♪It’s Beautiful Day
夜の訪れを告げる鐘の音が聞こえた。
この時期、暗くなるのは早いから、今何時だかさっぱりわからないが、
いつもだったら、店を開けるために、準備を始める頃だろう・・・・・。
今日は、そんなことどうでもよい。
それよりも・・・・・
オスカルが、おれの腕の中にいる。
まだ夢ではないのかと思ってしまう。
でも、この重み・・・温かさ・・・本物だ。
目の前にアンドレの広い胸がある・・・。
愛する男と一つになる・・・。
という事が、どういうことなのか、初めて知った・・・。
アンドレと一つになれてわたしは、胸がいっぱいになっている・・・。
・・・(。´・ω・)ん?あ!アンドレの胸!・・・
「いて!痛いじゃないか!何をする?オスカル!?」
「ん?おまえの胸・・・毛が生えている。・・・初めて見たから、・・・引っ張ってみた・・・。」
「引っ張れば痛いってのがわからないのか?
それに大事な胸毛だ!・・・大切にしてくれ!」
「うん!少ないものな!」
「おまえ!誰と比較しているんだ?」
「ああ、フレディ・マーキュリー・・・」
「誰?それ?」
「わたしも知らない・・・勝手に口が動いた・・・」
「・・・?・・・それより、腹減らないか?!」
「・・・おまえ!・・・ムードってのを知らないのか?・・・」
「それを言うなら、胸毛を引っ張った、お前の方がムードないんじゃないか?」
「・・・で、何を食べさせてくれるんだ?」
「やっぱりおまえも腹減っているんだな?運動したもんな!」
「馬鹿!!!」
「・・・服、着るの手伝おうか?オスカル!?」
「馬鹿!一人でできる!・・・それより、おまえのを手伝ってやろうか?」
「・・・え゛!ホントに!喜んでお願いしたい!!!!」
「・・・え゛!お願いされるとは・・・思っていなかった!イヤだ・・・自分でやれ!」
「ハハハハハ・・・先に下に行っているから、
降りておいで!
チュッ!ローズピンクの服・・・良く似合っていたよ!
だけど・・・何も着ていない方が好みだけどな!」
「・・・ぐ!・・・また、殴られたいか!?」
「ハハハハハ・・・」
アンドレとの距離がずっと近くなったようだ!
以前も幼馴染みの親友で、隠し事も何もなかったけど・・・
どこかで線が引かれていて立ち入れない所があった。
今は、・・・オトコとオンナになったのに、
ずっと近くなった気がする。
2年間の、ホントは2年と4か月だけど、
空白が嘘みたいだ・・・。
でも、おまえが過ごしてきた日々を、もっと知りたい!
食事をしながら聞こう!・・・アンドレが呼んでいる。
下に行ったら、アンドレがいない・・・(。´・ω・)
また、畑に行ったのかな?・・・裏口から出てみると、・・・いた(‘◇’)ゞ
アンドレが、野菜だけじゃあ物足りないから、鶏肉でも食べるか?
と、聞いてきた。
OKすると・・・じゃあ、これからニワトリを絞めるから、
おまえ、見たくないだろう?
中に入っていろ!
なんて言い出した。
わたしはそんな柔じゃない!それに、おまえがすることは全て見ていたいのだ。
言い換えれば・・・傍に居たいとも言うが・・・、
丸裸にされた、元ニワトリだった、・・・鶏肉を持って店の中に戻ってきた。アンドレは、手際よく元ニワトリをわたしが見たことがあるような・・・食べるのにちょうどいい大きさに、切り分け始めた。鶏肉の山が出来て来る。
「おいおい!そんなに二人じゃ食べられないぞ!」
「ああ、わかっている。鶏肉は足が速いから・・・近所にお裾分けだ!」
「え゛?鶏肉が走って、近所に行くのか?」
「え゛っ?ええええええ゛っ?!
ああ!腐るのが早い・・・って意味だよ!
こうして、分け合って、お互い助け合って、暮らしているんだよ。
ちょっと、行ってくる!」
「あ!わたしも行きたい!」
「う~ん、おまえを見せびらかしたいのは山山だけど・・・
騒ぎになりそうだから・・・。
また、今度な!今日は大人しく留守番していてくれ!」
そう言ってアンドレは、足の速い鶏肉の山を持って、出て行ってしまった。
わたしは、手持ち無沙汰になってしまった。
することが無いので、先ほどアンドレが畑から、持って来たカゴの中を覗いてみた。
上の方に、同じ形だけど、赤いのと、黄色と緑とオレンジの変な形のものが入っている。・・・軽い。・・・食べられるのか?ツヤツヤしてきれいだ!かじってみようか?
その下は・・・茶色い土の付いているのもあるぞ・・・・・・・・・?
普段わたしの食べている物とは、かなり違うような気がしてきた・・・。
アンドレ・・・おまえは何を食べてそんなにデカくなったんだ!?
ゴロンと足に何かが当たった・・・。
(。´・ω・)床に黒い物が、ゴロゴロと転がっている・・・。
手に取ってみる。・・・・・・・・まわりがボコボコしている。・・・結構重量感があるぞ!
・・・大きさもまちまちだ。・・・・・・・・暗くてよく見えないから、手ごろなのをカウンターの上に出してみた。・・・黒というより、深い緑色だ(?)・・・なんだこれは?何かの実のようだが、・・・
まさか!これを食べるんじゃないだろうな!?
硬いぞ!
近くなったと思ったのに、アンドレとの距離が遠くなったような気がする(寂し)
あ!アンドレが帰ってきた。
今度は、手に山のように、赤いのやオレンジ色のを持っている。
「ただいま~、お!野菜、出しておいてくれたんだな!」
イヤ!そうじゃなくて見ていただけ、だけど、・・・そう言う事にしておこう!
「何を、食べさせてくれるんだ!?」
「簡単なのしかできないけど・・・味の保証はするぞ!
物々交換で、果物も、もらって来たしな!」
う~~~~~その訳の分からない物で、何が出来るのだ?
わたしは、今度こそ「こ・・・・・こわい・・・・・」と、本気で思った。
「もらって来た果物って、なんだ?」
「これか?リンゴと三ヶ日みかんに柿だ!
リンゴは食った事あるだろう?
他のは、食った事ないか?」
わたしは、縦と左右にぶんぶんと頭を振った。
「今度は、おれがカウンターの中だから、おまえは座って見ていろ」
「うん・・・」
わたしは不安でいっぱいになった。
アンドレが、さっきのカラフルな軽い物体に、包丁を入れ始めた。
「それは、何だ?」
わたしは、聞かずにはいられなかった。
「え゛?・・・あ!もしかして、おまえ、料理された物しか見たことがない?」
「え゛!?」
「これは、パプリカ!こうやって切っていくと・・・」
「・・・あ!・・・分かった!」
良かった!・・・・・・・・アンドレとの距離は、変わらない!(*’▽’)
「だろう?」
「中の粒々したのは、なんだ?」
「これは、種。残念ながら、食べられないぞ!」
「じゃあ、そっちの重いのは?」
「切っていくから、当ててみろ!」
何だか楽しくなってきたぞ(*’▽’)
「・・・・・・・・・あ!カボチャ!ほ~~う、それも中に種が入っているのか、・・・面白いな・・・」
アンドレがどんどん野菜をカットしていく。
「そろそろワインを選んでくれないか?」
「え~!もっと見ていたい!」
「もう終わりだ!
野菜と鶏肉を鍋に入れて、塩・コショウして、
蓋をして、・・・火にかける!
あとは、待つだけ!」
「料理って、そんなものなのか?」
「ハハハハハ・・・男の料理だからな!
さて、ワインは?」
わたしはワインを飲みながら、アンドレの料理を食べてみた。
初めての食材ではないが、初めての味だった。
とても素朴で美味しい!・・・アンドレと一緒だから美味しいのかもしれない。
フルーツも剥いてくれたら、普段見ているモノになったが、三ヶ日みかんは初めて食べた。
自分で皮をむいて、薄い袋のまま食べる。
・・・そんな、普通の事が新鮮だ!
アンドレは良くワインを飲む・・・。
そんなに飲んで、これから店を開けるのだろう?大丈夫か?
・・・・と聞いたら、
今日は休みたい!
おまえとふたりで又、ベッドでいちゃいちゃしたい!
・・・などとけしからん事を言い出した。
そりゃあわたしだって、そうしたいけど・・・、
・・・・・え゛!・・・
おまえが働いている所を見たい!と、言うと、じゃあ、階段の3段目から下には降りて来るなよ!・・・という事で、商談成立!
*************************
・・・・・・・・で、わたしは、今一人で二階にいる。
アンドレがわたしの為に用意した、というドレッサーの前に腰掛け、爆発した髪を直し(この姿で食事をしていたなんて・・・次からは気を付けないといけないな)アンドレの机の前に来た。
あいつが読んでいるらしい本が何冊か置いてある。
ジャン・ジャック・ルソー、ヴォルテール・・・同じようなのを読んでいるのか・・・。
ふと、見ると引き出しからはみ出している紙が見えた。
ちょっとだけ、と引っ張り出してみた。
新聞のようである。
なかなか面白そうだ。ベルナール・シャトレというのが中心になって書いているが、他の者の記事も興味深い。
わたしは、夢中になって、引き出しからどんどん出して読み始めた。
読み疲れると、階段の途中に座ってアンドレの様子を探る。
主に客同士が話していて、アンドレの声が聞こえない・・・。
つまらない!つまらないから、あちこち開けたり閉めたり、新聞を読んで・・・
お~い!アンドレ!たまには様子を見に来ないのか?
小さな声で呼んでみたけど、・・・来ない。
面白くないから、ふて寝してみた。
*************************
その頃、1階のショットバーでは、
アンドレが、一心不乱にもう、かなり前から磨きあがっているグラスを、無駄に磨いていた。
店内には、頭が禿げ上がった恰幅の良い、パンパンに膨らんだ丸っちょい腹をのけぞらせてスツールに座っているオヤジと、
こちらは、対照的にくたびれた帽子(頭に乗せているから帽子と言えるが・・・・・)から白髪をはみ出させ、背筋をピシッと伸ばした細身のオヤジ、
そして、その連れなのか、もうすっかり出来上がって、カウンターに突っ伏して、鼻提灯を膨らましながらいびきをかいている、正体不明の男がいた。
「おい!アンドレ!おいってば!」
「聞こえてないのか?アンドレ!?」
「え゛・・・ああ、ゴメンゴメン、なんだ?酒か?」
思考がどこかに、飛んでいたアンドレが、ようやく戻って来て、応えた。
「アンドレ、おまえさん、今日はおかしいんじゃないのか?」
丸っちいのが言った。
すると、やせっぴーも
「そうだ、そうだ、さっきから、
難しい顔をしているかと思うと
急に考え始めて、・・・・・
かと思うと、にやにや、だらしのな~~~~い顔をして!」
「悩み事でもあるのか?俺たち人生経験が長いのが、聞いてやるぞ!」
と、丸っちいのが、酔って回らない、こんな酔っ払いに人生相談なんかできるかって口調で言った!
アンドレは、そうか・・・顔に出さないつもりが、ついつい出てしまったか、と、顔を引き締めてみるものの、思考は頭の上の部屋にいる、愛しい人の方へ行ってしまう。
自分の抱えている懸案は・・・・と、思った瞬間、また左ほおが、
ぽんぽこ、ぽんぽこ、と、痛み、慌てて手のひらを当てた。
それを見た、やせっぴーが、
「なんだい!ほっぺなんて押さえちゃって~?!
さては、カワイ子ちゃんにチュウでもされたか?」
「え゛・・・いや・・・・そんなんじゃ(あるけど・・・・)な・・・・・い!」
アンドレは、慌てて否定しながら、
「酒!もっと飲むだろう?」
と、2人の関心を余所に移そうと、声をかけた。
「オヤジさんは、同じのでいいか?」
やせっぴーが、ああ!と、言ってグラスを差し出す。
まるっちいのが、
「おれっちは、最近流行りの、ハイボールなんてのを貰うかな!
それも、強めのな!」
「オッケー!」
アンドレは、ジョッキにウィスキーを多めに注ぎ、
レモンを差し、炭酸水を注ぎ始めた。
まるっちいのがそれでもなお、話を続けた。
「この辺の、娘どもはみんな、おまえさんを狙っているぞ!
知っているだろう?色男のアンドレよぉ!」
すると、寝ていたはずの男が、やおら起きだすと、
「ふん!アンドレは、いつもそっとの席に座っている、白髪の姉ちゃんが好みなのさ!」
と、言って、また寝てしまった。
アンドレは、身に覚えがある事であり、数時間前にそのオンナの事でオスカルに悲しい思いをさせてしまった事を思い出したが、必死に内に秘めるよう努力した。
ら、
「おいおいおい!アンドレ!そんなに炭酸水で割っちまったら、薄くなっちまうぜ!
俺っちの頭のようにな!」
ハッとして、アンドレが手元を見ると、既にジョッキからハイボールだか、ウィスキーだか、炭酸水が溢れ出ていた。
「ゴメンゴメン、今、作り直す!こっちはおれが飲む!」
と言って、今度は雑念なしに仕事をこなした。
失敗したジョッキのを飲んでみると、ほとんど、アルコールは感じられなかった。
「おいおい!白髪はかわいそうだろう!あれは、プ・・・・・プラチナブロンドっちゅう高級なもんだ!
こいつの(と、細っちいのを指差して・・・・・)白髪とはわけが違う!」
と、まるっちいのが、くだを巻いた。
「ふ~~~ん、俺っちはこのまま髪を伸ばしたら、あんのお嬢さんのようになるかと思っていたが・・・・・」
「ふん!(ヾノ・∀・`)ムリムリおまえさんの髪とは、格が違いすぎらぁ!」
「なんでぇ!するってえと、そのプラチナブロンドのお嬢さんは、婆さまになったら、今度は黒髪になるじゃないか!?
なぁ!アンドレ!?」
「アンドレ・・・・・」
その時にはアンドレの心は、また浮遊し始めて、吞兵衛の所には無かった。
「っち!面白くねぇ!今夜は帰ろ~
帰って、聞き飽きた母ちゃんのいびきでも聞くとするか!?」
「ああ、そうだなぁ!
おい!潰れているの!帰るぞ!
今夜の、アンドレは、開店休業だ!」
その言葉にやっと、我に返ったアンドレが、止める間もなく、
三人の酔客は席を立った。
「勘定、置いて行くぜ!」
「ああ、今日はいいです。おれが悪かったんだから、
おごらせてください」アンドレが、慌てて言う。
するとまるっちいのが、
「そうかい!俺っちらも、生活が苦しいからな!
今夜は、ゴチになるな。
悪いなアンドレ!
今度、素面の時に悩みを聞くぞ!」
と、言って、店を後にした。
戸口まで見送ったアンドレは、テーブルの上に、
グラスが散らかり、こぼれた酒が、水たまりを作っているのを見た。
そのままにしておけば、テーブルに沁みが付いてしまう。
だから、いつもは閉店後丹念にテーブルを磨き上げ、
脂ぎった口が付いたグラスを洗い、そして、磨いてから、
本日の営業終了とした。
しかし、今夜は、そんなことどうでもよかった。
一目散に、階段を駆け上がりたかった。
いつもは、重い足取りで昇る階段を今夜は、三段跳びででも行けそうだった。
カウンターを通り抜け、階段に向かおうとすると、
再び、いや、三度、十度目位か?
左ほおが、
ぽんぽこ、ぽんぽこ、
ぽんぽこ、ぽんぽこ、
と、痛くなった。
そうだった、と、アンドレは、立ち止まった。
考えねばならない事があった!
スツールに座って考えようと思ったが、
時間の無駄と、片付けをしながら、思考を巡らせた。
先ずは、ジェルメーヌの事。
寂しさについ関係を持ってしまったオンナ。
でも、オスカルも分かってくれた。
オスカルは、分かってくれれば根に持つような人間ではない。
これはたぶん、もう問題にはならないだろう。
左ほおも、おとなしかった。
一番の懸案は、オスカル自身の事。
オスカルも自覚していないが、
彼女は、処女だった。
あの、フェルゼン邸に行った夜、
お互い何も身に着けずに抱き合っていたが、
2人とも、何の記憶もなかった。
しかし、レヴェが出来て、
生まれた。
オスカルの腹は、確かに大きくなったし、
腹に触れると・・・・・、
と、アンドレが、思いを巡らすと、今夜何回目か、左ほおが、
ぽんぽこ、ぽんぽこ、
ぽんぽこ、ぽんぽこ、
と、内側から叩かれている感触を得た。
ああ!そうだった、この感じだ!
オスカルの腹の中から、
ぽんぽこ、ぽんぽこ、
ぽんぽこ、ぽんぽこ、
って、蹴っていたな!
フェルゼンの時は、
あの時は、フェルゼンも何度もジャルジェ家にお泊りして、
でも・・・・・フェルゼン伯爵が、ある日言っていたな!
『記憶があるのか?』、と・・・・・。
だけど、あの時もオスカルの腹は膨らんで、
通常の妊婦と変わりはなかった。
出産はどうだったか・・・・・?
あ!奥さまが、オスカルの部屋へと向かう、階段を昇り、
おれが後を追って、
奥さまが、オスカルの部屋のドアノブに手をかけると産声が聞こえた。
レヴェの時も・・・・・。
ヴィーの時も・・・・・。
誰も、オスカルが妊娠するような事をした覚えがなく!
誰も、オスカルが出産したのを見た者はいない!?
しかし、母乳は出ていた・・・・・。
オスカル・・・・・
おまえはいったい・・・・・
聖母マリアさまか・・・・・!?
と、思った途端、また、
ぽんぽこ、ぽんぽこ、
ぽんぽこ、ぽんぽこ、
レヴェ・・・・・名乗れぬおれの息子よ!
おまえは何を言いたいのだ?
教えてくれ!・・・・・おれは、力のない父親・・・・・。
聖オスカル・・・・・
受胎告知・・・・・
だとすると、・・・・・あの子供たちは、なんなんだ!
と、思った途端、また、
ぽんぽこ、ぽんぽこ、
ぽんぽこ、ぽんぽこ、
気がつくと、カウンターテーブルはキレイに磨き上げられ、
汚れ物は全て、水に付けられていた。
こうしておけば、後は明日、洗うだけできれいになるだろう。
アンドレは、今度こそ、三段跳びで階段を昇ろうかと思ったが、
愛しい、聖なる人を驚かそうと、そっと昇って行った。
左ほおは、静かだった。
*************************
アンドレを待ち疲れて、気持ちよく寝ていると、
誰かが、わたしのベッドに入って来た。
ん!レヴェ?・・・それともヴィーか?
!!!??え゛??口を塞がれた!!!
アンドレ!
そうだ!わたしはアンドレのベッドにいたんだ!!!
仕事が終わったらしい。
「新聞を読んでいたのか?」
「うん!ファルーク・バルサラって人の記事が面白かった」
「へえ!どんなところが?」
「貴族と平民の中間に立って
繊細な旋律とハーモニーのバランス、
追いかけるように響き渡る、ギターオーケストレーションの連続、
そして4オクターブにもわたるヴォーカルの響き、
一番平和的に、物事を解決しようとしている。
そう思わないか?」
「そこの所がね、優柔不断、現実的じゃないと、言われることもあるな!
結構、叩かれるよ」おまえは笑いながら言った。
「え~!もしかして!!!」
「そっ!おれが書いている」
わたしは思いっ切り脱力した。
道理で、共感できたはずだ。お前の記事とはな!
脱力しているわたしから、
アンドレは、今度は手際よくコルセットを取り去った。
BGM Can’t Help Falling in Love
By Brian May & Kerry Ellis
ファルーク・バルサラはFreddie Mercuryの本名です。
夜の訪れを告げる鐘の音が聞こえた。
この時期、暗くなるのは早いから、今何時だかさっぱりわからないが、
いつもだったら、店を開けるために、準備を始める頃だろう・・・・・。
今日は、そんなことどうでもよい。
それよりも・・・・・
オスカルが、おれの腕の中にいる。
まだ夢ではないのかと思ってしまう。
でも、この重み・・・温かさ・・・本物だ。
目の前にアンドレの広い胸がある・・・。
愛する男と一つになる・・・。
という事が、どういうことなのか、初めて知った・・・。
アンドレと一つになれてわたしは、胸がいっぱいになっている・・・。
・・・(。´・ω・)ん?あ!アンドレの胸!・・・
「いて!痛いじゃないか!何をする?オスカル!?」
「ん?おまえの胸・・・毛が生えている。・・・初めて見たから、・・・引っ張ってみた・・・。」
「引っ張れば痛いってのがわからないのか?
それに大事な胸毛だ!・・・大切にしてくれ!」
「うん!少ないものな!」
「おまえ!誰と比較しているんだ?」
「ああ、フレディ・マーキュリー・・・」
「誰?それ?」
「わたしも知らない・・・勝手に口が動いた・・・」
「・・・?・・・それより、腹減らないか?!」
「・・・おまえ!・・・ムードってのを知らないのか?・・・」
「それを言うなら、胸毛を引っ張った、お前の方がムードないんじゃないか?」
「・・・で、何を食べさせてくれるんだ?」
「やっぱりおまえも腹減っているんだな?運動したもんな!」
「馬鹿!!!」
「・・・服、着るの手伝おうか?オスカル!?」
「馬鹿!一人でできる!・・・それより、おまえのを手伝ってやろうか?」
「・・・え゛!ホントに!喜んでお願いしたい!!!!」
「・・・え゛!お願いされるとは・・・思っていなかった!イヤだ・・・自分でやれ!」
「ハハハハハ・・・先に下に行っているから、
降りておいで!
チュッ!ローズピンクの服・・・良く似合っていたよ!
だけど・・・何も着ていない方が好みだけどな!」
「・・・ぐ!・・・また、殴られたいか!?」
「ハハハハハ・・・」
アンドレとの距離がずっと近くなったようだ!
以前も幼馴染みの親友で、隠し事も何もなかったけど・・・
どこかで線が引かれていて立ち入れない所があった。
今は、・・・オトコとオンナになったのに、
ずっと近くなった気がする。
2年間の、ホントは2年と4か月だけど、
空白が嘘みたいだ・・・。
でも、おまえが過ごしてきた日々を、もっと知りたい!
食事をしながら聞こう!・・・アンドレが呼んでいる。
下に行ったら、アンドレがいない・・・(。´・ω・)
また、畑に行ったのかな?・・・裏口から出てみると、・・・いた(‘◇’)ゞ
アンドレが、野菜だけじゃあ物足りないから、鶏肉でも食べるか?
と、聞いてきた。
OKすると・・・じゃあ、これからニワトリを絞めるから、
おまえ、見たくないだろう?
中に入っていろ!
なんて言い出した。
わたしはそんな柔じゃない!それに、おまえがすることは全て見ていたいのだ。
言い換えれば・・・傍に居たいとも言うが・・・、
丸裸にされた、元ニワトリだった、・・・鶏肉を持って店の中に戻ってきた。アンドレは、手際よく元ニワトリをわたしが見たことがあるような・・・食べるのにちょうどいい大きさに、切り分け始めた。鶏肉の山が出来て来る。
「おいおい!そんなに二人じゃ食べられないぞ!」
「ああ、わかっている。鶏肉は足が速いから・・・近所にお裾分けだ!」
「え゛?鶏肉が走って、近所に行くのか?」
「え゛っ?ええええええ゛っ?!
ああ!腐るのが早い・・・って意味だよ!
こうして、分け合って、お互い助け合って、暮らしているんだよ。
ちょっと、行ってくる!」
「あ!わたしも行きたい!」
「う~ん、おまえを見せびらかしたいのは山山だけど・・・
騒ぎになりそうだから・・・。
また、今度な!今日は大人しく留守番していてくれ!」
そう言ってアンドレは、足の速い鶏肉の山を持って、出て行ってしまった。
わたしは、手持ち無沙汰になってしまった。
することが無いので、先ほどアンドレが畑から、持って来たカゴの中を覗いてみた。
上の方に、同じ形だけど、赤いのと、黄色と緑とオレンジの変な形のものが入っている。・・・軽い。・・・食べられるのか?ツヤツヤしてきれいだ!かじってみようか?
その下は・・・茶色い土の付いているのもあるぞ・・・・・・・・・?
普段わたしの食べている物とは、かなり違うような気がしてきた・・・。
アンドレ・・・おまえは何を食べてそんなにデカくなったんだ!?
ゴロンと足に何かが当たった・・・。
(。´・ω・)床に黒い物が、ゴロゴロと転がっている・・・。
手に取ってみる。・・・・・・・・まわりがボコボコしている。・・・結構重量感があるぞ!
・・・大きさもまちまちだ。・・・・・・・・暗くてよく見えないから、手ごろなのをカウンターの上に出してみた。・・・黒というより、深い緑色だ(?)・・・なんだこれは?何かの実のようだが、・・・
まさか!これを食べるんじゃないだろうな!?
硬いぞ!
近くなったと思ったのに、アンドレとの距離が遠くなったような気がする(寂し)
あ!アンドレが帰ってきた。
今度は、手に山のように、赤いのやオレンジ色のを持っている。
「ただいま~、お!野菜、出しておいてくれたんだな!」
イヤ!そうじゃなくて見ていただけ、だけど、・・・そう言う事にしておこう!
「何を、食べさせてくれるんだ!?」
「簡単なのしかできないけど・・・味の保証はするぞ!
物々交換で、果物も、もらって来たしな!」
う~~~~~その訳の分からない物で、何が出来るのだ?
わたしは、今度こそ「こ・・・・・こわい・・・・・」と、本気で思った。
「もらって来た果物って、なんだ?」
「これか?リンゴと三ヶ日みかんに柿だ!
リンゴは食った事あるだろう?
他のは、食った事ないか?」
わたしは、縦と左右にぶんぶんと頭を振った。
「今度は、おれがカウンターの中だから、おまえは座って見ていろ」
「うん・・・」
わたしは不安でいっぱいになった。
アンドレが、さっきのカラフルな軽い物体に、包丁を入れ始めた。
「それは、何だ?」
わたしは、聞かずにはいられなかった。
「え゛?・・・あ!もしかして、おまえ、料理された物しか見たことがない?」
「え゛!?」
「これは、パプリカ!こうやって切っていくと・・・」
「・・・あ!・・・分かった!」
良かった!・・・・・・・・アンドレとの距離は、変わらない!(*’▽’)
「だろう?」
「中の粒々したのは、なんだ?」
「これは、種。残念ながら、食べられないぞ!」
「じゃあ、そっちの重いのは?」
「切っていくから、当ててみろ!」
何だか楽しくなってきたぞ(*’▽’)
「・・・・・・・・・あ!カボチャ!ほ~~う、それも中に種が入っているのか、・・・面白いな・・・」
アンドレがどんどん野菜をカットしていく。
「そろそろワインを選んでくれないか?」
「え~!もっと見ていたい!」
「もう終わりだ!
野菜と鶏肉を鍋に入れて、塩・コショウして、
蓋をして、・・・火にかける!
あとは、待つだけ!」
「料理って、そんなものなのか?」
「ハハハハハ・・・男の料理だからな!
さて、ワインは?」
わたしはワインを飲みながら、アンドレの料理を食べてみた。
初めての食材ではないが、初めての味だった。
とても素朴で美味しい!・・・アンドレと一緒だから美味しいのかもしれない。
フルーツも剥いてくれたら、普段見ているモノになったが、三ヶ日みかんは初めて食べた。
自分で皮をむいて、薄い袋のまま食べる。
・・・そんな、普通の事が新鮮だ!
アンドレは良くワインを飲む・・・。
そんなに飲んで、これから店を開けるのだろう?大丈夫か?
・・・・と聞いたら、
今日は休みたい!
おまえとふたりで又、ベッドでいちゃいちゃしたい!
・・・などとけしからん事を言い出した。
そりゃあわたしだって、そうしたいけど・・・、
・・・・・え゛!・・・
おまえが働いている所を見たい!と、言うと、じゃあ、階段の3段目から下には降りて来るなよ!・・・という事で、商談成立!
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・・・・・・・・で、わたしは、今一人で二階にいる。
アンドレがわたしの為に用意した、というドレッサーの前に腰掛け、爆発した髪を直し(この姿で食事をしていたなんて・・・次からは気を付けないといけないな)アンドレの机の前に来た。
あいつが読んでいるらしい本が何冊か置いてある。
ジャン・ジャック・ルソー、ヴォルテール・・・同じようなのを読んでいるのか・・・。
ふと、見ると引き出しからはみ出している紙が見えた。
ちょっとだけ、と引っ張り出してみた。
新聞のようである。
なかなか面白そうだ。ベルナール・シャトレというのが中心になって書いているが、他の者の記事も興味深い。
わたしは、夢中になって、引き出しからどんどん出して読み始めた。
読み疲れると、階段の途中に座ってアンドレの様子を探る。
主に客同士が話していて、アンドレの声が聞こえない・・・。
つまらない!つまらないから、あちこち開けたり閉めたり、新聞を読んで・・・
お~い!アンドレ!たまには様子を見に来ないのか?
小さな声で呼んでみたけど、・・・来ない。
面白くないから、ふて寝してみた。
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その頃、1階のショットバーでは、
アンドレが、一心不乱にもう、かなり前から磨きあがっているグラスを、無駄に磨いていた。
店内には、頭が禿げ上がった恰幅の良い、パンパンに膨らんだ丸っちょい腹をのけぞらせてスツールに座っているオヤジと、
こちらは、対照的にくたびれた帽子(頭に乗せているから帽子と言えるが・・・・・)から白髪をはみ出させ、背筋をピシッと伸ばした細身のオヤジ、
そして、その連れなのか、もうすっかり出来上がって、カウンターに突っ伏して、鼻提灯を膨らましながらいびきをかいている、正体不明の男がいた。
「おい!アンドレ!おいってば!」
「聞こえてないのか?アンドレ!?」
「え゛・・・ああ、ゴメンゴメン、なんだ?酒か?」
思考がどこかに、飛んでいたアンドレが、ようやく戻って来て、応えた。
「アンドレ、おまえさん、今日はおかしいんじゃないのか?」
丸っちいのが言った。
すると、やせっぴーも
「そうだ、そうだ、さっきから、
難しい顔をしているかと思うと
急に考え始めて、・・・・・
かと思うと、にやにや、だらしのな~~~~い顔をして!」
「悩み事でもあるのか?俺たち人生経験が長いのが、聞いてやるぞ!」
と、丸っちいのが、酔って回らない、こんな酔っ払いに人生相談なんかできるかって口調で言った!
アンドレは、そうか・・・顔に出さないつもりが、ついつい出てしまったか、と、顔を引き締めてみるものの、思考は頭の上の部屋にいる、愛しい人の方へ行ってしまう。
自分の抱えている懸案は・・・・と、思った瞬間、また左ほおが、
ぽんぽこ、ぽんぽこ、と、痛み、慌てて手のひらを当てた。
それを見た、やせっぴーが、
「なんだい!ほっぺなんて押さえちゃって~?!
さては、カワイ子ちゃんにチュウでもされたか?」
「え゛・・・いや・・・・そんなんじゃ(あるけど・・・・)な・・・・・い!」
アンドレは、慌てて否定しながら、
「酒!もっと飲むだろう?」
と、2人の関心を余所に移そうと、声をかけた。
「オヤジさんは、同じのでいいか?」
やせっぴーが、ああ!と、言ってグラスを差し出す。
まるっちいのが、
「おれっちは、最近流行りの、ハイボールなんてのを貰うかな!
それも、強めのな!」
「オッケー!」
アンドレは、ジョッキにウィスキーを多めに注ぎ、
レモンを差し、炭酸水を注ぎ始めた。
まるっちいのがそれでもなお、話を続けた。
「この辺の、娘どもはみんな、おまえさんを狙っているぞ!
知っているだろう?色男のアンドレよぉ!」
すると、寝ていたはずの男が、やおら起きだすと、
「ふん!アンドレは、いつもそっとの席に座っている、白髪の姉ちゃんが好みなのさ!」
と、言って、また寝てしまった。
アンドレは、身に覚えがある事であり、数時間前にそのオンナの事でオスカルに悲しい思いをさせてしまった事を思い出したが、必死に内に秘めるよう努力した。
ら、
「おいおいおい!アンドレ!そんなに炭酸水で割っちまったら、薄くなっちまうぜ!
俺っちの頭のようにな!」
ハッとして、アンドレが手元を見ると、既にジョッキからハイボールだか、ウィスキーだか、炭酸水が溢れ出ていた。
「ゴメンゴメン、今、作り直す!こっちはおれが飲む!」
と言って、今度は雑念なしに仕事をこなした。
失敗したジョッキのを飲んでみると、ほとんど、アルコールは感じられなかった。
「おいおい!白髪はかわいそうだろう!あれは、プ・・・・・プラチナブロンドっちゅう高級なもんだ!
こいつの(と、細っちいのを指差して・・・・・)白髪とはわけが違う!」
と、まるっちいのが、くだを巻いた。
「ふ~~~ん、俺っちはこのまま髪を伸ばしたら、あんのお嬢さんのようになるかと思っていたが・・・・・」
「ふん!(ヾノ・∀・`)ムリムリおまえさんの髪とは、格が違いすぎらぁ!」
「なんでぇ!するってえと、そのプラチナブロンドのお嬢さんは、婆さまになったら、今度は黒髪になるじゃないか!?
なぁ!アンドレ!?」
「アンドレ・・・・・」
その時にはアンドレの心は、また浮遊し始めて、吞兵衛の所には無かった。
「っち!面白くねぇ!今夜は帰ろ~
帰って、聞き飽きた母ちゃんのいびきでも聞くとするか!?」
「ああ、そうだなぁ!
おい!潰れているの!帰るぞ!
今夜の、アンドレは、開店休業だ!」
その言葉にやっと、我に返ったアンドレが、止める間もなく、
三人の酔客は席を立った。
「勘定、置いて行くぜ!」
「ああ、今日はいいです。おれが悪かったんだから、
おごらせてください」アンドレが、慌てて言う。
するとまるっちいのが、
「そうかい!俺っちらも、生活が苦しいからな!
今夜は、ゴチになるな。
悪いなアンドレ!
今度、素面の時に悩みを聞くぞ!」
と、言って、店を後にした。
戸口まで見送ったアンドレは、テーブルの上に、
グラスが散らかり、こぼれた酒が、水たまりを作っているのを見た。
そのままにしておけば、テーブルに沁みが付いてしまう。
だから、いつもは閉店後丹念にテーブルを磨き上げ、
脂ぎった口が付いたグラスを洗い、そして、磨いてから、
本日の営業終了とした。
しかし、今夜は、そんなことどうでもよかった。
一目散に、階段を駆け上がりたかった。
いつもは、重い足取りで昇る階段を今夜は、三段跳びででも行けそうだった。
カウンターを通り抜け、階段に向かおうとすると、
再び、いや、三度、十度目位か?
左ほおが、
ぽんぽこ、ぽんぽこ、
ぽんぽこ、ぽんぽこ、
と、痛くなった。
そうだった、と、アンドレは、立ち止まった。
考えねばならない事があった!
スツールに座って考えようと思ったが、
時間の無駄と、片付けをしながら、思考を巡らせた。
先ずは、ジェルメーヌの事。
寂しさについ関係を持ってしまったオンナ。
でも、オスカルも分かってくれた。
オスカルは、分かってくれれば根に持つような人間ではない。
これはたぶん、もう問題にはならないだろう。
左ほおも、おとなしかった。
一番の懸案は、オスカル自身の事。
オスカルも自覚していないが、
彼女は、処女だった。
あの、フェルゼン邸に行った夜、
お互い何も身に着けずに抱き合っていたが、
2人とも、何の記憶もなかった。
しかし、レヴェが出来て、
生まれた。
オスカルの腹は、確かに大きくなったし、
腹に触れると・・・・・、
と、アンドレが、思いを巡らすと、今夜何回目か、左ほおが、
ぽんぽこ、ぽんぽこ、
ぽんぽこ、ぽんぽこ、
と、内側から叩かれている感触を得た。
ああ!そうだった、この感じだ!
オスカルの腹の中から、
ぽんぽこ、ぽんぽこ、
ぽんぽこ、ぽんぽこ、
って、蹴っていたな!
フェルゼンの時は、
あの時は、フェルゼンも何度もジャルジェ家にお泊りして、
でも・・・・・フェルゼン伯爵が、ある日言っていたな!
『記憶があるのか?』、と・・・・・。
だけど、あの時もオスカルの腹は膨らんで、
通常の妊婦と変わりはなかった。
出産はどうだったか・・・・・?
あ!奥さまが、オスカルの部屋へと向かう、階段を昇り、
おれが後を追って、
奥さまが、オスカルの部屋のドアノブに手をかけると産声が聞こえた。
レヴェの時も・・・・・。
ヴィーの時も・・・・・。
誰も、オスカルが妊娠するような事をした覚えがなく!
誰も、オスカルが出産したのを見た者はいない!?
しかし、母乳は出ていた・・・・・。
オスカル・・・・・
おまえはいったい・・・・・
聖母マリアさまか・・・・・!?
と、思った途端、また、
ぽんぽこ、ぽんぽこ、
ぽんぽこ、ぽんぽこ、
レヴェ・・・・・名乗れぬおれの息子よ!
おまえは何を言いたいのだ?
教えてくれ!・・・・・おれは、力のない父親・・・・・。
聖オスカル・・・・・
受胎告知・・・・・
だとすると、・・・・・あの子供たちは、なんなんだ!
と、思った途端、また、
ぽんぽこ、ぽんぽこ、
ぽんぽこ、ぽんぽこ、
気がつくと、カウンターテーブルはキレイに磨き上げられ、
汚れ物は全て、水に付けられていた。
こうしておけば、後は明日、洗うだけできれいになるだろう。
アンドレは、今度こそ、三段跳びで階段を昇ろうかと思ったが、
愛しい、聖なる人を驚かそうと、そっと昇って行った。
左ほおは、静かだった。
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アンドレを待ち疲れて、気持ちよく寝ていると、
誰かが、わたしのベッドに入って来た。
ん!レヴェ?・・・それともヴィーか?
!!!??え゛??口を塞がれた!!!
アンドレ!
そうだ!わたしはアンドレのベッドにいたんだ!!!
仕事が終わったらしい。
「新聞を読んでいたのか?」
「うん!ファルーク・バルサラって人の記事が面白かった」
「へえ!どんなところが?」
「貴族と平民の中間に立って
繊細な旋律とハーモニーのバランス、
追いかけるように響き渡る、ギターオーケストレーションの連続、
そして4オクターブにもわたるヴォーカルの響き、
一番平和的に、物事を解決しようとしている。
そう思わないか?」
「そこの所がね、優柔不断、現実的じゃないと、言われることもあるな!
結構、叩かれるよ」おまえは笑いながら言った。
「え~!もしかして!!!」
「そっ!おれが書いている」
わたしは思いっ切り脱力した。
道理で、共感できたはずだ。お前の記事とはな!
脱力しているわたしから、
アンドレは、今度は手際よくコルセットを取り去った。
BGM Can’t Help Falling in Love
By Brian May & Kerry Ellis
ファルーク・バルサラはFreddie Mercuryの本名です。
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