Father to Son


時間も時間だし、・・・って、何時なのだろうか?
オスカルも、疲れているだろうから。
と、皆退出することとなった。

奥さまが、レヴェーヴァをベビーベッドに寝かせようとすると、オスカルが、今夜は自分の横に寝かせたい、と告げた。

可愛くて、嬉しくてしょうがないのだろう。
おれも、隣の部屋に行こうとすると、オスカルに残るよう言われた。


誰もいなくなると、オスカルはいつものように、口角をキュッと上げてニヤリと笑った。
「大変だったか?つかれただろう?」と聞くと、意外な言葉が返ってきた。
「・・・それが、・・・よく覚えていないんだ。・・・気が付くと生まれていて、・・・」
「・・・そんなものなのか?」
「・・・わからん。・・・初めての事だし、・・・」

「・・・ふ~ん。・・・でも、良かったな、男で、・・・」
「当たり前だ!女なんか生まれてみろ!どう育てていいかわからん!
おまえ、女の子の育て方わかるか?」と、言ってまたニヤリと笑う。

言うと、やはり疲れているのか、目をつぶってしまった。
目をつぶったまま、
「椅子を持ってきて、そこに居ろ!」
おれが、寝台の横に座ると、手を差し出してきた。そっと握る。

とても安心している様だ。そりゃそうだ。代々続く伯爵家を、自分の代で終わりにさせるかもしれない重圧に、耐えてきたのだ。

オスカル・・・かわいそうに・・・
こみあげる心の苦しみをひとりではかかえきれないこともあるのだろうに・・・
おれには、・・・おれに寄りかかってほしい。と思うのは、出過ぎているのだろうか、・・・

生まれと時から、ずっと一緒に育ってきた、あの頃は身分など、関係なかった。ただ、一緒に居たいから、両親と暮らすことより、オスカルを選んでここ、ヴェルサイユにやって来た。自分の選択を後悔は、していない。・・・していないけど、・・・最近、何かが、おれの心に引っかかる。

  **************************

おれ、アンドレ・グランディエは、パ・ド・カレ県の県庁所在地、アラスの近くの町で生まれた。順調に育っていれば、今頃、家業を継ぐための教育を受けて、人の上に立つ人間に育っていただろう。

それが何故か、オスカルが奥さまのお腹に居る時から、夫人の側を離れず。オスカルが誕生してからはオスカルの側を決して離れず。幼い時を一緒に育ち、成長した。

オスカルが6歳、おれが8歳の夏。オスカルは伯爵家の跡取りとなる、教育を受けるため、ヴェルサイユに帰ることになった。あまり記憶にないのだが、おれもオスカルもお互い離れようとしなかったらしい。おれの父が、『両親』と『オスカル』どちらを選ぶか、問うたらしい。

おれたちは、すかさず互いの相棒を、選んだようだ。その時のおれに、どんな考えがあったのかは、今になっては、分からない。ただ、それから、オスカルの側にいて、次第に愛するようになって、後悔は無かった。

  **************************

無かったが、こうして我が子が生まれてみると、我が子が生まれたのに、名乗りを上げる事も出来ず。まあ、愛し合って、生まれた子どもでないにせよ、同じベッドで眠ることもなく。これからも、理性との闘いを強いられるのかと思うと、やるせない気持ちになってくる。

おれの人生は、この先変化はあるのだろうか?もしかしたらこのまま、・・・

そんな事を考えながら、ウトウトしてしまったようだ。
突然、赤ん坊、レヴェーヴァの泣き声に、起こされた。
オスカルは、もう起き上がって、乳をやる準備をしている。

わ~~~~~~~~~~!
おれの前で、胸をはだけるのか~~~!
オスカルは、頓着せず、淡々としている。
おれは、見ないように、そっと見る。

レヴェーヴァが、乳を飲み始めると、オスカルは嬉しそうに、おれの方を見た。
真っ白な乳房に、レヴェーヴァが、頬を寄せて乳を飲んでいる。・・・
スケベ心なんて、どこかにぶっ飛んでしまった。
まるで、聖母さまだ。オスカル、おまえは母になってさらに美しくなった。


な~んて、感心している暇は、なかった!
赤ん坊って、こんなにも乳を欲しがり、おむつを汚すものなのか~~~!

おれは、泣き始めて、飛び起きるが、オスカルは、母親の直感からか、泣き始める一瞬前に起きている。すごいことだと、これまた感心してしまう。

漸く12月の遅い夜が明けると、オスカルは、すっくと起き上がった。
おれは慌てた。
「おい!大丈夫なのか?しばらく安静にしていた方が良いのでないのか?」

「おまえ、『たまごクラブ』ちゃんと読んでないな!?なるべく早く起きて動いた方が、回復が早い。と書いてあったじゃないか?」
そりゃそうだが、こんな小さいけど、おまえにとっては大きなものが、あそこから出てきたのだぞ!痛くはないのか?

オスカルは、アニェスを呼ぶと、さっさとキュロットに着替えさせた。
食堂に降りていこうとすると、さすがに、今日はお部屋でお食事を取ってください。
と、アニェスにたしなめられた。

オスカルは渋々、
「では、アンドレのと、二人分朝食を持ってきてくれ」と告げた。
おれが焦ったら
「たまには二人で良いだろう?」と、もうもう、とろけそうな微笑みを浮かべて、おれを見た。

久しぶりに、二人で取る朝食は、とても感慨深かった。
おまけに、おれの、・・・イヤ、おれとオスカルの子どもも、一緒だ。
食事中にも、レヴェーヴァは泣き出し、オスカルは、もう器用に片手でレヴェーヴァを抱き、片手で食事している。
またまた、おれは感心して、惚れ直してしまう。

そんな感じで、穏やかにとは言い難いほど、お乳とおむつに振り回されながら、午後になると、ヴェルサイユに報告に行かれていた、旦那さまが帰っていらして、オスカルの居間に飛び込んできた。

「オスカル!やったぞ!アントワネットさまも喜んでくださった。
男子出産の手柄に、昇進が決まったぞ!
近衛連隊長だ!そして、一気に大佐に昇格だ!」

「近衛連隊長!?誠でございますか?父上?」
「ああ、そして、アントワネットさまは、これまでいじょうに親しくわたしのそばについてください。・・・と仰って下さった」

オスカルはおれを見て、
「アンドレ!予定通り新年には出仕だ!準備を整えておけ!」
と、嬉しそうに言った。

BGM Sleeping on the Sidewalk
By Brian May
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。