♪Fight From The Inside
男が2人、対峙したまま動かなかった。
それぞれ、相手のすきを狙いながら、
すり足で一歩一歩、少しずつ円を描いて動いていた。
それでも、見ている者にとっては、動いていないも同然だった。
はじめに焦れたのは、アランだった。
右手に持った長い方の木刀で、思いっ切り振りかぶってきた。
「相変わらず、短気な男だな!」
アンドレが、軽くかわした。
ますます頭に血が上ったアランが、攻めて来る。
右手の木刀、左手の短い木刀で、一見めったやたらに攻めているようだが、
アンドレの僅かな隙を探そうと、攻めていた。
しかし、アンドレは、一本の木刀で、もの凄い早さでこれを左右にかわしていた。
アンドレの額から、これまで出たことの無かった、冷や汗が流れた。
つ・・・・・つかえる・・・・・!!
はじめてだ
これだけの腕を持った男・・・・・
道場裏の稽古とは・・・・・
ひと味違う・・・・・
暫く同じ動きが続いていたが、
遂にアンドレの木刀が、
アランの左の木刀を叩き飛ばした。
「う゛!」
アランがこの日初めて声を上げた。
再び、2人の距離が開いた。
両者ともかなり息が上がっている。
その息を静めているのかと思いきや、アンドレが、思いっ切り打ち込んで行った。
それをアランは、はっしと受け止め再びラリーならぬ、打ち合いが始まった。
持久戦ならアンドレの方が得意であった。
アランは、一刀一刀、打ち込むたびに相手を倒すことを考えている。
一方のアンドレは、稽古でもしているかのように、淡々と打ち合いをしながら、
ゆっくりと相手が隙を見せるのを待っていた。
オスカルも瞬きもせずに、腕を組んだまま、これをニコニコと見つめていた。
道場中が同じことの繰り返しに、そろそろ飽きてきて、
じりじりする者が出てきた頃。
オスカルが、急に片膝を立てて、身を乗り出したのが先なのか、
アンドレの動きが先なのか、誰にも分からなかったが、
アンドレの木刀が、アランの木刀を思いっきり叩き、
のけぞった右わき腹目がけて、
返した木刀を打ち込むのを道場中の者が見た。
あ゛!アランの肋骨が・・・・・腹がぶっ飛ばされる!!!!
・・・・・と、思った瞬間、アランの胴まで、
あと1ミリと言う所でアンドレの木刀はピタリと止まった。
アランは、真っ青になったまま、動かない。
道場中から、ふ~~~~っと息を吐く音がした。
勝負がついた。長い、長い、戦いだった。
道場中から拍手喝采があがった。
アンドレとアランは、丁寧に礼をした後、固い握手をした。
お互いの目に同じ何かが宿っているのを感じた。
同じ女性を愛した男の戦いで、どういう感情が芽生えたのか、誰も知らなかった。
オスカルは、何事もなかったかのように、元の通りニコニコと座っていた。
一方の、ジェローデルVS信長の闘いの方には、観戦者がネコ軍団しかいなかった。
しかし、ネコ軍団の熱い声援を受けてジェローデルが勝った。
********************
残るは、アンドレVSジェローデルの決勝だった。
道場主のレニエが、1時間後に試合を行う事を宣言した。
それに対し、オスカルが、何事か父である道場主に告げた。
レニエは何度か頷き、また、首を振り、
そして、相談事が決まったようである。
アンドレとジェローデルが、上座に座る、レニエ、オスカルの前に控えた。
オスカルが、口を開いた。
「決勝戦は、真剣での勝負とする!
すなわち、命を懸けての真剣勝負である。
ここに『道場運営基準法』とその『施行令』がある。
これによると、この道場で、道場主の元で行われた試合においては、
傷、殺生は全て、罪とはならない。・・・・・と、ある。
つまり、道場内は【治外法権】だ!
両者ともそのつもりで、戦ってくれ!
なお、この勝負で勝った男に、このオスカル、無条件で嫁ぐこととする!
以上だ!
両者とも、健闘を祈る!
では、1時間後に・・・・・」
ジェローデルは、与えられていた四畳半に引き上げ、大小の刀を取り出した。
そして作法通り半紙をくわえて(何の為にそうするのか、知らないけど)、
本当はクックックッ・・・・・と笑いたくなるのを堪えながら、刀にぽんぽんとした。
(これも良く時代劇で見るのですが、何の為に何をしているのか知らないです)
一方、道場では、既に道場主は部屋に引き上げていた。
フランソワとジャンが、床をぴかぴかに、磨き上げる為、
雑巾を手にして待機していた。
しかし、アンドレはオスカルの前に座ったまま動かない。
オスカルが、そっと声を掛けた。
「おまえも、部屋に戻って支度をして来い!」
「オスカル、おまえがせっかくチャンスを作ってくれたが、
おれは大小を持っていない!
此れでは、勝負する前から、負けだ!」
「ふふふ・・・・良いから、部屋に行ってみろ!
わたしを信じると、言っていただろう❣️」
渋々、アンドレは、首を傾げながら自室に向かった。
障子を開けると、座卓の上に大小の刀が台の上に置かれてあった。
どんぐりの様な目をさらに丸くして、アンドレは刀に見入った。
『斬鉄剣』だ❣️
此れが、ウワサの・・・・・ルパン三世の相棒。
石川五右衛門が持っていたという、斬鉄剣か、・・・・
恐る恐る、幻でも見ているかの様に、そっと手を伸ばした。
アンドレの右手が、ガッシリと斬鉄剣を握った。
左手に持ち替えて、引き抜いた。
戦車でも、銃弾でも、ルパンのパンツさえも、斬れる刀が、煌めいた。
オスカルの気持ちをしっかりと受け止めた。
この上は、ジェローデルを討ち果たし、オスカルを堂々と嫁に迎えよう❣️
アンドレは、そう決意すると、一度、刀を鞘に収め、台に置いた。
そして先ず、精神統一をするべく、坐禅を組んだ。
それが済むと、今度は怖いくらい、ド真剣な表情で刀の手入れにかかった。
こうして、アンドレは、親の仇、ジェローデルとの戦いの準備を進めていった。
BGM Love Is Your Name
By Steven Tyler
男が2人、対峙したまま動かなかった。
それぞれ、相手のすきを狙いながら、
すり足で一歩一歩、少しずつ円を描いて動いていた。
それでも、見ている者にとっては、動いていないも同然だった。
はじめに焦れたのは、アランだった。
右手に持った長い方の木刀で、思いっ切り振りかぶってきた。
「相変わらず、短気な男だな!」
アンドレが、軽くかわした。
ますます頭に血が上ったアランが、攻めて来る。
右手の木刀、左手の短い木刀で、一見めったやたらに攻めているようだが、
アンドレの僅かな隙を探そうと、攻めていた。
しかし、アンドレは、一本の木刀で、もの凄い早さでこれを左右にかわしていた。
アンドレの額から、これまで出たことの無かった、冷や汗が流れた。
つ・・・・・つかえる・・・・・!!
はじめてだ
これだけの腕を持った男・・・・・
道場裏の稽古とは・・・・・
ひと味違う・・・・・
暫く同じ動きが続いていたが、
遂にアンドレの木刀が、
アランの左の木刀を叩き飛ばした。
「う゛!」
アランがこの日初めて声を上げた。
再び、2人の距離が開いた。
両者ともかなり息が上がっている。
その息を静めているのかと思いきや、アンドレが、思いっ切り打ち込んで行った。
それをアランは、はっしと受け止め再びラリーならぬ、打ち合いが始まった。
持久戦ならアンドレの方が得意であった。
アランは、一刀一刀、打ち込むたびに相手を倒すことを考えている。
一方のアンドレは、稽古でもしているかのように、淡々と打ち合いをしながら、
ゆっくりと相手が隙を見せるのを待っていた。
オスカルも瞬きもせずに、腕を組んだまま、これをニコニコと見つめていた。
道場中が同じことの繰り返しに、そろそろ飽きてきて、
じりじりする者が出てきた頃。
オスカルが、急に片膝を立てて、身を乗り出したのが先なのか、
アンドレの動きが先なのか、誰にも分からなかったが、
アンドレの木刀が、アランの木刀を思いっきり叩き、
のけぞった右わき腹目がけて、
返した木刀を打ち込むのを道場中の者が見た。
あ゛!アランの肋骨が・・・・・腹がぶっ飛ばされる!!!!
・・・・・と、思った瞬間、アランの胴まで、
あと1ミリと言う所でアンドレの木刀はピタリと止まった。
アランは、真っ青になったまま、動かない。
道場中から、ふ~~~~っと息を吐く音がした。
勝負がついた。長い、長い、戦いだった。
道場中から拍手喝采があがった。
アンドレとアランは、丁寧に礼をした後、固い握手をした。
お互いの目に同じ何かが宿っているのを感じた。
同じ女性を愛した男の戦いで、どういう感情が芽生えたのか、誰も知らなかった。
オスカルは、何事もなかったかのように、元の通りニコニコと座っていた。
一方の、ジェローデルVS信長の闘いの方には、観戦者がネコ軍団しかいなかった。
しかし、ネコ軍団の熱い声援を受けてジェローデルが勝った。
********************
残るは、アンドレVSジェローデルの決勝だった。
道場主のレニエが、1時間後に試合を行う事を宣言した。
それに対し、オスカルが、何事か父である道場主に告げた。
レニエは何度か頷き、また、首を振り、
そして、相談事が決まったようである。
アンドレとジェローデルが、上座に座る、レニエ、オスカルの前に控えた。
オスカルが、口を開いた。
「決勝戦は、真剣での勝負とする!
すなわち、命を懸けての真剣勝負である。
ここに『道場運営基準法』とその『施行令』がある。
これによると、この道場で、道場主の元で行われた試合においては、
傷、殺生は全て、罪とはならない。・・・・・と、ある。
つまり、道場内は【治外法権】だ!
両者ともそのつもりで、戦ってくれ!
なお、この勝負で勝った男に、このオスカル、無条件で嫁ぐこととする!
以上だ!
両者とも、健闘を祈る!
では、1時間後に・・・・・」
ジェローデルは、与えられていた四畳半に引き上げ、大小の刀を取り出した。
そして作法通り半紙をくわえて(何の為にそうするのか、知らないけど)、
本当はクックックッ・・・・・と笑いたくなるのを堪えながら、刀にぽんぽんとした。
(これも良く時代劇で見るのですが、何の為に何をしているのか知らないです)
一方、道場では、既に道場主は部屋に引き上げていた。
フランソワとジャンが、床をぴかぴかに、磨き上げる為、
雑巾を手にして待機していた。
しかし、アンドレはオスカルの前に座ったまま動かない。
オスカルが、そっと声を掛けた。
「おまえも、部屋に戻って支度をして来い!」
「オスカル、おまえがせっかくチャンスを作ってくれたが、
おれは大小を持っていない!
此れでは、勝負する前から、負けだ!」
「ふふふ・・・・良いから、部屋に行ってみろ!
わたしを信じると、言っていただろう❣️」
渋々、アンドレは、首を傾げながら自室に向かった。
障子を開けると、座卓の上に大小の刀が台の上に置かれてあった。
どんぐりの様な目をさらに丸くして、アンドレは刀に見入った。
『斬鉄剣』だ❣️
此れが、ウワサの・・・・・ルパン三世の相棒。
石川五右衛門が持っていたという、斬鉄剣か、・・・・
恐る恐る、幻でも見ているかの様に、そっと手を伸ばした。
アンドレの右手が、ガッシリと斬鉄剣を握った。
左手に持ち替えて、引き抜いた。
戦車でも、銃弾でも、ルパンのパンツさえも、斬れる刀が、煌めいた。
オスカルの気持ちをしっかりと受け止めた。
この上は、ジェローデルを討ち果たし、オスカルを堂々と嫁に迎えよう❣️
アンドレは、そう決意すると、一度、刀を鞘に収め、台に置いた。
そして先ず、精神統一をするべく、坐禅を組んだ。
それが済むと、今度は怖いくらい、ド真剣な表情で刀の手入れにかかった。
こうして、アンドレは、親の仇、ジェローデルとの戦いの準備を進めていった。
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