いやがるから、5人になっているのか?
ホントに、面倒くさいヤツだ。
隊長には、気の毒だがな…。
まあ、いい。さっさと、選んで次行こう。けどよ~アンドレ、その、ぶっ高い指輪…。買えるのか?マジで、隊長の目は、乱視なんじゃあないか?俺が、0の数を教えてやるか!
え?
分かってるって?
おまえ、幾ら貯めこんだんだ。
俺たちと、呑みに行くと、気前よく、奢ってくれるじゃないか?
ああ、それ以外には、使い道がないのか?
隊長と出かける時は、隊長持ちだな!
それに、仕事も、衣食住が、揃っている。
お屋敷住まいだから、それなりのお衣装を着て、それなりの物を食って、それなりのお部屋にお住まいだろうな。そして、隊長の心を、ゲットか~幸せなオトコだ。
少しは、幸せのおすそ分けをしてくれても、いいんじゃないか!酒、20本追加だな!
俺も、転職するか!
軍隊より、楽そうだな!
って、ヤツが、何か言っている。おうおう!四本の指に、指輪を付けたか?ほう、どれもまた、キレイなもんだ!
隊長の、お綺麗な指には、やっぱりこの位のが、似合うのか…。
で、おまえが贈るのに、相応しいのか!
決めた途端、金が無い!なんて、ずらかるのは、御免だぜ。値札は…。ちゃっかりしてるぜ。取り外してやがる。
けっ!ヤツの金だ。遠慮なく、ご助言させていただくぜ。
おまえは、どれが、その指に合うと思うんだ?
ん?また、目の前の、ねえちゃんが目を白黒させてやがる。
だから~。この指は、隊長の指だって言ってるだろう!
いい加減に、観念しろ!
ふん、おまえは、勝手に見ていろ。
俺は、こっちの見ているぞ。
ほう、随分とちっこいのが、並んでるじゃねえか?
もしかして、子供用か?
金持ちは、子供も飾るのか!
ふん!ご苦労なこった。
こんな所、用はないが…。
おっ!この指輪、隊長に似合いそうだ。
んん?目の前に圧を感じる。
綺麗な制服を着たねえちゃんさまだ。
口を開き始めたぞ。
このアランさま、下を向いていても、その位わかるってもんだぜ。ちょいと、聞いてやるか!俺だって、女には優しいんだぞ!隊長限定だがな。
「お客さま、こちらは、ピンキーリングと言いまして、小指に付けるリングです」え!子供用じゃねえのか?おっと、いけねぇ、いけねぇ、すましたねえちゃんの前で、焦っちゃあいけねぇ!落ち着け!落ち着くんだ!アラン!
おお!おれ、ニコッと笑ってねえちゃんを見れたぞ。
アランさまも、上流階級に一歩接近!
なになに、左手だと、今ある幸福を長続きさせる。
ふむふむ。右手は、更なる幸せを求める。
ふ~ん、指輪って、左の薬指だけじゃねえんだ。
隊長は、どっちが好みか?
悔しいけど、今も幸せだよな~
暇を持て余して、イライラしているが…。
俺が行って、剣の相手をしても、思うように動けなくて、
ますます、イライラ度を上げるだけになっちまった。
そうなんだ。俺なんか、お払い箱なんだ。
俺になぁ。こんな指輪買えるカネでも、有ったらなぁ。
隊長に、プレゼントするのになぁ!
でも、俺からじゃ、してくれないよなぁ!
おっと、いけねぇ、アンドレが呼んでるぜ。
やっとこさ、俺の出番か!
なになに、そっちと、こっちどっちが、隊長に似合うか?って?
そりゃあ、決まってるだろう!
こっちの、派手なヤツだ。
隊長の、その金髪には、こっちの燦然と輝くダイヤが目立つ方が、絶対にいいって、もんだ。
おお、アンドレ!決めたか?
おまえもそう思うのか!?
俺の方を見て、ニコニコしてるぜ。
うん、今日最高の気分なんだな?
え゛…存分に見たか?だと、ああああ!
隊長のお指に装着したら、毎日司令官室に通ってやるぜ。
おまえは、当分見れないからな!
なに?そっちにするのか?
何でだ?俺の助言は、嫌なのか?
ん?
俺が、選んだのは、イ・ヤ・ダ!
それに、存分見ただろう?
ああ、見させてもらった。
だから、そっちにする!
なんだと!
俺は、品評会に来ただけか?
ふざけるな!
なになに、そっちの方が、手袋をしていても、邪魔にならない。
こっちでは、着ける時も、外す時もダイヤが邪魔になる。
そして…うん?なんだ?嬉しそうに話すな!ってんだ!
オスカルだと、手袋に引っ掛けて、どこかに放り投げるかもしれない。
ウーン、そうだな!隊長なら、やりかねないな!
よ~~~し、そのエンゲージリングを失くしたら、俺が贈るぜ。
って言えない俺が、情けねえな。
それよりなぁ!おい!
聞いてんのか?
こっちの、ピンキーリングっての、どうだ!
え゛…!おまえ知らないのか?
じゃあ、俺さまが、いっちょ、ご教示してやるか。
だから~、左が…で、右が…なんだとよ!
でさ!これなんか、隊長にぴったりだぜ!
結構隊長、ああ見えても、可愛い所あるからな!
ん?なんで、ムッとしているんでい?
俺が、隊長にピッタリのを見つけて、口惜しいか?
でも、俺なら、隊長に似合うものが分かるから、って、連れてきたんだろう?
違うのか?
…なんだ、もう、実食…じゃなかった…装着してらぁ!
おお!素晴らしい!
うん?左か?
ほう!今が、幸せって事か…勝手にやってろ!
おいおう!ねえちゃんが、寄ってきたぜ。
また何か、ご託を述べるんだろう!
おまえ、お上品なのと付き合うのは、慣れてんだろう?
頑張れよ!
へ~~!ねえちゃんも、良い事言うじゃないか!
左手に装着すると、エンゲージリングと、ごっつんこ!
はは~っ!
指輪を装着するのも、大変なものだ。
俺には、一生縁がないけどな!
で、それも買うのか?
はいはい、何でもいいから、決めて、次行こうぜ!
え゛…奥に案内されたぞ。おう!豪華な応接セット。
ここに腰かけるのか?
さっきの店で、会得したぞ。
もう二度と、アランさまのケツが、触れる事がない、豪華な椅子。
て~~~~!いい座り心地だ。
おまえ、いつもこんなのに、座っているのか?
シリが、安定してるぜ。
ねえちゃん、消えちまった。
長いぞ!少々お待ちください。っつたのに…。
かなり長いぞ!
ん?何持って来たんだい?
そんな、長~~い、コップ…じゃなかったぜ、グラスっつ~んだな。
俺とアンドレの前に置いたぜ。
それと、なんだ?この皿の上の茶色い塊。
ヤツは、平然としてやがる。
さすが、平民貴族だ。
飲んでもいいのか?
おい!アンドレ、なんとか言え!
ん?一気に飲むな?
むせるぞ。
はいはい、畏まりました。
おお!美味い。
おい!平民貴族、これ、何でい?
シャンパン…ほう、これが、シャンパンか…。
そうだな、一気に飲んじゃあ、勿体ない。
味わおう。
で、おい!平民貴族、この茶色い塊は、何だ?
チョコレート?
え゛…隊長の好物か…。
隊長が、お好みなら、こいつもゆっくりと…って、
なんで、酒と甘いのが、合うんだ?
いいから、食べてみろ!
ああ、分かったよ。
へ~~~!
そ~か。
合うなぁ。コレ、癖になりそうだ。
けど、もう二度と会う事は、無いな。
俺、他の奴らに、自慢したくなってきたぜ。
悪いな、平民貴族、口の堅い俺でも、
自慢したい事に関しては…。
ダメだ。隊長に関する事は、お口にチャック!
お!ねえちゃんが、戻ってきたぜ。
もう一杯!って、言っちゃダメなのか?
リボンをお掛けしましょうか?
箱のままで宜しいでしょうか?
な~に、聞いているんだ。
リボンに決まってるだろう。
え゛…平民貴族、箱のまま?
どうしてだ?
で、ピンキーリングだけ、リボン…。
何考えているんだか、分からねえぜ。
うん?平民貴族が、シャンパングラスを、こっちに寄せてきたぜ。
え゛…吞んでいいのか?
付いて来てくれた礼。
そんじゃまあ、遠慮なく。
うめ~~~な!
あ!ねえちゃんが、話し出した。
ほう!エンゲージリングの内側に、メッセージ。
ふーん、アンドレ、おまえ考えてきたのか?
おう!頷いたな。
さあ!披露しろ。
隊長への、愛のメッセージ!
俺が、聞いてやる。保証人だ!
「ふりそそぐ、
金色の光の中…。」
ほうほうほう!詩人アンドレのお出ましか!
スゲーの、かっ飛ばして、ねえちゃん達を、びっくり…。
そんな事は、どうでもいいんだ!
隊長が、とろけそうな、メッセージ。
俺が、最初に聞いてやるなんて…。
ちくしょう~~~~耐えられねえぜ!
次は、どう来るんでい!
「ブロンドの髪、ひるがえし。
馬上ゆたかに、指揮をとる。」
け~~~~~っ、泣けるぜ!
隊長、もう絶対に、おまえから離れないぞ!
なんだ?ねえちゃん達、わさわさしてやがる。
ちゃんと、詩人の詩をメモって、エンゲージリングに入れてやれ!
さあ、アンドレ!
次は?
「あ……青い瞳、その姿は……
さながら、天に吼ゆる、
ペガサスの
心ふるわす
翼にもにて……」
く~~~~~!
いいぜ!アンドレ!
女らしいだの、可愛いだの、じゃなくて、
おおおお!おまえ、ちゃんと、凛々しい隊長に惚れてんだな!
え゛…なんでえ?ねえちゃん?
そんなに、長い文章リングの中に入らないだと…。
ちょいと、メモったの見せろ。
それと、リングもな!
まずいぞ!アンドレ、無理だ。
こんな事、俺にでも、分かる。
おまえなら、言わなくても分かるよな?
なんだ、なんだ、真っ青になって、
隊長の瞳より真っ青だぞ。
しっかりしろ!アンドレ!
ふう、正気に返ったか…。
おい!他のは無いのか?
詩人!
え゛…これしか、考えていない?
う~~~~ん、
おっ!
何か閃いたか?
金を払っていく。
暫く、考えてから、戻って来る。
ほう!いい考えだ。
ここで、グタグタされたら、堪んねえもんな。
で?
両方買うのか?
金はあるのか?
巾着を取り出した。
おまえ、まさか小銭チャラチャラ出すんじゃないだろうな?
数えるの大変だぞ。
え゛…なんだ、そのデカイの?
10リーブル…初めて見たぞ。
50リーブル…そんなもん、この国に有ったのか?知らなかったぞ!
おお!詩人だけかと思ったら、小金持ち…いや、大金持ちだぜ!
恐れ入りやした。
さすが、隊長にプロポーズするだけの、太っ腹だ。
へっ!目の前に、大判小判が、ザックザックだ!
さあ!次行くぞ!
ン?ああ、領収書に、引換証…。
おお!文字数まで書いてくれるか!
そうだよな!また、長~~~いの、
持ってこられちゃあ、堪んねえもんな!
ねえちゃん達も、分かってら!
で、俺たちを、サッサと追い出すのか…。
まあ、変な客だもんな。
2人じゃなくて、5人おん出るぜ!
さあ、アンドレ、少し疲れたぜ。
それに、3時のおやつだ。
まだ、見るのか?
ああ、そうか。
ドレス売り場を、一回り。
一回りだけだぞ。
そしたら、3時のおやつだ!
つづく
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