♪Love In A Rainbow


「旦那さま、意外と驚かれなかったな?!」
アンドレが、クリスマスケーキの、クリームを指先に取ると、ペロリと舐めながら言った。

「ああ、想定内だったんじゃないのか?」
オスカルは、これは、デザートだ。と、ケーキをアンドレから取り上げながら答えた。

「そうだなぁ・・・似た者父娘だものなぁ」
「え゛!わたしのどこが、あの頑固おやじに似ているというのだ?」
「そういうところ!それから、二人とも生粋の軍人だ!」
「ふん!勝手に言ってろ!」

わたしたちは、2人の共同作業で出来た、クリスマスのご馳走をつつきながら、アンドレはワインを、わたしは相変わらず炭酸水を飲みながら、この下町で過ごす最初で最後のクリスマスの夜を楽しんでいた。

「・・・名前は?子どもの名前は何か考えているんだろうなぁ?おやじどの?」
「(。´・ω・)ん?ん~ん、考えてはいたんだが、・・・環境が変わるから、・・・あまり相応しくないんじゃないかと思っているんだ・・・」
「なんだ?言ってみろ!」

「笑うなよ!グラニティエール」
「・・・・・・・・・へ!・・・・・・・・・いいような、悪いような・・・
グラニティエール・グランディエか?

どちらが名前か分からなくなりそうだ。
・・・それに、・・・どこかのシャトーのようだな!
何処から見つけてきたのだ?」

「かなり、ツボをついてるぞ!覚えていないのか?
それとも見ていなかったか?
1年前、おまえが『Je T’aime』と言ってくれた時、飲んでいたワインだ!」

「ほう!そうか、・・・記念の名だなぁ!
わたしが、考えていたのは、・・・ヴェリエール・・・だが・・・」
「ハハハハハ・・・覚えているぞ、この店で一番のワインだ!
おまえが選んだのだな!?」

「ああ、そうだ、・・・どちらの名をつけても、・・・かなりの酒飲みになるのは間違えないな!」
「それは言えている!でも、親子で飲むのも、また楽しいだろうな!」

「ヴェリエール・グラニティエール・ド・ジャルジェ・・・で、どうだ?」
「おいおい!マジか?」

「マジだ。・・・これでいいのだな?」
オスカルは、珍しく心配そうに聞いた。
「ああ!遠回りしたけど、おれはやっと自分の生きる道を見つけた。

おまえを支えて、護って、愛して、共に考えながら生きていきたい。
おまえの方こそ、とんだ回り道をしてしまって、後悔していないのか?
ここへ来て、身重になって、子どもがおまえの手枷足枷になってはいないのか?」

「後悔するのは・・・、
おまえが屋敷を出てから、おまえへの愛に気づくのに時間がかかった事だ。

それ以外は、わたしがこれから軍人として、
人間として、生きていくための、血となり肉となるだろう。
子どもも、・・・子を持つという事も、
わたしと言う人間を、強くしてくれるような気がする。
勿論、夫を持つという事もだ!

わたしは、・・・ずっと、・・・オトコを愛して、頼ってしまうと、・・・
わたしの中のオンナの部分が、むき出しになって、弱くなってしまって、
軍人として生きていけないのかと思っていた。

だから、・・・
軍人として生きる運命を与えられたわたしは、
本気でオトコを愛するのが怖かったのかもしれない。
けど、・・・おまえを愛してしまった。

そして、軍人と言う生き方を捨てて、生きてきたが、・・・
やはりわたしは、軍人以外の何者にもなれない・・・。

ということが分かった時、
おまえが側にいて、支えてくれて、愛し合って、・・・
時には寄りかかっても、
そうすることによってわたしは、一層強くなれると思う。」

「そうか、・・・おれも、ずっとおまえの側にいて、おまえ無しのおれは、
独りでは生きていけないのかと思った。

それで、ここで、独りでおまえを待ちながら、
自分の生活をしてみようと思ったんだ。

そしておれは、自分一人でもなんとかやっていける・・・。
一人前の男なんだ、と自信を持った。

けれど、これは、おれのわがままだったんだ。
自己満足とも言うかな。
そんな事をしなくても、おまえの側にいるだけで、生きがいを見いだせたのに、・・・
若造だったんだな!」

「ふふふ( *´艸`)・・・
で?アンドレ?プレゼントはないのか?」

「ああ!うっかりしていた。・・・けど、・・・これからの生活では必要が無いものだな。
下に置いてあるから、取ってくる。」
「わたしも、プレゼントがあるから、出しているな!」

アンドレが持ってきたのは、一抱えもある袋と小さな包みだった。
まず、小さな包みをオスカルに渡しながら、
メダイ「これは、おまえと生まれてくる子どもの為に・・・・・・・・・」
わたしは、小さな包みに入っている、さらに小さな物をそっと掌に乗せた。
そして、これは?とアンドレに眼で問うた

「パリの奇跡のメダイ教会で、手に入れた。
小さい方は子どもに、
もう一つはおまえに身に付けていて欲しい。
厄災を寄せ付けないそうだ。」



「ありがとう、アンドレ、大切にするぞ!
だけど・・・二つだけなのか?おまえの分はないのか?」

「え゛!おれの分?そんな事考えなかった。
おれは、大丈夫だ!
それよりも、こっちの包みも開けてみてくれ!

始めフォーブルサントノレ通りのミキハウスに行ったんだが、母子ペアのものしかなくて、・・・考えこんでいたら、通行人がオペラ座の角にジャポンの店が出来たとかで賑わっていると噂していたので行ってみた。普段使いの服が沢山有ってなかなか面白い店だったぞ!」

「ほう!UNIQLOって言うのか!」

包みを開けると、濃紺のもこもこしたガウンが現れた。
「すごいな!肌触りがすごくいい!暖かそうだ!着てみていいか?」
わたしは、袖を通して襟元を整えると、前を合わせようとして、手が止まった・・・・・・・・・。

「おい!合わさらないじゃないか!」

「ふふふ・・・子どもが生まれてから、
夜中に授乳する時に使ってもらおうかと思って、買ったんだ。
要らなくなってしまったな・・・」

「そんな事ないぞ!・・・授乳はしないけど、おまえとふたりで過ごす時に愛用するぞ!
この子が腹から出てしまえば、また、ワインが楽しめるというものだ!」
「おいおい!そこか?」

「それは、最重要事項だぞ!
髭剃りセット・ブラシわたしからのプレゼントも見てくれ!
これだ!重さだけはおまえのに負けないぞ!」
「ありがとう!うん、しっかり重いなぁ。」
アンドレが、ごそごそと包みを開けると・・・
「わお~!髭剃りセットじゃないか?」

髭剃りブラシ「いつも、手でシャボンを泡立てていたから、
ブラシとその入れ物があれば便利だと思ってな!使ってくれるか?」
「ああ!もちろんだとも!おまえが選んだものだ、大切にするぞ!」



こうして、ラブラブな2人の下町で過ごす最初で最後のクリスマス兼、オスカルの誕生日は過ぎていった。

翌朝、ジャックは、ジャルジェ家にしては質素な馬車で2人を迎えに来た。

BGM Bad Girl
By Avril Lavigne

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パリのメダイ教会について(こちらで奇跡が起きたのは、1830年の事です。)
以前は、革命で生き残って、この教会に二人が行くと、妄想していましたが、
1830年・・・2人は、一体何歳になっているのだろう(;^_^A
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