♪Sweet Lady

「どうして、こんなにたくさんスーツケースがあるんだ?
軽いのも何個かあるぞ?」
アンドレが、スーツケースの山を見ながら言った。

「分からない・・・全てのスーツケースにギッシリ詰めてきたはずなんだが、・・・」
オスカルも困惑して、言葉の歯切れが悪い。

「兎に角、中身を全部出して、こっちの使わないベッドの上に置いてくれ!後で何処か仕舞うところを見つけるから。・・・空になったスーツケースはまとめておいてくれれば、屋根裏にでも仕舞う。おれは、店の支度をしているから、何かあったら呼んでくれ!」

と言って、アンドレは下に降りて行こうとした。
・・・わたしは、・・・取り敢えず手近のスーツケースを開けてみる。

(。´・ω・)ん?見慣れないものが入っているぞ!
わたしが、固まっていたので、アンドレが戻って来てくれた。

「どうかしたか?」
アンドレが、心配そうに聞いてきた。

「これ!なんだと思う?」
「何って?おまえが詰めたんだろう?」
「入れた覚えがない!」
「はあ?」

アンドレが、スーツケースいっぱいに広がっている、布地を引き出した。
「わお~オスカル!見てみろ!ドレスじゃないか!」
それは、シルクタフタのオフホワイトのゴージャスなドレスだった。
袖が見頃と同じ位膨らんでいて、裾はトレーンを長く引いていて・・・。

「ウ・・・ウエディングドレス・・・か?」
わたしは・・・おずおずと声にした。
だって、こんな物、詰めた覚えが、全くないんだ!

わたしは、何気なくもう一つのスーツケースを開けてみた。
思っていた通り、男物の礼装が出てきた。
黒に金糸の刺繡の上着。・・・アンドレに良く似合いそうだ。

わたしは、アンドレに微笑んだ。

その時、真っ白な羽がフワッと床に落ちて消えた。・・・
そう、レヴェとヴィーからのプレゼントだったのだ。
オスカルが、2人の為に詰めたものと交換したのである。

「新しいドレスにストッキングにブルーのガーターベルト!」
アンドレが、呪文のように言った。
「何を言っているんだ?おまえ?」

「おまえ知らないのか?花嫁は3つのサムシングを身に着けると幸せになるって・・・」

「ふん!ど~せ!わたしは、普通の女のような教育を受けてこなかったからな!
そんなの知らん!・・・で、3つて何なのだ?」
「サムシングニューとサムシングブルーと、サムシングオールドだ!
あと、何か古いものが有ればいいんだな!考えておくよ!

それよりも、着てみろよ!」
「え゛!いま?」
「ああ、着ているところ、見てみたい!」
「じゃあ、おまえも着てみろ!」

  *************************

「すばらしく・・・きれいだ」アンドレが言ってくれた。
「とても良く似合っている。男前だ!」
わたしも心からアンドレの男前ぶりに感動した。

しかし、
「サイズが、・・・ドレスの腹の辺りが、・・・もう少し腹が出てきたら着られないかもな」
「そうか、・・・妊婦さんだったものな。結婚式はなるべく早めか?」

「うん!7月、・・・・・・・・・12日が良い!」
「なんでその日なんだ?」
「何となく、・・・・・・・・・いいような気がした!直感だ!」
「じゃあ、その日にしよう!」

「アクセサリーはないのか?」
アンドレが、その辺のスーツケースをガサゴソと探し出しながら言った。
わたしは、母上が下さったサファイアを思い出した。

入れたはずのスーツケースをごそごそして、
エメラルドはアンドレに見つからないようにして・・・、
屋敷からごっそりと、つかみ取ってきた宝飾品と、サファイアをアンドレの前に差し出した。

アンドレは、のけぞって、
「おまえ!こんなにたくさん宝石、くすねてきたのか?」
「ああ!花嫁の持参金だ!
サファイアは母上が、生まれてくる子の為に、使うようにと下さった。」

「そうか・・・」
アンドレが、わたしの首に、サファイアの首飾りをあてた、次にルビー、それからダイヤ。

試している間、わたしは、鏡の中の自分の胸元に集中した。
そして、段々と鏡に近づいていった!!!!

「アンドレ!!!これはなんだ!!!!????
こんなに、アンドレ虫が、ついていては結婚式で、恥ずかしいじゃないか(〃ノωノ)」

「お!そうだなぁ!・・・
ちょっと、左手を上げてみて、・・・
今度は右手、・・・
それから、両手・・・。
そしたら、ちょっと、お辞儀をしてみて、・・・了解!!」

「何が了解なんだ!?」
「どこまでOKか確認した!」

「どこまでじゃない!結婚式までA面はダメだ!」
「え゛!」

「ちょっと待て!髪を、上げたいな。・・・ダメか?」
「え゛!そうすると、うなじもダメだ!って言いだすんだろう?」

「おまえは!・・・そう言う問題じゃないだろうが!
結婚式で、おまえの前に最高の姿で、立ちたいという、女心を分かってくれないのか?」

「う゛!・・・・・・・・・わかった。うなじも我慢するけど、・・・背中はOKだよな!?」
「ったく~~~~おまえは、そんな事しか考えられんのか?
わたしはこんなスケベ男と結婚するのか?

結婚式の誓いで『OUI』、と、返事するか、『NON』か、考えさせてくれ!」

「あ゛?!!」

……. Ready For It?
By Taylor Swift
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